彼が入浴しないので、食堂へ直行。
私は当然 生ビールとツマミを頼む。
奴はかき氷を頼む。
何年もかき氷など食べていないと言う。
昨年秋 98歳の母親が介護施設で死去。
3年間の施設生活。
その間、長男である彼は、酒を控えた。
麓に住み、母親の危篤状態であれば
駆けつけなければならない。
ノンアルコールにした。
酒豪であった彼は現在、酒を飲みたいと思わないと言う。
又、妻とは別居生活。
夫婦仲が悪いわけではなく
子供も近くの戸建てで住み
夫婦二人だけの生活にマンネリと
口喧嘩もあり、妻は近くにアパートを借りた。
通い妻になり、日中は掃除洗濯、昼飯を一緒。
妻はアパートに帰り、夕方 食材を持って亭主と食事。
夜は互いに戻り籠る。
4年間続いている。
それぞれの生活信条を尊重。
だが 彼はぼやく。
この頃、何もする気がしない。
子供野球の世話も引退。
子供夫婦とは折り合いが良くないので行かない。
幼馴染も三途の川を渡った。
いつの間にかいなくなったのもいる。
何にもすることない。
一言もしゃべらない日もある。
「お前に会えるのは嬉しい」
やはり、動き 会話する、
外に出て陽にあたる。
日常生活に一定のリズムが必要。
波紋の揺らぎがないと、水は腐る。
ひとしきり、互いに無言と吐息。
暮れ行く人生行路の終着駅が近づく。
2人して思いを振り切るように
少年時代の思い出話をする。
続く。
青木FUKI 人生は過ぎゆく La vie s'en va シャンソン CHANSON