内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

雨の万聖節の徒然 ― 海の藻屑の独り言

2020-11-01 10:58:41 | 雑感

 昨日のハローウィン、昨年は仮装した近所の子どもたちが私の家にもお菓子を貰いに来たが、昨夜は誰も来なかった。こんなところにも外出禁止令の影響が出ている。
 古代ケルト人のサムハイン祭がハローウィンの起源といわれる。これは死の神サムハインを讃え、新しい年と冬を迎える祭りで、この日の夜には死者の魂が家に帰ると信じられた。この日に死者を祀る習慣はヨーロッパ全土で広く行われていたが、カトリック教会はこの異教の習慣を抑えるために万聖節を定め、諸聖人の祝日である万聖節の前夜として位置づけられた。Hallowとはアングロ・サクソン語で「聖徒saint」を意味し,All Hallows Even(万聖節前夜祭)がつづまって « Halloween » となった。それは九世紀はじめのことである。
 万聖節は国の祝日なのだが、今年のように日曜日と重なっても、日本と違って、翌月曜日が振替休日になることはない。春夏冬で合計六週間の有給休暇がヴァカンスとしてしっかり消化されるのが一般的な国だから、休日が一日減ったくらいで文句を言う人もいないようである。
 万聖節には、多くのフランス人が家族の墓に参り、花を手向ける。それゆえ、外出禁止令下でありながら、今日まで花屋さんは営業が許可されている。今日は朝から氷雨が降っている。
 ところで、「不要不急」とは、『広辞苑』によれば、「どうしても必要というわけでもなく、急いでする必要もないこと」の意である。フランス語では « non essentiel » という表現がそれに対応する。どちらにせよ、自分の職業がそういう扱いを受けて嬉しい人はいないだろう。
 思えば、大学というのは不思議なところである。学部・学科にもよるし分野にもよるから、一概にはもちろん言えないが、私自身の授業内容に限って言えば、まさに「不要不急」である。学生に卒業資格を与えるという社会的機能の末端は担っているからまったく無用ではないとは辛うじて自己弁護できるが、授業内容に関して「不要不急」という基準で厳しく仕分けされれば、ひとたまりもなく、たちまち海の藻屑と化すほかはない。
 近い将来に海の藻屑と化す者にも働く場所を与えてくれる大学に対する感謝の気持ちだけは定年まで忘れずにいたいと思います。