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抗生物質が効かない緑膿菌の新殺菌法

2019-09-07 10:30:14 | 健康・医療
抗生物質への耐性を持つ緑膿菌を殺菌する新手法を、名古屋大学の研究チームが開発したと発表しました。

緑膿菌が生存するのに必須な鉄を取り込む仕組みを利用し、薬剤を菌内に注入して薬剤に近赤外光を当てて活性酸素を出し、菌を死滅させる手法です。

緑膿菌は院内感染などが問題となっており、今後肺や目などの感染に対する治療を目指しています。緑膿菌は水や土の中にいて、免疫力が低下した時に感染します。

細胞壁を作らせない攻撃法を持つ抗生物質(β-タクタム系)等に対して耐性を持つようになり、治療できない状況だとして、世界保健機構(WHO)は、新たな抗菌薬の開発の緊急性が最も高いものの一つとしています。

緑膿菌はほとんどのヒトが常在菌として、身体の中に持っているのですが、増殖力も弱く他の細菌との競合にも弱いため、通常増殖することはありません。

また抗生物質の耐性も他の耐性菌のように抗生物質を分解する酵素を持っているわけではなく、外側の細胞壁が特殊な構造のため、抗生物質が菌体内に入りにくいという性質を持っているためです。

緑膿菌はこういった性質のため日和見(ひよりみ)菌と呼ばれ、他の競合する菌が少なくなり免疫力が低下した時にだけ増殖します。しかし一旦感染増殖してしまうと良い治療法がありませんので、例えば膀胱炎のような尿路感染症や肺炎なども完治が難しい病気となってしまいます。

名古屋大学の研究チームは、緑膿菌が増えるために鉄が必須であることに着目しました。鉄を体内に運ぶタンパク質に、色素の一種である「ガリウムフタロシアニン」がくっつくことを突き止めました。

鉄の代わりにこの色素を取り込ませ、色素に近赤外光を当てると、菌にとって有害な活性酸素が発生します。この色素は道路標識や新幹線の塗料などに使われています。

研究チームは「緑膿菌は自ら増えるために鉄を必要とする。その鉄を取り込む経路を止める方法は、耐性化されにくいと考えている」と述べています。

私も30年以上前ですが、この緑膿菌をターゲットにした抗菌剤の合成を目指したことがあります。しかし緑膿菌の細胞壁は本当に手ごわく、うまく取り込ませて作用させることはできませんでした。

今後緑膿菌感染症になりそうな、難しい持病を持った高齢者は増加し、病院内発症の可能性は高まりますので、今回のような成果は開発を急ぐ必要がありそうです。

今回の発表は、インビトロという緑膿菌に直接作用させた結果のようですが、これが動物体内に投与しても同じように効力を発揮するか、研究の進展を期待しています。


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