内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

もし「あなたは何をしていますか」と聞かれたら

2022-04-01 23:59:59 | 雑感

 現時点において、「ご職業は」と聞かれれば、「大学教員」ですと答えることに嘘偽りはありません。その答えに特段の誇りもなければ格別の羞恥もありません。しかし、これは定年退官までという年限付きの回答に過ぎません。
 もっと端的に、「あなたは何をしていますか」と聞かれたら、なんと答えましょうか。今の私はきっと次のように答えるのではないかと思います。
 私生活における将来計画などなく、何らの社会貢献もしておらず、趣味生活を楽しむでもなく、翻って、衝動的に何もかも投げ出したいという自暴自棄な気持ちになることもなく、世の中の不条理に瞋恚を覚えることもなく、老後を思って居ても立っても居られないような不安を感ずることもなく、社会の秩序を乱すような逆恨み的な凶悪犯罪を計画するだけの想像力さえなく、日々、ただ、目の前の職業的義務を人並みに果たすだけで、一言で言えば、「ああ今日も死なずに生きた」というだけのことで、それをありがたやと神に感謝するでもなく、避けがたい死に恐れ慄くでもなく、波風立つこともない、傍から見ればいたって平穏無事な日常は、地獄でもなければ天国でもなく、要するに、「なんでもない」ということに耐えつつ、生き恥を晒しながら辛うじて生きております。
 こう答えるしかないよなあと思うことから、寒の戻りで底冷えのする四月は始まりました。