内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

昨日の修士論文審査のあらまし

2021-09-25 17:53:38 | 雑感

 昨日金曜日、授業後、午後2時半から4時半まで、修士論文の口頭試問があった。太宰治の『お伽草紙』についての修論の審査である。審査員は私を含めて三人。私以外の二人とも日本学科の同僚で、古典文学と本の歴史と翻訳論を主な研究フィールドとする指導教官と日本近現代文学のスペシャリスト。規則上、指導教官は審査員長にはなれないので、私が引き受ける。ただ、審査員長とは名ばかりで、実質は司会進行役に過ぎない。
 まず、学生のプレゼンテーション。15分というのがお約束だが、実質10分ほどだった。審査側のトップバッターは指導教官。これが15分ほど。次に、日本近現代文学のスペシャリストの講評と質問。これが長かった。含めると40分以上に渡った。かなり厳しい評価。最後が私。型通り、まず褒めておいた上で、問題点を指摘する。質問は四点に絞ったが、要するに、書誌的に詰めが甘く、作品解釈において突っ込みが足りず、歴史的文脈についての考察に乏しいということである。
 審査中、審査員間の応酬がかなり活発にあり、これは審査としては好ましい展開であった。審査を通じて、審査員たちにも刺激が与えられ、発見があった証拠だからである。
 二時間余りの口頭試問の後、審査員三人で評価点について合議。20点満点で15点。これは、博士課程に進まない学生に対してはかなりの高評価。ちなみに、博士課程進学希望者は17点はほしいところ。そうでないと、奨学金がもらえない。
 学部一年から模範的優等生であった学生は、今後、おそらく、フランスの中等教育における日本語教師の道を目指す。それは多分彼女にとって良い選択だ。きっといい先生になるだろう。