今日の夕方、いよいよ生まれて初めての一人暮らしを始める娘をパリに残して、ストラスブールに戻る。娘はパリでの留学生生活の立ち上げのためにまだやらなくてはならないことがいくつか残っているが、ここからは自力でやっていかなくてはならない。
生活力という点では、当然のことながら、まだまったく覚束ないが、少なくともフランス語にはほとんど不自由しないのだから、なんとか自分で問題を解決していってほしい。昨日も、買い物にはあちこち付き合ったが、機内で壊れたメガネの修理や携帯電話の契約内容の問い合わせは、自分で行って来いと突き放した。どちらもなんなく事が済み、少しずつ緊張がほどけてきたのがそばにいて分かる。
これは娘に限らず日本から来る留学生たちにいつも言っていることなのだが、一日に一つずつ用を済ませるというゆっくりとしたペースで生活を徐々に整えていくことである。海外での生活の立ち上げ時には、誰でも、あれもこれもしなければと焦る気持ちがどうしても生まれ、そのうちの一つでもうまく行かないとひどく不安になり、下手をすると精神のバランスを崩してしまいかねない。そのような「危機」を乗り越えてゆくのも一つの経験だとは言えるが、あらかじめわかっている危険は未然に回避し、余計な心理的ストレスは溜め込まないほうがいい。
あれこれの問題に同時に直面し、しかも、どうしてよいかよくわからない、どこから手を付けていいかわからないという時がある。しかし、実のところ、大抵のことはそれ自体としては大した問題ではないのである。だから、焦らずに、あまり事の軽重にこだわらずに、まずは解決できるところから一つ一つ解決していけばよい。一日一つ解決できれば、その日はそれで満足し、残りの時間は好きなことをすればいい。
日本のように何でもきちんとしていることが美徳とされている国から来ると、何といい加減なと思えるようなことがフランスでは多々ある。しかし、基本的には、「何とかなるだろう」「こんなんでいいんだ」と考え、日仏の様々な違いをどこか覚めた目で観察しつつ、それらを楽しんでしまえばいいのである。
Bon courage !