内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

フランス人は穴埋め問題が苦手?

2014-10-16 16:29:40 | 講義の余白から

 昨日と今日の試験の回収した答案をパラパラと見ていて、ちょっと意外な結果に驚いている。
 大問三つのうち、第一大問はいわゆる穴埋め問題で、しかも問題文は授業中に詳しく説明した箇所から選び、さらには試験前に問題形式について念を押しておいたので、ここは正答率が高いと予想していたのである。ところが一部のよく出来る学生を除くと、三年生も二年生も惨憺たる結果なのである。
 確かに、穴埋め問題の第二問は、適切な言葉を自分で記入しなくてはならないので、テキストをしっかり覚えていて、しかも漢字がちゃんと書けないと答えられないから、こっちは多少難しいだろうとは思っていた。ところが多少どころではなく、ほとんどの学生がこの設問は白紙に近い。つまり最初から捨てているのである。第一問は、入れるべき語が与えられ、しかもそれぞれの語に付されたアルファベットを記入するだけでいいから、こっちはほぼ皆正解だろうと思いきや、結構適当なのである。
 参考までに(って誰のため?)、以下に示すのが、二年生の古代文学史の第一大問の第一設問。

古代歌謡の  であった共同体が、  の形成とともに変質する中で、古代歌謡の表現も大きく変貌していく。一方、新たな国家の担い手である  たちを中心として、  が整備され、  が営まれるようになると、  から切り離された  的なものへの自覚が生み出されてくる。歌謡は、そうした中で、表現の  を加えられ、集団内部の  本位のありかたを離れて、  的な詠む歌としての性格が著しく強められていく。

a. 都市生活 b. 貴族 c. 集団性 d. 個 e. 口承 f. 母胎 g. 自覚  h. 統一国家  i.洗練 j. 官僚組織

 この大問の配点は二十点中四点と少ないし(上掲の問題はその半分だから二点)、学生たちには事前に配点も知らせておいたから、彼らは最初からこの第一大問のためには大して準備してこなかったということがよーくわかった。それが証拠に、フランス語での用語説明であり、配点が二十点中十点と高い第二大問は、概してよく出来ている。第三大問の仏訳(配点二十点中六点)も然り。だから、ざっと見ただけではあるが、全体としての出来は悪くなく、平均点も低くはないであろう。
 彼らにしてみれば、同じ週に集中してたくさんの試験があるから、どこで手を抜くかということが全体としてまあまあいい成績を取るための重要な「戦術」ということになるのであろう。だから、日本語の原テキストをしっかり覚えていないと点が取れず、しかも配点が低いところはあっさり捨てて、フランス語で書けば稼げるところに重点的に力を入れて準備したということなのであろう。
 金勘定といい、フランス人は何かと計算高いが、そういう態度がこういうところにも如実に現れていて面白いとは思った。そうでもしないと、なかなかフランス社会は渡っていけないよなあと同情を禁じ得ないところもなくはない。しかし、それはそれとして、来週の授業では、試験の講評として、厳しくお灸をすえるつもりである。