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iPS細胞で脳のミニチュア版「脳オルガノイド」を作製

2022-10-18 10:38:41 | 健康・医療
京都大学の山中先生がiPS細胞の発明によりノーベル賞を受賞されてから、私はiPS細胞の応用に非常に期待していました。

iPS細胞はどんな細胞にも変化しうる万能多能性幹細胞として紹介されています。それ以前の万能幹細胞としてはES細胞が知られていましたが、これはヒトの胚盤からしか取れないため、実際問題としても倫理上の問題などもあり使用が制限されていました。

それが人工的にどんな細胞からも作成できるiPS細胞が出てきたことで、再生医療は飛躍的に進展すると期待していたのです。確かにその後網膜移植や心筋細胞などが作られ、実際にヒトに応用されているという報道がされています。

しかし発見から10年以上たっているのに、比較的簡単そうな網膜細胞の移植でも実用化に向けた臨床試験などの話は全く出てきていません。どこに問題があるのかはよく分かりませんが、1件に数千万円かかるというコストなのかもしれません。

こういった状況でiPS細胞に関しては、やや熱が冷めてきた感じはありますが、慶応大学の研究チームが「脳オルガノイド」を作製したと発表しました。

iPS細胞を使って脳のミニチュア版を作る方法を改良し、アルツハイマー病などの患者の脳内の状態の一部を再現することができたようです。アルツハイマー病などの研究はマウスを使ってされてきましたが、マウスでは必ずしもヒトの病態を反映しない場合があることが課題となっていました。

そこで注目されるのがヒトのiPS細胞などを培養し、脳に似た構造を立体的に再現した「脳オルガノイド」です。患者自身の細胞由来のものが作れるため、より実際に近い病態の再現が期待されています。

研究チームは培養液に含まれる「FGF2」という物質の濃度を従来の10分の1にすると、脳オルガノイドの前段階の作製効率が上がることを発見しました。この方法で家族性アルツハイマー病患者由来のiPS細胞から、脳オルガノイドを作製しました。

約120日培養したところ、発症に関連するとされる物質「アミロイドβ」の塊ができました。この実験ではアルツハイマー病に近い脳の状態が再現できたにすぎませんが、この脳オルガネラをいろいろ検討することによってアルツハイマー病の実態が分かってくるのかもしれません。

このようにiPS細胞は再生医療の分野に貢献するだけでなく、病態の解明や私が期待している創薬研究に役立つ可能性は高そうです。

私にはiPS細胞研究になぜ多額のコストがかかってしまうのかよく分かりませんが、安価な作製は原理的に難しいのかもしれません。

それでも人工的に作れる万能幹細胞があるのですから、応用分野の探索も含めて進展を期待しています。


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