ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

アルツハイマー病に対し現時点で使われている薬

2023-10-26 10:39:49 | 
最近アルツハイマー病のアミロイドβを減少させる新薬についてこのブログでも取り上げました。

これは原因物質を取り除く作用で期待されていますが、抗体医薬という高価であることで若干疑問を持っています。

現時点で使われている薬は、コリンエステラーゼ阻害剤とNMDA受容体拮抗薬の2種類があります。認知症の薬というと「アリセプト」という名前を聞きますが、これは1999年に発売されたコリンエステラーゼ阻害薬の代表的な薬です。

これらは脳の中のアセチルコリンを分解する酵素を阻害し、脳のアセチルコリン量を高める働きをします。アセチルコリンは脳内にあって、記憶や学習において重要な働きをする神経伝達物質です。

アルツハイマー病は、アミロイドβの蓄積からタウタンパク質の変性が起こり、神経細胞が死滅する病気ですが、その過程でアセチルコリンが減少します。

その結果神経の情報の伝達がうまくいかないようになり、記憶障害(もの忘れ)、実行機能障害(問題解決能力の低下)、見当識障害(時間や場所の見当が付かない)などの症状が現れます。

このアセチルコリンは、コリンエステラーゼによって分解されますので、この酵素を阻害し脳内でアセチルコリンが減るのを防ごうというのがこの薬です。その結果認知症による記憶障害などの症状の進行抑制が期待できるわけです。

この薬はひどい副作用がないことが治験で確認されていますが、体質によって合わない場合があります。飲み始めに吐き気などの消化器症状が出たり、脈が遅くなることもあるようです。精神症状などの副作用が出ることもありますが、いずれも中止すると元に戻ります。

もうひとつのNMDA受容体拮抗薬は、神経伝達物質であるグルタミン酸の働きを抑える薬です。脳内でグルタミン酸の働きが乱れると、神経細胞が障害されたり神経の情報が障害されてりします。

この薬の作用としては、患者の気持ちが安定し、穏やかになるところですが、なりすぎて活気がなくなることもあるようです。こう書いていくと既存薬でも効果が出そうですが、アルツハイマー病の基本は神経細胞が死滅するところにあります。

これには全く対処ができていませんので、回復という点では効果は元々期待できないのかもしれません。最近の研究では原因物質のアミロイドβは20年も前から蓄積が始まるとされていますので、基本的に完治させるのは難しいと言えそうです。

認知症もまた発症したら運が悪かったとあきらめる病気なのかもしれません。

ヨーロッパで拡大中の注目されている安楽死

2023-10-25 10:32:26 | その他
終末期医療についてはこのブログでも取り上げていますが、脚本家の故橋田寿賀子さんが、2017年「安楽死で死なせてください」という本を出版し大きな反響を呼びました。

安楽死とは助かる見込みのない病人を、本人の希望に従って苦痛のない方法で人為的に死なせることです。

これについては朝日新聞が2010年に行った全国調査で、「治る見込みがない病気で余命が限られていることが分かった場合、安楽死が選べるとしたら選びたいと思いますか」という問いに、「安楽死を選びたい」が70%でした。また安楽死を法律で認めることに賛成が74%でした。

NHKが2014年に行った全国調査でも73%の人が安楽死を認めていました。一方で安楽死を認めることは弱者や障碍者排除につながる危険性があり、「死にたい」と思わせないような周囲の支援や質の高い介護の方が重要との意見もあります。

近年安楽死を認める国が西ヨーロッパを中心に急増しています。ドイツは2020年憲法裁判所が安楽死を認め、イタリアでも「合法的自殺幇助」が2020年実施されました。

当初安楽死の対象は、死期が差し迫り耐えがたい苦痛があるガン患者や遺伝性筋疾患、神経難病患者などに限られていましたが、最近は認知症や神経疾患、そして90歳以上なら基礎疾患がなくても安楽死を認める国が増えてきました。

2023年にはカナダから認知症患者としては国内最初の安楽死の例が報告されています。トロントの国際会議では、安楽死という言葉を止め「医療介助死」と呼ぶことが提案されましたので、今後この言葉が一般化するかもしれません。

2019年NHKは、スイスに渡って安楽死を選んだ神経難病の女性のドキュメンタリー番組「彼女は安楽死を選んだ」を放映しました。延命とは何か、生きるとは何かを問いかける番組です。

人の命は大切ですが、死は誰にでも必ず訪れます。その人生の最後に命の延長を求めるのか、それとも残った命の質を求めるのか。もし命の質を求めるなら、終末期医療の選択肢の中に安楽死があっても良いのか、いま議論する時かもしれません。

私は安楽死を認めるべきという意見ですが、日本では「死は少しでも遅らせるべき」という考えが根強いように感じます。終末医療で延命治療ですら拒否しにくいような状況では、安楽死などは遠い先の話となるような気がします。

「かゆい」と「痛い」は全く別物という事実

2023-10-24 10:32:53 | 健康・医療
私は比較的「かゆみ」には強く?、どこかかゆいところがあっても我慢してしまうことが多いような気がしています。

最近は「かゆみ止め」の良い薬があり、虫刺されなどでかゆくなっても塗れば治まってしまうことが多いようです。このかゆみの感覚というのは、なかなか面白い現象のような気がしています。

このかゆみは一般的には、皮膚で感じてから脳で認識するまでの神経伝達のスピードが異様に遅い情報のようです。一度かゆみが生じると、それを鎮めるのは簡単ではなく、かきむしって皮膚を傷つけそれが原因でさらに皮膚がかゆくなるという悪循環が生じます。

早期にこの悪循環を断ち切らないと、「かゆみ」が慢性化してしまいます。かゆみを「かきたい衝動を引き起こす不快な皮膚の感覚」と医学的に最初に定義したのは、ドイツの神経生理学者でした。

この定義では、いわゆる掻爬(かきむしり)を生じさせる感覚はすべて「かゆみ」に該当します。その症状は一様でなく、発症原因やそのメカニズムも複雑なものになります。

もともとかゆみは、異物を物理的に取り除くために必要な、重要な生体防御反応のひとつであったと考えられています。かゆみは、皮膚の感覚受容器が受け取った刺激が引き金となって生じる感覚のように思われますが、それだけではなく、脳などの中枢神経系で発生した刺激が原因で発生するものもあります。

つまりかゆみは皮膚に刺激があったからかゆいと感じるものと、脳がかゆいと感じたから皮膚がかゆくなるものの2種類があるのです。健常な人でも、皮膚が特に刺激されたわけでもないのに、無性にかゆくなることが頻繁に起こります。

さて「かゆみ」とよく似ているのが「痛み」という感覚です。かゆみも痛みもいずれも不快な感覚で、生体にとって不都合な状態や危機的状況が起きていることを脳に伝える役割を担っています。

その後の研究で、痛みを抑えるモルヒネを投与しても、痛みは軽減するもののかゆみが増すことが分かり、痛みとかゆみとは「別の感覚」という意見が出てきました。病的なかゆみをとっても、主な区分だけで4種類があります。

1.乾燥肌など皮膚の異常に伴うかゆみ、2.腎臓や肝臓などの内臓疾患に伴うかゆみ、3.抹消や中枢の神経障害によって起こるかゆみ、4.精神疾患に伴うかゆみ、などです。

それぞれのかゆみの発生原因は異なっており、発生メカニズムもそれぞれ異なり、解説するには分厚い専門書が書けるほどとしています。結局虫刺されのかゆみなど以外は、注意すべき病気の症状として捉える必要がありそうです。

インフルエンザがなぜこの時期に急拡大

2023-10-23 10:33:46 | 健康・医療
通常は冬に流行するインフルエンザが、9月以降全国で急拡大しているようです。

10月8日までの1週間では、14都県で流行が注意報レベルを超え、休校や学級閉鎖になった施設数は2204と報告鎖されています。今シーズン(今年秋〜来年春)の流行は、新型コロナウイルス出現前より大規模になる恐れもあるとしています。

厚生労働省は、全国約5000の定点医療機関からの患者報告数を集計しています。1週間で1機関当り「1人」を超すと流行入りと判断されますが、昨年末に1人を超えて以降は流行状態が続いています。

感染は9月に入って急拡大しており、8日までの1週間は1機関当り9.57人で前週比35%増となりました。沖縄や千葉、東京など14都県で注意報レベル(同10人)を超えています。

専門家が指摘するのは免疫の低下で、日本では新型コロナの感染拡大が2020年1月のに始まりましたが、感染対策が奏功したためかインフルエンザは昨年末まで流行しませんでした。その結果、多くの人でインフルエンザに対する免疫が低下し、感染しやすくなったとしています。

しかし私は、この専門家の意見はおかしいと思っています。ヒトの免疫システムは、あくまで異物を体外に除去したり殺してしまうものですので、ウイルス用や細菌用が存在するわけではありません。

今年も花粉症が大流行しましたが、これも免疫反応の一種で、皆さんしっかり免疫が働いているといえます。赤ちゃんの頃打ったワクチンが大人になっても有効なように、数年流行が無かったかといって低下するようなシステムではありません。

それよりは水際対策が4月末で終了し、国際的な人の往来が活発になってきたことが要因なのかもしれません。それよりも最大の要因は、インフルエンザを発見するチャンスが上がっただけのような気がします。

つまりまだ新型コロナの感染は怖いため、若干の発熱や咳が出れば、通常は様子を見るような人でも医療機関に行くのではないでしょうか。医療機関ではコロナの検査をすると同時にインフルエンザの検査もするはずです。

そのためインフルエンザ患者の発見数が、大幅に拡大しているにすぎないと思っています。実際に発熱外来の患者数が、大幅に増加し待たされることが多いとも聞きます。

私自身も若干熱が出たりしても今までクリニックなどに行ったことはありませんが、今年はコロナだといけないという事でたぶん行くことになるでしょう。

簡単にいえば今年のインフルエンザの流行は、今まで潜在患者で数えられなかった人たちが顕在化したにすぎないと思っています。感染対策として、もう少しマスクを着用するくらいで十分ではないでしょうか。

タバコ消費量は減少しているのに肺ガン死亡率は上昇

2023-10-22 10:34:59 | 煙草
昔からタバコと肺ガンの関連性は指摘されており、長年の喫煙者である私もいつ肺ガンになってもおかしくないと思っています。

数年前に政治家が、喫煙者が減っているのに肺ガン患者が増えていることに疑問を呈して物議をかもしたそうです。喫煙と肺ガンには因果関係がないともとれる発言ですが、ネット上などにはこうした言説が出回っています。

実際はもう何十年も前から喫煙と肺ガン発症には、疫学からもタバコ成分評価からも強い因果関係があるとされてきました。近年喫煙率は右肩下がりに減り続け、タバコ消費量も減少し続けています。また肺ガンの患者数や死亡率が増加傾向にあるのは確かです。

男女ともに肺ガンの死亡率は上がっており、男性の死亡率では1998年以後肺ガンが1位となっています。しかしこれは高齢化などの影響が大きいようで、それを排除した「年齢調整死亡率」という方法があります。

これはガンなどの病気は、高齢者は発症しやすくなりますので、比較する年度の高齢者割合がそのまま変わらなかったと仮定した場合の死亡率などを算出する方法です。具体的にどう計算するのか分かりませんが、統計的にはよく用いられる手法です。

この年齢調整死亡率を見ると、喫煙率が女性より高い男性の肺ガン死亡率は、1990年代の半ばから減り続けていることになります。また女性の肺ガン死亡率も、横ばいまたは漸減傾向となります。つまり肺ガンの死亡率はむしろ減っていることになるわけです。

またタバコを吸っても、すぐに肺ガンやCOPDなどにかかるわけではありません。タバコによるニコチン依存症になると、毎日間欠的に1日中タバコを吸い続けます。こうした生活習慣を長く続けた結果、喫煙者は非喫煙者の15倍から30倍という高リスクで肺ガンになるという研究結果があります。

ただし私はこの年齢調整死亡率というものに懐疑的な印象を持っています。簡単にいえば、ガンだけではなくどんな病気も年齢調整をすれば減少してしまうのです。

これは亡くなる人が圧倒的に高齢者が多いため、高齢者比率が変わらないとすると、若い人の死亡確率は低いためや、医療の進歩などにより当然死亡率は下がってしまうのです。

こういった統計処理をしたグラフで何か議論をしても、ほとんど意味が無い仮定の議論のような気がします。私は喫煙と肺ガンの関連性を否定するわけではありませんが、世の禁煙信奉者はかなり無理なこじつけをしているような気がします。