内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

歴史的運命が人類に課す精神的共同体の建設 ― レイモン・アロンから引き継ぐべき問い

2017-07-16 16:53:28 | 哲学

 その人の主張・信条・思想に同意するか否かは別として、その人の言うことに注意深く耳を傾け、そこに提起されている問いとそれにその人が与えている答えとについて私たち自身が身をもって真剣に考え、私たちがその中で生きている時代状況とその中での自身の立ち位置とを自覚しつつその問いと答えとを批判的に検討し、場合によっては、その答えに替わる私たち自身の答えを探求し表明すべき、あるいは、少なくともその問いを私たち自身の問いとして引き受けて考え続けるべき、あるいは、問い方そのものを変えるべきだとその読解作業を通じて私たちに気づかせてくれる、そういう内実を具えた文章は、幸いなことに、古来、無数にある。
 そのような文章を書いた人たちの名は、哲学者、思想家、歴史家、宗教家、科学者、政治家、芸術家、作家、詩人などなど、様々な範疇の下に喚起されることだろうが、そのようなレッテル付けが適切かどうかはさしあたり問題ではない。要は、私たちがそれらの文章を読んで、それらに感応し、自ら考えるかどうかである。
 例えば、個人の自由に基礎を置いたその政治的自由主義の哲学はもう過去のものだとされるレイモン・アロンが1960年に発表した « L’aube de l’histoire universelle » の中の次の一節に提起されている問題に現代の私たちはもう答えを出しているとは到底言えないだろう。

Ce qui sépare le plus les hommes les uns des autres, c’est ce que chacun d’eux tient pour sacré. Le païen ou le juif qui ne se convertit pas lance un défi au chrétien. Celui qui ignore le Dieu des religions de salut est-il notre semblable ou un étranger avec lequel nous ne pouvons rien avoir de commun ? C’est avec lui aussi que nous aurons à bâtir une communauté spirituelle que tend à créer l’unité de la science, de la technique, de l’économie, unité imposée par le destin historique à une humanité plus consciente de ses querelles que de sa solidarité. »

Penser la liberté, penser la démocratie, Gallimard, coll. « Quarto », 2005, p. 1806-1807.

人間同士を互にもっとも分け隔てているのは、それぞれの人間によって神聖なものとされているものだ。キリスト教へと回心しない異教徒あるいはユダヤ教徒はキリスト教徒に対立する。救済の宗教の神を知らない人たちは、私たちの同胞なのだろうか、それとも、私たちとは何ら共有すべきものをもたない異人なのだろうか。しかし、そのような異人とこそ、科学・技術・経済の統一体の創出を目指す精神的共同体を建設しなくてはならないだろう。その統一体は、連帯よりもその諸々の闘争に対して自覚的な人類に歴史的運命によって課された統一体である。