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木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

これアカハラだろ(5・完)、そして佐渡先生対策講座(1)

2012-01-13 11:18:06 | Q&A 採点実感
ツツミ先生が時計を確認すると、講義の時間はあとわずかである。
佐渡先生が、どのようにまとめるかを見ていると、
こういった。

「法令違憲と処分違憲の書き分けは一般的になってきたわね。
 でも、正確に内容を理解した上できちんと書き分けている
 答案はほとんどなかったわ。
 ウグイスダニ、前に出なさい。」

こう言うと、佐渡先生は、ピラッと鶯谷君の答案を床に落とした。
「拾いなさい。」

ウグイスダニ君がひざまずいて、拾おうとする。
まるで佐渡先生に土下座しているようだ。

佐渡先生は土下座プレイを続行した。

「あなたの答案、
 法令違憲を論ずるときに、
 立法事実に照らして法令の規定がどうかを論じてないわね。
 Xの個別事情しか考えてないのよ。

 アナタの出来損ないのプリンみたいな脳みその中では、
 法令違憲と処分違憲が混同してるのよ。
 それぞれを論じる際の考慮事由の差違、理解することね。

 ほら、あなたの答案用紙に謝りなさい。
 立法事実と個別事情がぐちゃぐちゃになった
 みじめな文章を書き殴って、申し訳ありません、てね。」

 ・・・。ツツミ先生は、「おい。すごいな。
 これ、先生へのじゃなくて、答案用紙への土下座プレイだったのか。」
 と言った。

 感心している場合ではない。
 すると、さらに佐渡先生は続けた。

「それからザッキー。
 あなたの答案、処分違憲の審査で,
 法律適用の合法性,妥当性のみしか論じてないわね。

 憲法との関係を論じないと,合憲性審査を行ったことにならないの。

 本問では,
 「生活ぶりがうかがえるような画像」の公表を禁じることの
 合憲性をきちんと論じる必要があるわね。

 あなたみたいに、中止命令まで行うことは過剰な規制であるという主張を
 するだけでは、処分審査を行ったことにはならないの。

 ほら、分かったら、教室の後ろに行って、壁に向かって立ってなさい。
 ザッキーがそうやっていると、
 佐渡先生は、出席を確認し、答案を返却しはじめた。
 その間、ザッキーは壁に向かって立たされたままだ。

 「おお。今度は、新手の放置プレイだ。」
 ツツミ先生が、また感心した。

「まだまだ言いたいことはあるけど、それは来週にしましょう。
 いい、アナタたち、来週までに処分審査と法令審査の概念、
 ちゃんと理解してくることね。
 質疑応答するわよ。」

 拷問の予定を宣言すると、佐渡先生は教室を後にした。
 ザッキーは立ったままだ。どうするつもりだろう。

 さて、それはさておき、佐渡先生があんなことを言ったもので
 もう一人の憲法の先生(私だ)のOHに、
 処分審査と法令審査の関係を問う長蛇の列ができたことは言うまでもない。

 そういう訳で、私は、OHで処分審査と法令審査について、
 特別講義をせざるを得なくなったのである・・・。

・・・・・・・・・・・・・(これアカハラだろ、完)



準備しております。しばらく、この画像を見てお休みください。

・・・・・・・・・・・・・(佐渡先生対策講座(1))

「佐渡先生被害対策講座 法令審査と処分審査」

ああ、本日、講師を勤めます木村でございます。

さて、法令審査と処分審査、ということですが、
この概念が混乱するのは、これまでも、お話ししてきたことですが、
そもそも、この「法令審査」という言葉が、
いろんな意味で使われるというところにあります。

まず、最初に整理をしてしまいますとですね、
「法令審査」という言葉は、次の三つ意味で使われます。


法令審査A:法令の全体審査(急所ではこれを「法令審査」と呼ぶ32頁)
 法令の全適用例の合憲性を審査し、
 法令のどこが合憲で、どこが違憲かを完全に画定する作業

法令審査B:法令(法文)全体が違憲かどうかの審査(法文違憲審査『急所』33頁)
 <法令全体が違憲>かどうか、を審査するもの。
 具体的には、法令の典型的適用例*を審査する。
  典型的適用例が違憲→典型的用例ですら違憲なのだから法令全体が違憲 
  典型的適用例は合憲→合憲的適用例があり、法令全体が違憲とは言い難い。

 *法令の典型的適用例とは、
  その法令の保護法益を害していることが明らかで、
  原告が憲法上の主張をする上で、有利な事情が全くない適用例のことで、
  要するに、<違憲の疑いが最も弱い>適用例のことをいう。

法令審査C:明確性の審査
 その法文がその事例との関係で明確であるかを審査するもの。

 その法文がその事例との関係で明確であるというためには、
  ①その事例に適用されることが明確であること(狭義の明確性)
   および
  ②その法文に違憲的適用例がない、
   又は違憲的適用例があっても、それと問題の事案を
   明確に区別することができること=可分であること(過度広汎でないこと)
 の二要件が必要であり、二要件の審査がなされる。


さて、これに対し、
処分審査は、その処分(適用例)の合憲性を審査するものと
一応、定義しておきましょう。
(厳密な定義は、またあとでします)

ここで問題です。私の講義をこれまで聴いてきた人、急所を読んできた人、
あるいは、ここ何日か、たけるん君に指導してきた内容を読んだ方には
分かる簡単な問題です。

いわゆる二段階審査で、最初に法令審査Aをやったとします。
この場合、続けて処分審査をやると、どうなってしまうでしょう?

         (つづく)

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11 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (平民A)
2012-01-13 12:06:34
木村先生、こんにちは。


法令審査Aは、法令の全適用例を審査するものです。
そして、処分審査で審査するのは当該法令が想定している適用例についてです。
つまり、二段階審査をすると同じことを二度審査することになります。
そして、法令審査Aをした上で法令全体を合憲もしくは違憲としておきながら、
処分審査では、合憲にしてしまうと矛盾が生じることになります。



こういうことでしょうか。
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Unknown (平民A)
2012-01-13 12:10:32
すいません。


正確に表現していませんでした。
正確には、「処分審査で法令審査Aと反対の結論を採用すると」です。
返信する
Unknown (シュナサン)
2012-01-13 12:17:54
 法令審査Aでは、全適用例を検討しているのですから、処分審査をするのは無意味でしょう。同じことを繰り返すことになります。

 法令の適用例が一つや二つなら、法令審査Aがなじむし、違憲の範囲が明確になります。
 しかし、司法試験の問題としては、複数の適用例が考えられる場合を出すことが多いと思います(そのほうが、点数の差をつけやすいし、書くことが増えます。)
 そうすると、法令審査Bをしてほしい問題を出すことがおおいと思います。
 採点実感が言っている、法令審査と処分審査の区別というのは、まず、、法文の典型例(典型例なので、原告の事情はでてこない)を立法事実に基づいて審査すること
 次に、それが合憲だとしても(典型例が合憲であるとしても)、本件の適用事例(この場合審査対象の適用事例を設定する際に、原告の固有の事情を参照する)でも、合憲であるかどうか審査することを求めているのではないでしょうか。
 ここからは、質問なのですが、本件の適用事例を審査する際には、法文の一部の適用事例を審査するので、立法事実に基づいて、目的手段審査をしても、いいように思えるのですが、どうでしょうか。
 過去の記事にも、処分審査に目的手段審査が使えるのかという記事がありましたが、私のような理解でいいのでしょうか。

 これまで、先生のブログや急所をみさせていただいて、思ったことは法令審査というのは、何か法令の抽象的な審査をしているというイメージを持っていたということです。法令の想定している適用例を審査しているというのであれば、わかりやすいですね。この場合「適用」という言葉から、適用例は適用審査と勝手に決め付けていました。

 忙しい中、大変だと思いますが、引きつつぎ楽しみにしています。
返信する
私の解答。 (mona)
2012-01-13 12:20:28
法令審査Aですでに違憲範囲と合憲範囲が画定されています。
そして処分審査では違憲評価の理由となる要素を画定し、違憲範囲と合憲範囲を画定しなければならないので、実質的に法令審査Aと同じ作業をすることになるのではないでしょうか。
つまり、無駄手間になってしまう、というのが私の解答です。

それよりザッキーさんはどうなってしまうのでしょうか・・・?
返信する
Unknown (Jiro)
2012-01-13 12:49:17
法令審査をした後に、処分審査をすることは、
王手をした後に、
「王手!」と勢いよく叫ぶことと同じです。
王手をされた人は、当然、
「言われんでも、わかっとるがな」
となります。
つまり、
法令審査後、違憲範囲が完全に画定されているにもかかわらず、
重ねて、この一適用例が違憲なり合憲なりと主張することは、
「言われんでも、わかっとるがな」
ということです。
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Unknown (k.s)
2012-01-13 12:58:08
法令審査は、その法律が予定している適用例すべてについて、合憲違憲の審査をするものです。

他方、処分審査は当該事件において行われた処分を基礎づけている、法律の一部分(一適用例)について合憲違憲の審査をするものです。

そうすると、法令審査が行われた以上、そこには処分審査で判断するべき適用例も審査済みのはずです。

従って、法令審査が終了して結論を出した以上、処分審査をしても、ダメなわけではないが、無駄である、ということになると思います。

返信する
追記 (Jiro)
2012-01-13 13:34:32
採点実感名人に↑のようなことをすると、
「俺をなめているのか!」
と怒らせることになり、
飛車切り・角切りの猛烈な反撃をたたみかけられ、
突如として必至(必死)になります。
返信する
Unknown (ララオ)
2012-01-13 14:08:26
佐渡先生はもう終わってしまったかと思いました。
最高です。

全適用例のうち特定の適用例について重ねて審査することになります。
返信する
>みなさま (kimkimlr)
2012-01-13 16:04:38
はい。もうこれは、皆様正解です。
それでは、続きをお待ちください。
返信する
Unknown (ザッキー)
2012-01-13 16:43:23
ザッキーは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の佐渡教授を除かねばならぬと決意した。ザッキーは法令違憲がわからぬ。処分違憲がわからぬ。ザッキーは、5000番台の答案である。予備校答練と格闘し続け、芦部憲法を読んで暮らしていた。けれども最近の基本書には、人一倍鈍感であった。 きょう未明ザッキーは一人残された教室を出発し、野を越え山越え、十里はなれたこの○沼書店にやって来た。
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