内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

画面共有遠隔共同添削

2020-12-03 23:59:59 | 講義の余白から

 修士二年の七名の学生とは、週一回のZOOM遠隔演習の延長として、同じくZOOMを使って三十分ほどの個人面談をこれも週一回行っている。面談といっても、実際には、彼らが書いている最中の日本語での小論文の一部の添削を一緒にするためであるが、この作業がこちらにとってもなかなかおもしろい試みになっている。
 小さな間違いなら、彼らが言いたいことを本人に聞くまでもなく、私一人で添削できる。ところが、毎回彼らが書いて送ってくる四百字から六百字くらいの文章の中には、一つ二つ、私にはまったく意想外の語や表現があって、何が言いたいのか、文脈から推測しようとしても、よくわからないことがある。そういう箇所については、彼らに意図を尋ねながら一緒に添削していく。このやりとりはすべてフランス語なのだが、「君の言いたいのはこういうことですか」と尋ねながら、画面共有された彼らの文章にその場で直接手を入れていく。ときには、私にもすぐに適切な表現が見つからなくて、はたと考え込んでしまうこともある。
 この共同添削の過程を通じて、彼らはよりよい表現を学んでいき、私は彼らの言いたいことがよりよくわかり、回を追うごとに、彼らの文章はよりよいものになってゆき、私の添削も楽になっていく。その分、さらにその先をどう書くかという話により重点をおいたり、すでに二千から三千字くらいになっているこれまでに書かれた部分をさらにどう発展させるかという話になったりする。
 小論文の内容は、彼らがフランス語で書く修士論文の一部に相当するから、結果として、この日本語での小論文演習が彼らの修士論文のための研究を促進させることにもなる。そのせいであろうか、彼らの方も回を追うごとに取り組みが積極的になってきている。
 遠隔だからこそ、お互い都合のいい時間に簡単にセッティングできるし、拘束されるのはその時間だけだから、時間に無駄がない。この画面共有遠隔共同添削方式は、対面に戻っても継続する価値がありそうである。