木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

最近の採点実感について(1)

2014-09-10 19:22:40 | Q&A 採点実感
昨日、司法試験の合格発表がありました。
みなさまおつかれさまでした。

ところで、司法試験と言えば、最近私、仕事で
司法試験の採点実感と出題趣旨を読んでいるのですが、
表現的にいかがと思うことが多く・・・。

時間的な制約から、
どうしても理論的にも文章的にも雑な表現になってしまうのはわかるのですが
(あ、これは受験生の答案のことではなく
 試験委員が書く採点実感と出題趣旨のことです)、
やはり、いささかいかがなものかと思ったところを
コメントしてみようと思います。


さて、そのシリーズの第一回ですが、
今回は、昨年平成25年についてです。
あの年の公法系第一問は、
デモ行進の不許可処分と大学の教室使用不許可処分の合憲性が問われました。

このうち、前者については、まあよいのですが、
後者については、「出題趣旨」で平等権で書いてほしいということが書いてあり、
採点実感でもそこがメインとのこと。

しかし、採点実感では同時に、「憲法23条」が問題になる(1ページ目1)とか、
「学問の自由と大学の自治の緊張」という平成21年同様の問題があり、
それを書いた答案は「賞賛」に値する(3ページ目)とか、
書いてあり、学問の自由についても論じた方が良かった
という空気。


結局、憲法23条をどう処理すればよいのやら、という疑問がわくわけです。

また、平成21年(遺伝子治療研究の研究停止命令)の出題趣旨、採点実感では、

大学教授が「県立大学の施設を使って研究すること」が学問の自由で保護されることが

当然の前提とされる一方、平成25年の出題趣旨、採点実感では、

学生が「県立大学の施設を使って研究集会すること」は学問の自由で保護されない

というようなかきぶりになっていて、
これは、かなり受験生を戸惑わせる内容になっております
(このような採点実感の記述は有害ではないのか・・・)。

というわけで、この点を整理してみようと思います。

        (つづく)

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21 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (奈々士)
2014-09-11 10:25:31
「そういうもんだ」と、敢えてつっこまなかった点について解説いただけるので嬉しい限りです。よろしくお願いします!
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すみません。追加です。。 (奈々士)
2014-09-11 10:51:24
政教分離規定間のお話は、去年の辰巳講義で先生が口頭で説明してくださった内容とは別の整理の仕方になったのでしょうか。少し早めに披露いただけるとありがたいです。よろしくお願いします。
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ふと疑問に思ったのですが (大1)
2014-09-22 20:37:30
憲法の質問をさせて下さい。
芦部先生の憲法の教科書を読んでいて1ページ目からつまずきまして、質問させて頂きます。

観念的には、自然権を保障するような統治を行う王政であれば絶対主義権力も、社会契約の観点からは正当化可能なんでしょうか。

行使主体が王様というだけで、実質は自然権(人権)保障もされている。

それとも権力を作るのが国民であること及び行使主体も国民でなければいけない、というのが社会契約、近代自然法思想の要請なんでしょうか。
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>みなさま (kimkimlr)
2014-09-22 21:16:51
>ななしさま
どうもです。
昨年の講義の後、いろいろ肉付けして
現在本を書いています。
年内発売予定なので、細かい点は、
ぜひそちらもご参照ください。

>大1さま
ホッブズ『リヴァイアサン』が
ご質問の点をどんぴしゃりに扱っていますので
読んでみてください。
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Unknown (大塚ツーカ)
2014-09-25 12:12:39
辰巳講義でよく理解できなかった点について御教授いただけないでしょうか。

「審査対象となる国家行為の特定」についてです。

例えば、H18、H21の設問2では、前者は「法律」そのもの、後者は被験者との関係では「規則」そのものが「国家行為」ということですが

例えば、H19 H20 H23では、順に「処分」「刑罰」「処分」という具体的な行為が「国家行為」となっています。

H19、20、23では、(18、21のよう抽象的な規範も国家行為として認められる以上、)処分や刑罰の根拠となっている「法律」を国家行為と特定することは許されないのでしょうか。

逆に、H18、21で仮に後で処分や刑罰が行われた場合、その「処分」「刑罰」が特定すべき国家行為ということになるのでしょうか。

憲法ー→法律ー→規則ー→処分・刑罰というながれのなかで、どれを問題となる国家行為と捉えるべきか、という基準がよく理解できないのです。
現に存在している国家行為のうち、直近のもの(処分・刑罰)から遡って考えればいいのでしょうか。
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>大塚さま (kimkimlr)
2014-09-25 12:19:55
権利を主張する人の行為を直接規制する国家行為なので、
処分や命令、刑罰が審査対象であり、
法律や規則ではないでしょうね。

そのあたりの詳細は、
『急所』の第一部第二章にまとめられておりますぞ。
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Unknown (大塚ツーカ)
2014-09-25 13:01:03
ありがとうございます!

もちろん、その事案で実際に処分や刑罰が行われているならわかりやすいのですが、
H18や21では、まだ実際に処分は行われてないと思うのですが(21では被験者との関係で)。(処分される前に訴えを提起している)

「実際に」処分や刑罰が行われなくても、処分や刑罰を国家行為として特定することは許されるのでしょうか?

私の理解が基からおかしいのかも‥
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Unknown (大塚ツーカ)
2014-09-25 13:17:16
あ…でも「実際に」刑罰がおこなわれたっていっても、刑事裁判の判決はまだ確定していないんだから「実際には」まだ刑罰は行われていないんですよね。

ということは、国家行為を特定する際には「実際に」処分や刑罰が行われたかどうかなんて関係ない、という気がしてきました。
返信する
>大塚さま (kimkimlr)
2014-09-25 15:20:40
そういうことですね。

実際に行われたかどうかはともかく、
その権利主体の権利を制限するような行為をすることが
合憲か?
を審査するわけですね。

実際に処分が行われていない段階では
訴訟法的に訴訟が打てないこともありますが、
それはまた、別の問題ですね。
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Unknown (大塚ツーカ)
2014-09-27 18:12:47
ありがとうございます。よく理解できました。

あと一点、関連してよく理解できなかったことがあります。国家行為の「根拠法の画定」について、どこまでを「根拠法」に含めて考えればよいのか、という点です。


【平成20年】を例にすると、

被告人に刑罰を科す直接の根拠法となっているのは、フィルタリングソフト法17条(「…前条第1項の規定に違反した者は、…罰金に処する」)ですが、これに加えて、その「前条」である16条1項(「何人も、次に掲げるものを他人に提供してはならない」)2号(「適合ソフトウェアの…動作をさせないプログラム」)も「根拠法」に含まれるのでしょうか。

さらに、これら17条、16条1項2号の前提として、当該ウェブサイト(ページ)への内閣総理大臣による有害指定が適法、有効になされていなければ刑罰を科すことはできないわけですから、その内閣総理大臣による有害指定を根拠づけている5条(「内閣総理大臣は…有害ウェブサイトを指定するものとする」)や、その「有害ウェブサイト」の定義規定である2条4号も根拠規定に含まれるのでしょうか。

一般論でいえば、
処分の直接の根拠となっている条文に加えて、どこまで他の条文を「根拠法」に含めて考えることが許されるのか、ということです。
今のところ、その条文が無効になれば、その影響を受けて処分が無効になる、という関係性が認められる条文であれば、すべて「根拠法」に含めて考えてよいのでは?と考えているのですが…


急所第二問を例にすると、「国家行為」は原級留置処分であり、その原級留置処分はY県教育委員会の方針転換が違法、無効であればその影響を受けて無効となる関係にある、ということで、方針転換の根拠になっている地行法23条5号も処分の「根拠法」に含まれる、という考え方でいいのでしょうか。
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