明後日火曜日のパリ・ナンテール大学での発表原稿は、今日の午後、一応形になった。パワーポイントもほぼ仕上げた。
その時点で、午後三時半。まだ時間に余裕があった(パリに向かうのは、明朝一番のTGV)。でも、原稿は敢えて仕上げなかった。結論を空白のままにした。結論のあらましは、もちろん頭の中にある。それでも、書かないことにした。
そして、夕方、久しぶりに湯船にゆっくりと浸かり、夕食時には、いつものようにワインを一本空け、今、いい気分である。
なぜ結論を書かなかったか。今晩、寝ている間の「熟成」を待つことにしたからである。なに呑気なこと言ってるの、ワインじゃあるまいし、って思われたかも知れない。しかし、思考にも「寝かせる」時間が必要だ、と私は考える。
結論だけの話ではない。今回、原稿書き始めたのは、昨日土曜日朝である。それまで、何週間と、「ああ、早く書かなきゃ」と焦る気持ちにずっと追い立てられてきたのだが、なんと言えばいいのか、「臨界点」に到達しないと、思考が展開してくれないのである。
その間、ボーっとしていたわけではない。それどころか、何か月間と、いつも頭と心のどこかに今回の発表のことが引っかかっていた。だったら、さっさと書いてしまえばいいじゃんって普通思うだろう。確かに、この期間に、ぐずぐずしないで、さっさと手際よく原稿を書いてしまえば、それはそれで精神衛生上いいことだし、きちんとしたものが書けるかもしれない。
でも、それでは何かもの足りない気がする。「コク」がないというか(あれっ、まだ酒の話しているの?)、そう割り切れたものじゃないでしょ、という蟠りというか……。
この愚図愚図とした「引っかかり期間」がとても大事だと私は思うのである。これは、苦し紛れの屁理屈ではない。
とはいえ、ぎりぎりになって書いたら必ずいいものができるかといえば、もちろん、そうは問屋が卸さない。今回だってわからない。
でも、その場で湧出して来るものにこそ、思考の醍醐味がある、そう私は思う。幻想だろうか。
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