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ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

糖尿病でガンになる仕組み解明

2020-05-21 10:25:29 | 健康・医療
糖尿病や肥満からガンになる仕組みが、ショウジョウバエの遺伝子を詳しく調べて分かったと、京都大学の研究グループが発表しました。

インスリンが増加して「細胞競合」という現象が起きなくなるためで、ガンを予防する薬の開発につながる可能性があるようです。

細胞競合とは、組織において適応度の異なる2種類の細胞が近接すると、適応度のより高い細胞が生き残り、低い細胞が排除されるという現象で、1975年にショウジョウバエの翅原基において発見されました。

その後さまざまな状況あるいは生物種において細胞競合の起こることが報告され、生体において恒常性を維持する重要な細胞間コミュニケーションとして注目されるようになりました。

細胞競合は大きく2つに分けられ、一つの細胞競合においては適応度の高い細胞による適応度の低い細胞の貪食、細胞の認識および細胞死の誘導などが明らかにされています。

またもう一つのガン抑制型の細胞競合においては、伝達経路による貪食、細胞の排除、細胞死の誘導など両細胞の境界面における制御が明らかにされています。

研究グループが糖尿病などでインスリンが異常に増える「高インスリン血症」になったハエの眼の組織を調べたところ、異常な細胞がタンパク質を合成する能力が高まっていました。その結果正常な細胞による細胞競合が起きず、異常な細胞はガン化しました。

血糖値を下げる糖尿病薬のメトホルミンを与えると、細胞競合が再び起き、ガン化しなくなってきました。糖尿病や肥満の人はガンになりやすいとされ、研究グループはハエと同様に細胞競合が起きなくなっている可能性があると指摘しています。

細胞競合を薬でコントロールできれば、今までにないガンの予防や治療ができるのではないかとしています。この細胞競合は恒常性の維持という点で興味を持っていました。

異常な細胞が発生した場合、免疫などの作用ではなく、正常な細胞がこの異常細胞をアポトーシスなどによって排除するというのは面白い現象です。ヒト細胞でもガン発生初期に、この細胞競合によってガン化した細胞を排除している可能性は高いようです。

今回の研究では、高インスリン血症になるとなぜ細胞競合が起こらなくなるかの、メカニズムは分かっていません。この辺りが解析されれば、細胞競合を高める方法が見つかるかもしれません。

ヒトが恒常性を維持して健康な状態に保つ一つの方法として、この細胞競合は有意義な手段となるような気がしています。

チタンが生体組織接着材に

2020-05-20 10:26:59 | その他
金属のチタンの表面に簡単な処理を施すだけで、生体の柔らかい組織と瞬時に接着するようになることを発見したと岡山大学などの研究グループが発表しました。

新しい接着材として、医療への応用が期待されるようです。研究グループはチタンの表面を塩酸と硫酸の混合液を使って70度で10分以上処理し、水素化チタンに変化させました。

これを皮膚の内側の層や筋膜などの生体組織に軽く押しあてると、すぐに高い接着力を生じることが分かりました。簡単な処理ですが、チタンの表面は疎水化するとともに著しい結合水量の減少が生じます。

この状態が生体軟組織との疎水性相互作用を増強し、接着力が生じると考えられています。研究グループによると、血液が固まる性質を利用した従来の医療用接着剤であるフィブリンのりと比べ、接着力は3倍以上となっています。

実用化すれば医療機器の体内への埋め込みや手術に応用でき、作業の簡便化につながるとしています。のりやボンドは液状のものが化学反応で固化しますが、今回の接着材はこれとは全く別で、見た目には単なる金属の薄膜です。

既存の概念には無いもので、接着は想像しにくいといえます。今後接着力をさらに高め、用途を広げていきたいとしています。

身体の機能が低下してくると様々な器具を使ってその機能を補おうとします。眼鏡や補聴器、入れ歯などがそうですが、その機能が体内のものである場合、その器具を体内に埋め込んで使うことになります。

人工骨や人工関節、心臓ペースメーカーなどがそれに当たります。こういった金属は生体との適合が当然必要となりますが、チタンは酸素と結びついて表面に強固な不導体皮膜を形成し、溶けだすことがありません。

何らかの原因でチタンイオンが溶出してしまっても、直ちに酸化してしまい、人体に悪影響を及ぼすことがありません。つまりチタンはもともと体内に埋め込めるほど安心な金属として知られていたのです。

また近年生体骨との強固な結合性が得られる表面処理が開発され、長期にわたる人工関節の使用の道が開きました。

この様に生体適合性に優れたチタンは多くの医療用器具として使用されていましたが、今回の薄膜の接着性が示されたことにより、さらに多くの用途が開発されることが期待できます。

チタンについては非常に多くの研究が進んでいますが、今後も生体との関連において面白い知見が発見されそうな気がします。

新型コロナにBCGの効果は訓練免疫

2020-05-19 10:23:28 | 健康・医療
結核の予防接種である「BCG」が、新型コロナに対する抵抗力を高めているのではないか、という研究が注目を集め、このブログでも紹介しました。

この効果について新たな「訓練免疫」という概念が提唱されています。前回書きましたように、BCG接種とコロナの感染者数や死亡者数は、偶然の一致というよりははるかに良い相関をもって効果が出ていますが、この理由はうまく説明されていません。

これまでもBCGを接種した子供は、感染症の死亡率が低い傾向が見られたり、幼児期のBCG接種が成人期以後の肺ガンのリスクを下げたり、膀胱ガンの進行を抑えたりするという効果を各国の疫学研究者が報告しています。

このメカニズムを解き明かすうえでカギとなるのが、2012年と2018年にオランダの研究チームが発表した報告で、BCG接種で自然免疫が強化されたことを示唆しています。

自然免疫は外来の病原体が侵入すると、常に同じ強さで働くというのが定説でしたが、2度、3度と感染を繰り返すとそれを記憶し、ある程度は強くなりそうだという事が分かってきました。

「自然免疫」は外から来た病原菌と最初に戦う免疫で、その情報を基にウイルスなどに個別に対応して強力に排除するのが「獲得免疫」です。ワクチンは獲得免疫を付けることが狙いで、自然免疫は常に初見で病原体と闘うと考えられてきました。

ところが実際にはBCGが自然免疫と獲得免疫の両方を活性化している可能性が浮上しています。オランダの研究チームは、BCGが自然免疫を強化する現象を「訓練免疫」という新たな概念で提示しました。

BCG接種を受けた人の血液に含まれる「遺伝子スイッチ」の状態を調べたところ、1回の接種で免疫細胞の活性化を狙う「サイトカイン」を分泌しやすくなるようなスイッチが入り、自然免疫がパワーアップした状態になることを突き止めました。

獲得免疫は自然免疫が強化されると動きやすくなり、そこに特異抗原が存在すると、特異的な獲得免疫が始動しやすくなるという事から、BCGがウイルスが存在する中では獲得免疫も動かした可能性があるようです。

オーストラリアやオランダでは、医療関係者らにBCGを接種して新型コロナの感染を防げるかどうかを確かめるための臨床試験が始まっています。

こういった訓練免疫の効果がどの程度あるかは分かりませんが、日本では感染者のほとんどはBCGを接種しているので、ワクチンほどの効果はないのかもしれません。

それでもBCGのような物質が、免疫を活性化するのであれば、新たな予防・治療薬開発の手掛かりとなるのかもしれません。

脳を活性化する1日の食事

2020-05-18 10:26:06 | 自然
1日3食と間食で、糖質などをどうとると脳の力を高められるのか、科学的に検証してみます。

私は脳という器官に興味があり、いろいろ調べたりしていますが、専門的な話は難しすぎてよくわかりませんし、本当に科学的かどうか怪しい話も多いような気がします。

脳のエネルギーとして糖質を摂るのは大事ですが、朝食を含めてアミノ酸も取る必要があります。脳のニューロンが情報伝達に使う神経伝達物質の原料がアミノ酸となっています。

例えば意欲や学習に関わるドーパミンという神経伝達物質は、フェニルアラニンやチロシンといったアミノ酸から合成されます。この内フェニルアラニンは体内では合成できないため、肉類や魚類などのタンパク源から摂るべき必須アミノ酸です。

また覚醒を促すセロトニンは、同じく必須アミノ酸のトリプトファンから作られており、眠りへ誘うメラトニンというホルモンの元になります。脂質が不可欠なのは、ニューロンを包む細胞膜の成分となり、脳の重さの60%は脂質で占められています。

脂質の中でも大豆や卵黄に含まれるレシチンは細胞膜の主成分となっています。こういった脳に良いアミノ酸と脂質が取れるのは、うまみとコクがある美味しいおいしい食べ物となります。つまり美味の追及は脳のためにもなるようです。

空腹の方が頭は働くという人もいれば、間食で何か食べた方が頭は働くという人います。脳に情報をインプットして記憶しないと閃きは生まれず、そのベースとなる記憶力については、どちらも正しいといえます。

空腹時に出るグレリンというホルモンも、食後に出るレプチンやインスリンというホルモンも、記憶を担う脳の海馬に作用して記憶力を高めます。

これは野生動物の行動様式を見ると、空腹で動いてエサが取れたら、そのプロセスを覚えた方が有利になります。エサを食べて満腹になった場所を記憶した方が次も満腹になる可能性が高いといえます。

こういった行動はヒトでも同じと言えるようですが、空腹がいいのか、満腹がいいのかは個人差が大きいようです。ただ私自身はどちらでもあまり差がないように感じています。

最近認知症予防に、地中海食という地中海沿岸の伝統的な食事が良いとされています。これは地中海食の何かが認知症予防に効くのではなく、栄養バランスが良いという点が重要なようです。

また脳のためには、適度に欧米化され、動物性のタンパク質と脂質の摂取が増えた1970年代の和食が良いとされています。

結局脳の力を高めるためには、美味しくてバランスの良い食事をとるという、普通の食事が結論になりそうです。


ドライアイを防ぐ特殊な脂質

2020-05-17 10:19:05 | 自然
涙に含まれる特殊な脂質がドライアイを防いでいる仕組みを、北海道大学の研究グループがマウスを使った実験で解明しました。

ドライアイの主な原因は涙の外側に存在する油層の異常ですが、従来はその仕組みが分からず、油層の異常を標的とする薬はありませんでした。

パソコンやスマフォの使用などでドライアイの患者が増えるなか、効果的な治療薬の開発につながると期待されています。眼球を覆う涙のうち、空気と接する外側の部分には油層があり、これが内側の液相の水分の蒸発を防ぐ障壁の役目をしています。

油層の脂質は、まぶたの裏側にある「マイボーム腺」と呼ばれる器官から分泌されます。この様に水と油の層が安定している仕組みの解明は涙研究の重要な課題でした。

油層には、水と油の両方に溶けやすい性質を持つ特殊な脂質「オーファ(OAHFA)」が少量だけ存在します。

これはオメガ水酸化脂質と呼ばれる物質の一種で、グループはこれが液層と水に溶けにくい大部分の油層との間をつなぎとめている可能性があるとみて、まずオーファを作り出す酵素を特定しました。

次にこの酵素の遺伝子を皮膚以外で欠損したマウスを作り、目に異変がないかを調べました。この遺伝子を完全に欠損させたマウスは、生後すぐに死亡することが明らかとなっています。

グループは欠損部位を色々変えることにより、皮膚には発現させるようにすると、死亡することないマウスを作ることに成功しました。このマウスはまぶたが閉じ気味で、涙が下まぶたにたまっていました。

またマイボーム腺の異常のため脂質が減って水分が蒸発し、ドライアイになっていました。この酵素がないことにより、オーファが正常なマウスの約20%しかないほか、正常なマウスにはあるオーファ以外の他のオメガ水酸化脂質も消えていることが分かりました。

正常なマウスでは涙中の脂質が水に溶けやすいものから、溶けにくいものへと層状に分布することで液層を上手におおい、ドライアイを防いでいることも解明しました。

ドライアイの原因の8割は油層の異常とされますが、治療薬は今のところ液層に働く物しかないようです。

研究グループは、ドライアイの防止に油層の正常な形成が重要であることを、実験で明らかにしたことは大きく、油層をターゲットにした目薬、さらには飲み薬なのど開発につながると期待されるとしています。

私は最近特にパソコンを見ている時間が長くなりましたが、今のところドライアイの症状は出ていません。目というのは最も重要な情報収集器官ですので、こういった研究はなかなか面白いと感じています。