内的自己対話-川の畔のささめごと

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行動は知覚の諸問題に対する一つの解決から始まる ― ジルベール・シモンドンを読む(103)

2016-06-21 06:24:39 | 哲学

 今日読む箇所で問題にされているのは、知覚と行動との関係である。

L’être percevant est le même que l’être agissant : l’action commence par une résolution des problèmes de perception ; l’action est solution des problèmes de cohérence mutuelle des univers perceptifs ; il faut qu’il existe une certaine disparation entre ces univers pour que l’action soit possible ; si cette disparation est trop grande, l’action est impossible. L’action est une individuation au-dessus des perceptions, non une fonction sans lien avec la perception et indépendante d’elle dans l’existence : après les individuations perceptives, une individuation active vient donner une signification aux disparations qui se manifestent entre les univers résultant des individuations perceptives (211).

 知覚する存在は行為的存在と同一である。行動は、知覚の諸問題に対して一つの解決を与えることから始まる。行動するとは、複数の知覚世界間の相互的な整合性に関わる諸問題を解決することである。行動が可能であるためには、それら知覚世界間にある程度の差異がなくてはならないが、もしこの差異があまりにも大きいと、行動は不可能になる。行動は、様々な知覚を超えたところでの個体化であり、知覚とは何の繋がりもなく、知覚とは独立に存在する機能ではない。知覚的な個体化以後、行動的個体化が知覚的個体化の結果として与えられた複数世界間に出現する諸種の差異に一つの意味を与えに来る。
 ここだけ読んで、シモンドンが知覚と行動との関係をどのように考えていたかを十分に理解することはできない(シモンドンは1964-1965年度にソルボンヌでの講義で知覚の問題を正面から取り上げている。その講義録は、Sur la Perception (1964-1965) というタイトルで、Les Éditions de La Transparence から2006年に出版され、2013年にはPUFから再刊されている。この講義の後にもシモンドンはもう一度1968年にENSのアグレガシオン準備講義 Perception et Modulation(未刊)で知覚をテーマとして取り上げている。さらに Jounal de Psychologie に、1969年から1970年にかけて三回に渡って、La perception de longue durée というタイトルで論文を発表している)。
 ただ、上掲の引用箇所からだけでも、知覚と行動とは、不可分・不可同・不可逆の関係にあるとシモンドンは考えているとは言えるだろう。まず知覚世界が解決可能な問題群として立ち現われるかぎりにおいて行動はそれらの問題に一定の解決をもたらすこととしてそこで可能になる。
 しかし、ここで次のような疑問が湧く。知覚世界が解決すべき問題群として立ち現れるということそのことのなかにすでにそれらをそのように把握しうる行動の主体が可能的に含意されていないかぎり、知覚的個体化の後に行動的個体化がそこに現れることはありえないのではないだろうか。あるいは、より端的に、知覚世界は行動する主体にとっての知覚世界以外ではありえない、と言うべきではないだろうか。ここでは、疑問は疑問のままに保留にしておこう。
 ただ一言付言すれば、最後期西田哲学根本概念の一つである行為的直観とそれがもたらす世界認識の方法は、上記の疑問に対してすでに一つの解決を与えてくれている。























































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