内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

夏休み日記⑩ 逗子の小道に潜む創作フランス料理店

2014-08-13 12:13:39 | 雑感

 昨日は午後から逗子に出かける。長年お世話になっている先生ご夫妻のお招きで、逗子にあるフランス料理店に行くためであった。先生ご夫妻とは、先生が十六年前にサバティカル・イヤーで一年間ストラスブールにお二人で滞在されたとき以来のお付き合いである。
 JR横須賀線に新しくできた武蔵小杉駅(この駅について一言文句を言っておくと、既存の東横線とJR南武線の武蔵小杉駅とは徒歩で十分くらいかかるほど離れており、いくら専用通路で結ばれているとはいえ、同じ「武蔵小杉」という駅名を名乗るのはほとんど詐欺に近いと言いたくなるほど遠い)ホームでご夫妻と待ち合わせ、そこからお店までの道中もご一緒した。
 逗子駅からバスで十五分ほど海沿いを下り、元町というバス停で下車。バス停からは徒歩五分ほど。先生がご用意されていた地図を頼りに迷うことなくお店まで辿り着いたが、お店は人がようやくすれ違えるほどの細い路地を入ってしばらく歩いたところにあり、途中看板もなく、店にも普通の表札のように店名が書いてあるだけなので、予めそれと知っていなければ、そのまま通り過ぎてしまうかもしれないような、ひっそりとした佇まいである。先生の高弟であり、私にとっては友人である研究者の妹さんが一人で切り盛りしていらっしゃるお店である。私は今回が初対面。店内は民家をちょっと改造しただけとのお話だったが、周りは普通の住宅に囲まれ、緑も多く、本当に静かで、窓外の隣家の庭の樹々を眺めながら、時間を忘れてくつろげる空間になっている。
 料理は素材の買い出しから下準備、調理、盛り付け、給仕まですべてお一人でなさっているので、ディナーは一日に一組だけ予約で受け付けられているようである。ただ、他方では、地元の方たちにはワイン・バーとして気軽にワインが楽しめる場所としても開かれているとのお話であった。野菜は鎌倉の市場でそこに直接卸している農家の地物を仕入れ、魚もやはり鎌倉の何軒かの魚屋さんでその日その日で自分の目でいいと思われたものを選ばれて使われるとのこと。肉類もすべて調達は鎌倉でなさっているとのことであった。
 前菜からデザートまで全部で八皿頂戴したが、いずれも丁寧に時間を掛けて作られた、実に美味しく創意に富んだ料理ばかり、盛り付けの彩りも美しく、三人共存分に嘆賞。アペリティフからほぼ私一人で一本空けた白ワインは絶品、肉料理に合わせて出してくださった赤の選択も絶妙であったことを付け加えておく。お店の名前は「昵懇 jiccon」、サイトはこちら