内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

生成する生命の哲学 ― フランス現象学の鏡に映された西田哲学 第四章(四十)

2014-05-24 00:00:00 | 哲学

2. 5 〈肉〉のロゴスと語る身体(2)

 知覚世界は、どのようにして表現的となるのか。この問いに対する答えを西田のテキストの中に求めてみよう。知覚世界が表現的となるのは、「物の世界の中に弁証法的に含まれ」(全集第八巻二六二頁)、「物そのものとなつて考へる」(同巻二二三-二二四頁)ために世界の中で働く身体的自己によってである。私たちの身体的自己が担う表現的作用は、「行為的直観的に見られる物の世界から要求せられる」(同巻二六九-二七〇頁)。この行為的直観によって、「世界は表現的となる。 我々に対するものは何処までも表現的なものである」(同巻六五頁)。かくして、世界は「表現的に自己自身を形成する」(同巻二八一頁)。
 〈肉〉の存在論は、「問いかけとしての哲学」と分かちがたく結びついている。自己身体は、両者の関係において、両者がそこで出会い、それをめぐって組織化される基軸のような役割を果たしている。「問いかけとしての哲学」と〈肉〉の存在論とは、自己身体を基軸とした一つの探究の両側面だと言ってもよい。「問いかけとしての哲学」は、「一つの空洞、一つの問いかけを、〈これ〉とそこに在る世界の周りに設えることであり、それらにおいて、〈これ〉と世界は己自身がそれであるところのものを自ら言わなくてはならない」(« aménagement, autour du ceci et du monde qui est là, d’un creux, d’un questionnement, où ceci et monde doivent eux-mêmes dire ce qu’ils sont », VI, p. 314)。それは、「沈黙の、構造の不変項の探究」(ibid.)である。
 このような「問いかけとしての哲学」において求められていることは、この世界の中で私たちの周りに様々なレベルで見出される欠落、不足、空虚あるいは必要などを、既得の言葉によって満たすことではないし、最初からその存在が想定されうるような最終決定的な答えを出すことでもない。そうではなく、それは、意味の既得のシステムの枠組みを超え出てしまうこともあるような言葉の力によって、私の身体と世界とが、私たち自身の関心と相関的な諸項目に還元されてしうまう前に己は何であったかを言うことができ、それゆえ言わなくてはならない場所を開くことである。

それ[=哲学]は、私たちの世界経験に、世界が語られ自明のものとなる以前に何であるのか、自由に取り扱うことができる意味の全体に還元されてしまう以前に何であるのかを問う。哲学は、この問いを私の黙せる生に問いかける、反省に先立つ世界と私たちとの混淆に向かって言葉をかける。
« Elle [= la philosophie] demande à notre expérience du monde ce qu’est le monde avant qu’il soit chose dont on parle et qui va de soi, avant qu’il ait été réduit à un ensemble de significations maniables, disponibles ; elle pose cette question à notre vie muette, elle s’adresse à ce mélange du monde et de nous qui précède la réflexion » (ibid., p. 138).
問いかけとしての哲学は、[…]無ではない存在の零から世界がいかに分節化されるのかを示すこと、つまり、対自の中でも即自の中でもなく、存在の辺りに、世界への無数の入り口が交錯する繋ぎ目に居を構えること、そのこと以外ではありえない。
« La philosophie comme interrogation […] ne peut consister qu’à montrer comment le monde s’articule à partir d’un zéro d’être qui n’est pas néant, c’est-à-dire à s’installer sur le bord de l’être, ni dans le pour Soi, ni dans l’en Soi, à la jointure, là où se croisent les multiples entrées du monde » (ibid., p. 314).


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