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ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

抗老化ホルモン投与で記憶力向上の可能性

2023-08-26 10:39:40 | 健康・医療
この歳(76歳)になると記憶力が低下してきて、先日もいつも持ち歩いている袋を忘れてきて次の日に取りに行ったりしています。

こういった認知機能低下を回復するという研究分野では、「クロトー」というホルモンが注目を集めています。抗老化ホルモンとも呼ばれるクロトーは、認知機能の老化や神経変性疾患の謎を解き明かす可能性を秘めています。

ヒトの体内では腎臓がクロトーを生成しており、このホルモンの濃度が高いほど認知機能が高まり、アルツハイマー病などのリスクが下がることが判明しています。

加齢に伴いクロトーの濃度は自然に低下しますが、近年動物を対象に行われた研究では、クロトーの直接注射によって記憶力を維持し、加齢に伴い低下した認知機能を回復できる可能性もあることが分かってきました。

クロトーは血液脳関門を通過しない(脳には入らない)とみられているものの、低用量のクロトーをマウスに投与すると、ワーキングメモリ―が増加し神経の可塑性が高まることが示されました。

米エール大学の研究チームは、サルが自然に分泌するホルモンとしてのクロトーを合成しました。その生物学的な効力を確認するため、若いマウスに注射しました。すると低用量でもクロトーの血中濃度が対照群の6倍に達し、投与から4時間後に主に学習と記憶をつかさどる脳の海馬が大幅に活性化しました。

次に研究チームは同量のクロトーをサルの成体のグループに投与しました。対象にはヒトの45〜85歳に相当する年齢のサルを含め、クロトーが加齢に伴い低下した認知機能を回復させられるかを判断できるようにしました。

実験は3か月にわたって行われました。この認知試験の詳細は省略しますが、クロトーを投与されたサルの成績は2週間以上にわたって対照群より優れた結果を出し続けました。

クロトーの効果は即効性がある(注射後4時間以内)と同時に、長く持続するとみられ、長期記憶を増強する可能性が示唆されました。低用量で効果があったことから、容量を増やす実験をしましたが、用量を2倍や3倍にしても、成績が伸びることはありませんでした。

生涯を通じて自然に生産される量以上のクロトーを投与されると、シグナル伝達システムが阻害され、むしろ認知機能が損なわれる可能性があるようです。クロトーは血中を循環することで、老化の顕著な特徴である酸化ストレスと炎症を軽減することが示されています。

クロトーが体内で果たす様々な役割を解明することは、長寿のカギを握る可能性があるようです。

人間の寿命は「55歳」ヒトにだけ「老後」がある理由

2023-08-25 10:33:56 | 自然
死ぬ直前まで活発に過ごしてパタリと亡くなる、いわゆる「ピンピンコロリ」という死に方が理想といわれますが、実はこの世に存在するほとんどの生物の死はピンピンコロリとなっています。

たとえば産卵のために生まれた川に遡上するサケは、卵を生んだ直後から急速に老化が進み、数日で死に至ります。これはやや極端な例ですが、基本的に生殖可能期間が終わった個体はすぐに死んでしまいます。

それ以降長い「老後」を過ごすヒトは、生物学的には非常に珍しい生き物です。日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.54歳ですので、生殖可能期間(女性の閉経に相当)を終えると約30年もの老後が待ち受けています。

生物としての人の本来的な寿命はおそらく約55歳で、数十万年前にはそれくらいの年齢になる前に生殖を終えてサケと同じく老後を迎える前に死んだと考えられます。一般的に大型の哺乳動物の主な死因は心不全で、ケガと感染症が続きます。

しかしヒトの場合は栄養状態が改善され医療も進歩したことで、そういった原因で死ぬケースは激減しました。その代り急増したのがガンです。ガンは長年蓄積された遺伝子の変異によってDNAが壊れることで発生しますが、ガンで死ぬ野生動物はほとんどいません。

遺伝子に変異が蓄積されてガンになる前に、捕食されるか心不全やケガで死ぬからです。DNAが壊れるまで長生きしたために、ヒトはガンで苦しむようになってしまい、本来の寿命を超えて「長生きしすぎ」だと言えるかもしれません。

生殖が終わった個体が生きていても子孫は増えず、ガンに侵されるリスクが高まってしまうのに、ヒトの老後が長いのは長生きする個体が集団内にいた方が、ヒトという種の生存に有利だったからと考えられています。

生物学には「おばあちゃん仮説」と呼ばれる説があります。ヒトの赤ちゃんは生き物の中でも特に手がかかるため、産後の母親にとって子育ての負担は非常大きくなります。そこで活躍するのがまだ元気で育児の経験が豊富なおばあちゃんです。

祖母が子育てを手伝えば母親の手間は激減し、次の子供を産む余裕も出て来るでしょう。こうして自身が生殖を終えた後も、出産以外の方法で集団の繁栄に貢献できる個体が現れました。

ヒト生存に貢献したのは年長の女性だけではなく、集団が大きくなり社会が発展していくにつれて、男性を含む経験豊富な「シニア」の役割が大きくなっていきました。

子供を産んで集団の維持に直接貢献することはなくても、「調整役」として公共的な役割を果たすシニアが集団内にいた方が有利だったからこそ、ヒトには老後という期間ができたと考えられるようです。

「脂肪肝」に特徴的なタンパク質を発見

2023-08-24 10:33:38 | 健康・医療
酒を飲まないのに脂肪が蓄積して肝障害を起こす「非アルコール性脂肪肝」は、肝ガンへ進行する場合もある気を付けるべき「生活習慣病」のひとつです。

残念ながら脂肪肝の根本的な治療薬はまだないようです。この脂肪肝では、オートファジーが低下することが報告されています。

オートファジーとは細胞が自らの一部を分解する作用で自食作用と呼ばれており、細胞内のゴミの処理だけでなく、資源のリサイクルなどにも役立っていることが分かっています。

オートファジーが低下すると、p62というタンパク質が分解されず、肝臓内で増加していることがマウスの実験で明らかになっています。オートファジーの機能が低下した時に、量が増えたり減ったりしているタンパク質があれば、それがオートファジーの機能低下に関わっている可能性があります。

これを網羅的に調べた結果、量が変化していたタンパク質が「ルビコン」でした。そこでルビコンを欠損したマウスを作って実験を行いました。ルビコンを欠損したマウスに高脂肪食を4か月間与え続けたところ、肝臓の細胞に含まれるp62の量は増えませんでした。

これはp62がきちんと分解されており、オートファジーの機能が低下していないことを意味します。これらのことから、ルビコン量の増加とオートファジーの機能低下には因果関係があり、ルビコンの増加がオートファジーの機能低下の原因であることが明らかになりました。

相関関係と因果関係の違いを知り、分けて考えることは科学の基本です。科学では相関しているからといって因果関係があると決めつけるのではなく、因果関係があることを実験で証明しなければいけません。

こうした考え方は日常生活でも役立ち、因果関係があるかどうかをいつも考えるようにすると、誤った情報に振り回されることなく、自分で正しい判断ができるようになるでしょう。

さてヒトの肝臓での組織での実験を行いました。まずアルコールの摂取がなくウイルス性肝炎の既往もない患者の肝臓組織を、脂肪滴の有無を指標に脂肪肝とそうでないもに分け、ルビコン量を測定しました。

その結果脂肪肝ではルビコン量が増えていることが確認され、ヒトにおいても肝臓でのルビコンの増加が、オートファジーの機能を低下させ、脂肪肝を引き起こしていると考えられます。ここで重要なのは、脂肪肝は遺伝子疾患ではないという事です。

遺伝子の変異によってオートファジーが低下して発症する疾患はいくつか知られています。今回の結果は遺伝子変異が無くても、食生活という環境要因によってオートファジーが低下して疾患が引き起こされることを示したものです。

生活習慣病の中には、動脈硬化や糖尿病などオートファジーの機能が低下していることが報告されている疾患があります。

今回機能低下とルビコンの増加の因果関係が証明されたことにより、新たな治療薬の可能性が出てきたと言えるようです。

「帯状疱疹」が大人に増えている原因

2023-08-23 10:32:42 | 健康・医療
帯状疱疹というと亡くなった母が80歳ぐらいの時に発症した記憶があります。

背中の左側から発疹ができはじめ、全面に広がってしまいました。皮膚科の医師から塗り薬をもらったのですが、発疹がカサブタのようになり薬を塗るのに抵抗があるようなひどい状況でした。

ところが本人が全く痛がらないのです。帯状疱疹は激しい痛みがあると聞いていましたので、医師に確認したところごく稀にそういったケースもあるとのことでした。かなり時間がかかった気がしますが、何とか完治しその後も痛みが出ることもありませんでした。

帯状疱疹は最初にピリピリとした痛みがお腹や胸、背中などに出て、数日後に水ぶくれを伴う発疹が帯状に出てきて、痛みが徐々に強まり激しい痛みになることもあるとされています。

この原因は水ぼうそうと同じウイルスとされています。幼少期に罹ったウイルスは、治った後も消えず背骨に近い「神経節」という神経に集まって潜んでいます。加齢や疲労、ストレスなどで免疫の力が落ちると活発になり、神経節から出て増殖し帯状疱疹を発症させます。

患者は増加傾向で、宮崎県では約40の医療機関が参加する「宮崎スタディ」行われています。調査開始の1997年から2019年までの23年間で患者は6割増加しています。この調査は国も病気の基礎データとして重視しています。

増加の最も大きな要因は高齢化とされています。80歳までに3人に1人が発症するとされます。もうひとつは20〜40歳代の子育て世代の発症です。乳幼児対象の水ぼうそうワクチンが14年に定期接種化され、こどもの水ぼうそうは激減しました。

その結果水ぼうそうの子と接触して免疫を活性化させる機会が減り、子育て世代の発症が増えたのです。なお宮崎スタディによると、コロナ禍で増加傾向は頭打ちになっていますが、単に受診控えで診断を受けていないのかもしれません。

ブラジルではコロナ禍の前後を比べ、患者が約35%増えたとの報告がありストレスの影響も考えられます。

予防で効果的なのは帯状疱疹ワクチンで2種類あります。発症予防効果や持続時間、副反応の頻度や費用が異なり、一概にどちらが良いとはいえないようです。接種の対象は主に50歳以上で、希望する場合はかかりつけの医師に相談すると良いようです。

ただ私はこのワクチンには若干疑問を持っており、もともと体内に潜伏しているウイルスのワクチンで免疫が活性化して予防できるのかと思っていますが、安心する効果はあるのかもしれません。

ガンになって「緩和ケア」は治療をあきらめた訳ではない

2023-08-22 10:32:52 | 健康・医療
このブログでも簡単に触れたことがありますが、私は75歳以上になったらガンが見つかっても積極的な治療はしないつもりでいます。

現在76歳ですので、もうガン検診なども受けないようにしていますが、見つかってしまうかもしれません。私が積極的な治療(手術、放射線、抗ガン剤など)を受けたくない理由は、治療を受けても放置しても寿命にあまり差がないだろうという考えからです。

手術などのガン治療は、身体に非常に大きな負担をかけるものです。これがどの程度の負担になるかをまとめて、ブログで書くつもりでいますがまだまとまっていませんので、ここでは大雑把な感じだけとなります。

例えば手術の場合は、全身麻酔が必要となります。この全身麻酔については、どんな負担になるのか色々と出ていますが、ここではそれ自身が身体を弱らせてしまうという事だけにしておきます。

その実際に切開して患部を取り出し、臓器の一部を切除することになります。この場合ガン細胞だけではなくかなりの部分、臓器の何分の一かは切除してしまいますので身体への負担はかなりのものとなります。

その後切開部分の治癒のためにかなりの時間が取られることになります。こういった大きな負担により、どの程度寿命が縮まるかは明確になっていませんが、かなり大きいものと予想されます。また当然ですがこういった治療によって再発や転移が完全に防げるわけではありません。

一方ガンの方は、発生した部位やその性質にもよりますが、私ぐらいの歳になれば一般的に進行はかなり遅くなり、症状もそれほどひどくはならないでしょう。

何年後かにはガンも大きくなり、末期ガンとしての症状が出てきます。そうなると痛みや苦しみを取るための処置が必要になりますので、緩和ケアを受けることになります。ここで重要なことは、この緩和ケアを受けるまでは、普通の日常生活が送れることです。

ほとんどの高齢者が寝たきり生活など送るよりは、ピンピンコロリを希望しています。ガンになったとしても、末期の痛みなどが出て緩和ケアを受けてすぐに亡くなれば、ピンピンコロリといえるような気もします。

治療を受けても受けなくても寿命は大して変わらないだろうということは、誰も結果を見ることができないことですが、治療を受けることによる日常生活の中断は避けたい気がしています。こういうことは私が死を受け入れる準備ができているから出る発想なのかもしれません。

なおタイトルは、ガン治療における「緩和ケア」の重要性に関する記事を出すつもりでしたが、私のガンに対する処置だけになってしまいました。