内的自己対話-川の畔のささめごと

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準安定的平衡、「形」が生まれるとき ― ジルベール・シモンドンを読む(54)

2016-04-14 05:37:29 | 哲学

 質料形相論における形相概念に対しては、執拗に批判を繰り返すシモンドンですが、ゲシュタルト理論における「形」概念に対しては、これに一定の評価を与えています。前者が形相を孤立的に把握されうる実体と考えているのに対して、ゲシュタルト理論は、或る形がそこにおいてそれとして把握されるシステムを考慮に入れ、その形の認識の成立をもたらす平衡状態を、それ以前の或る緊張状態に置かれた未分化な状態に対する一つの解決と見なしている点をシモンドンは評価しています。
 しかし、ゲシュタルト理論がこの平衡状態を単に安定的平衡状態と見なし、準安定的平衡状態を捉え損なっている点をシモンドンは批判します。量子論に準拠して導入されたこの準安定性という概念は、ドゥルーズによって夙に高く評価されていますが、緊張・変化を内に抱えつつ、形が生まれる以前の潜在性を保存し且つ新たなる個体化への胎動を常に孕んでいる、いわば恒常的な動的平衡状態として「形」を捉えることを可能にしています。
 この準安定性という概念の導入によって開かれる視角から見るとき、ゲシュタルト理論で言われる「よい形」(プレグナンツの法則)とは、単なる最も簡潔な幾何学的図形のことではなく、「意味をもった形」(« la forme significative »)ということになります。この「意味を持った形」とは、様々な潜在性を内包した現実のシステム内部において転導的秩序を成立させる形のことです。「よい形」とは、つまり、それが現れるシステムのエネルギー水準を保持し、様々な潜在性を互いに両立可能にすることによって保存することができる形なのです。
 「形」とは、この意味で、「共立可能性」(« compatibilité »)と「持続・発展・実現可能性」(« viabilité »)の構造に他なりません。「或る形がそこに在る」ということは、もともとそこに内包されていた諸々の潜在性がその形の或るいくつかの性質として顕在的に分節化され、それらの性質が互いに他を損なうことなしに共立可能となり、それらの間にコミュニケーションが成り立つ内的共鳴の次元が開かれるということなのです。

























































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