内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

風土と都市 ― 前期最終口頭試問を終える

2021-01-15 23:59:59 | 講義の余白から

 今日が実質的に今年度前期の最終日でした。私が前期に担当した学部最終学年の三つ授業は、昨年十二月はじめにすべて終え、試験も予定通り年内に行い、提出期限を年末としてあった最終課題レポートの採点と合わせて一月十日に学部の授業についてはすべての採点作業を終えました。修士二年の小論文もノエル前が提出期限、年内に採点済でしたので、残るは修士一年の最終口頭試験でした。それを昨日今日と五人ずつに分け、ZOOMを使って行いました。
 「風土と都市」というテーマでの発表原稿を年内に提出させ、それを私が添削し、さらに学生本人が推敲した第二稿を先週もう一度私が確認し、それをもとに学生たちは各自パワーポイントを使ってスライドを準備した上で試験に臨みました。発表時間は十分、質疑応答十~二十分としておきましたが、実際は発表が十五分から二十分、質疑応答も長い場合は三十分を超えました。それだけ内容豊かでヴァライティに富んだ発表でした。
 昨年九月に和辻の『風土』を読み始めたとき、学生たちは多大な理解の困難を覚え、仏訳に多用された新造語に対しては拒否感さえもち、教室での演習は不活発なまま、十一月からは遠隔に移行してしまいました。それ以降、学生たちは何度かZOOMを介して発表する機会があり、少しずつ彼らなりに風土概念の理解を深め、自分たちの問題意識を明確化していくことができ、昨日今日の発表はその最終的な成果を示すものでした。
 和辻の『風土』のテキストそのものからは離れてしまいましたが(それは私自身が途中から意図したことでした)、自分たちが現に生きているフランスあるいはヨーロッパにおける風土とは何かという問いにそれぞれに真剣に取り組んだことは、自分たちが生きている世界をよりよく理解するために無駄ではなかったとは言えます。