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細胞増殖が生きたままわかる実験用マウスを開発

2023-08-07 10:35:04 | 自然
東北大学などの研究グループが、生きたまま少量の採血をすることで、体内の細胞の増殖がよく分かる実験用の遺伝子改変マウスを開発したと発表しました。

このマウスを使い、肝臓や膵臓の細胞の増殖が分かりました。実験動物の使用を抑えつつ、糖尿病などさまざまな病気の治療法の開発につながる期待があるようです。

体内の細胞増殖を時間を追って調べるには、従来経時時間ごとに臓器を摘出し、染色して顕微鏡などで調べてきましたが、手間がかかり実験動物を多く必要とするなどの難点がありました。

そこで研究グループは、少量の採血で済み生きたまま細胞増殖が分かる遺伝子改変マウスを開発しました。特定の細胞が増殖すると、発光酵素の「ルシフェラーゼ」を作って血中に分泌するようにしました。

ルシフェラーゼは20分で半減し、採血して発光量を基にルシフェラーゼの量を調べれば、細胞の増殖がリアルタイムで分かります。採血は50マイクロリットルと少量なので、同じマウスを使って何度も調べられます。

調べたい細胞の種類により遺伝子改変の仕組みを変えれば、さまざまな細胞の増殖を観察できます。この方法の有効性を検証するため、まずマウスの肝臓の細胞の増殖を調べました。肝臓を部分的切除した後時間を追って調べると、増殖していくのをはっきり検出できました。

膵臓でインスリンを作る「ベータ細胞」の増殖が分かるかも調べました。ベータ細胞がうまく働かないと血糖値が上がり、糖尿病の原因となります。研究グループは過去の研究で、脳からの神経信号によりベータ細胞が増殖することを見つけています。

そこで実際に神経信号で刺激を与えると、ベータ細胞が増殖しました。妊娠したり肥満になったりしたときや、若年期にはベータ細胞が増殖することが知られており、これらの変化も検出できました。

またベータ細胞を増殖させる物質をベータ細胞に与えると、ルシフェラーゼが増加して増殖を高感度で検出しました。このことからベータ細胞を増やす物質を探すことにも役立つ可能性が示されました。

糖尿病ではインスリンを注射で補うなどの治療が行われています。この遺伝子改変マウスを使うことで、ベータ細胞のようなインスリンを作る細胞を増やすなど、新たな治療法の開発につながる可能性があるようです。

そのほか細胞を増やすことによるさまざまな病気の治療薬、ガン細胞の増殖を抑える薬の開発につながる期待もあります。

研究グループは、ベータ細胞は極めて少なくしかも増殖しにくい細胞です。それでもこの方法で増殖を検出できたことから体内のさまざまな細胞を診ることに応用できそうで、多彩な分野への応用を非常に期待していると述べています。