内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

戦後日本の平和主義の行方と憲法第九条について

2019-04-23 17:47:43 | 講義の余白から

 今日は、「近代日本の歴史と社会」と題された学部最終学年の必修科目の一つの最終回であった。復活祭のヴァカンス明けの最初の授業でもあった。ヴァカンス前の最後の授業で、ようやく戦後日本の復興について一回話すことができた。さて、最終回には何を話すか。高度成長期の日本経済とそれに伴う日本社会の構造的変化については仏語でもいくつか良書が出ているから、その話はするまでもない。
 実は、前々から何を話すか決めてあった。それは戦後日本の平和主義と憲法第九条についてである。このテーマについては、前任校でも毎年必ず話した。だから、ストラスブールに赴任する前、つまり二〇一四年以前の関連資料はフォローしてあったのだが、ストラスブールに来てからこのテーマについて話せる授業を担当する機会が昨年度までなく、二〇一五年の安保法制以降については資料の準備もできていなかった。
 結果として、二〇一五年の安保法制以降現在に至る状況説明がちょっと手薄になってしまったが、憲法第九条そのものついては、その条文が起草される経緯・背景、それに関わった主要人物、施行時から現在に至るまでの主要な解釈とそれぞれの支持者・支持層などについては詳しく述べ、自衛隊・個別的自衛権の合憲性についての争点はどこにあり、二〇一五年の安保法制の際に問題となった集団的自衛権の違憲性をめぐる議論などについて話した。
 これらの問題について説明したのは、それが現代日本の置かれた国際的立場を理解する上で不可欠だからというのが第一の理由だが、国際平和の維持というより根本的かつ普遍的な問題を、現代日本の抱える地政学的問題の複雑性を理解した上で考えてほしいという願いもそこには込められていた。
 このように大きくて複雑なテーマには、それこそ一年かけてしかるべきであり、たった一回二時間の授業ではほんの上辺を図式的に提示することしかできないが、それでもなお、私自身このテーマについての勉強を続けつつ、これからも毎年、何らかの仕方で取り上げていきたいと思っている。












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