内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

日々の哲学のかたち(1)― 一冊のアンソロジーを読みながら

2022-05-28 18:36:29 | 哲学

 来月末が締め切りの原稿が二つある。一つは仏語の書評(10,000字)、もう一つは日本語での随想(12,000字)である。来月はこの二つの原稿を並行して書き進める。
 前者は、若き俊英による九鬼周造のモノグラフィー Simon Ebersolt, Contingence et communauté. Kuki Shûzô, philosophe japonais (Vrin, 2021) についての書評で、当該書をここ10日間ほどメモを取りながら注意深く読んできた。明日には読み終える。実に犀利 ・周到な九鬼研究であり、日本語でもこれを凌駕する研究は当分出ないのではないかと思う。
 後者は、四月末に依頼を受けてすぐにメモを取り始め、ようやくテーマが絞れてきた。六月一日に執筆を開始する。論文ではないので、それだけ自由に自分の考えを前面に出して書けるが、上滑りにならないように気をつけながら時間をかけて書きたい。
 明日の記事から、その執筆のためにいわば精神的エネルギーを供給してくれる仏語の書物をこのブログで少しずつ紹介していきたい。日本語訳がある本は紹介しない。比較的最近出版された本でまだ邦訳されていない(あるいは邦訳されそうにない)書物を紹介するほうが「希少価値」があると思うからである。
 トップバッターは、今年二月に PUF から刊行されたばかりの Exercices spirituels philosophiques : Une anthologie de l'Antiquité à nos jours である。編著者は Xavier Pavie という哲学者で、すでに exercice spirituel についていくつか著作がある。 Pierre Hadot から決定的な影響を受けている。哲学を日常においていかに実践するか、その実践にはどのような形がありうるか、という問題を追求し続けている。
 本書の紹介を通じて、私自身、同じ問題を考え続けたい。