内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

驟雨が運んで来る涼風に吹かれながら、シモンドンとともに美的現実について考える ― 夏休み日記(4)

2017-07-20 19:26:53 | 哲学

 今日は、昨日の猛暑から一転して、日中幾度か驟雨が樹々の葉を濡らし、涼風が窓前の庭木を吹き抜ける過ごしやすい一日でした。
 夕刻、ストラスブールのアパルトマンをこの夏に引き払う日本学科の名誉教授宅に、不用になった木製の椅子と小机、食器などをいただきにあがりました。ご本人はすでにブラジルにヴァカンスに出かけており、ご主人が私を迎えてくれ、私の自宅まで自家用車でいただいた荷物を運んでくださいました。
 日中は、今日もシモンドンの Du mode d’exitence des objets techniques を読んでいました。第三部 « Essence de la technicité » 第二章 « Rapports entre la pensée technique et les autres espèces de pensée » が私にはすこぶる面白い。特に、第一節に出てくる、宗教と技術との統合組織化を可能にするものとしての la réalité esthétique という見方は、私が関心を持つ他の様々な思想をそれに関連づけて全体として一つの視角の中でそれらを捉えることを可能にしてくれそうで、ワクワクしながら読んでいます。
 例えば、今日届いた本 Otto Pächt, Questions de méthode en histoire de l’art, Macula, 1994 の中に展開されているパノフスキーの図像解釈学に対する痛烈な批判(« Les limites de l’iconographie », p. 89-94 ; « Amour sacré ? Amour profane ? », p. 113-118)は、シモンドンが主張する「美的現実」という概念によっても根拠づけられると考えることができそうです。