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高齢者のうつ病治療の難しさ

2020-09-18 10:35:59 | 健康・医療
元気がなく気分が暗くなる、やる気が出なくてつらい、食欲が出ないといったうつ状態が高齢者で続くとき、「3つのうつ」のどれかが考えられます。

まず身体疾患があることによるうつ、2番目が身体性うつ(これが本当のうつ病です)、最後が心理性のうつとなります。

実は私はうつ病というものに偏見を持っており、単にやる気がないのを甘やかしているのではと思っていました。ところが10年ほど前、私の勤務していた研究所の若手の研究員がうつ病になってしまいました。

一緒の仕事をしていたわけではないのですが、実験室が近かったこともありその様子を見ていると、確かにかなり重篤な病気であると感じました。その研究員は長期休暇の後、転勤してしまいましたのでその後は分からないのですが、うつ病とはかなり怖い病気と感じるようになりました。

この3種類のうつに関しては、精神科医ならばこれを1から順番に疑い、それに合った治療を行わなくてはいけません。ところがこの3つは治療法が異なるにもかかわらず、区別せずに語られることがまれはないようです。

精神科のうつの見方はこの20年ほとんど混乱したままで、一般の人は理解しづらいのは当然かもしれません。うつ状態で第一に疑われるべきなのは、身体疾患です。

発熱や痛みなどの一般的な身体不調でももちろん、すぐには分からない隠れた疾患があれば、元気がなくなり気分が落ち込むことは当然起きます。若年者よりも身体に多く病をかかえ、服薬の種類も多い高齢者ではとくそうなります。

身体各部の不快があれば、炎症や心肺機能不全などが疑われ、そのほか甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンなどの内分泌疾患も疑う必要があります。必要な治療はもちろん身体不調・疾患への対処であり、原因に応じて各身体診療科で治療をします。精神科による治療はほとんど意味がありません。

うつ状態で高齢者に最も多いのが「身体性うつ」すなわち本物のうつ病です。うつ病というとつらい別れやショックな出来事があって落ち込むというイメージを多くの人が抱いていますが、それは「心理性うつ」のことで、高齢者では少なくなっています。

うつ病は以前は「内因性うつ病」と呼ばれ、外の出来事が原因で起きる「心の変調」ではなく、本人もよくわからないうちに起きる「原因不明の脳の変調」です。起因と呼べるようなものがあるときでも、些細な心配事や軽い病気などが多いようです。

この心配事や病気が回復しても、うつ状態は悪いままで、重症化すると昏迷という無言無動の状態に移行してしまう場合もあります。うつ病の人にはつらさを傾聴してあげることが大事とよく言われますが、本当のうつ病には当てはまりません。

これは胃ガンや脳腫瘍などと同じ身体性の病気だからです。根本治療としては、薬物療法が不可欠でそれで不十分ならば電気痙攣療法などを用います。

高齢者のうつ病の治療が困難なことは、3つのうつをしっかり見極めないために起こっているようです。


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