南町の独り言

様々な旅人たちが、日ごと行きかふ南町。
月日は百代の過客、今日もまた旅人が…。

“おそろし”

2008-08-15 09:37:00 | 読書

早朝がめっきりと涼しくなってきた。
朝の散歩も気持ちよく、身体も心も快調だ。

涼やかな朝の時間は読書に限る。
宮部みゆきの“おそろし”を読みおえた。
女流作家の心の襞は、いつも思うことではあるが、男よりも何十本か多く、そして深い。

江戸の袋物屋「三島屋」に預けられた“おちか”は17歳。
実家で起こった恐ろしい事件で心を閉ざしてしまった“おちか”は、「三島屋」を訪れる人々から不思議な物語を聞く役割を叔父から言いつけられる。
不幸な人々の話を聞き続けるうちに、いつしか話している人の心も、“おちか”の心も溶け始める。
叔父さんは“おちか”にこう諭す。
「おまえにも、誰かにすっかり心の内を吐き出して、晴れ晴れと解き放たれるときが来るといい。
きっとそのときが来るはずだが、いつ来るのかはわからない。
そしてその役割は、ただ事情を知っているというだけの、私やお民では果たすことができないのだろう。
おまえが誰かを選び、その誰かが、おまえの心の底に凝った悲しみをほぐしてくれる」

読み終えたとき気がつくと、家の中には「とんぼ」が舞い込んでいた・・・。