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植物の授精を高める物質を発見

2016-05-21 10:31:02 | 自然
名古屋大学の研究グループが、植物の授精効率を高める物質を発見したと発表しました。

私は植物についてはあまり詳しくありませんので、理解できない部分もあるのですが、化合物によって授精がコントロールされているというのは、なかなか面白い発見です。

簡単にシステムを述べますと、植物特に花を咲かせる被子植物では、雄しべで作られた花粉が、雌しべの先端に到着する、これが受粉となります。これだけではまだ遺伝子は結合しておらず、いわゆる受精にはなっていません。この雌しべに到着した花粉は、花粉管という管を伸ばし、雌しべの奥にある卵細胞などを包んでいる胚珠というところまでたどり着くと、花粉管から精細胞が放出され、卵細胞などと結合して初めて受精となるわけです。

このとき授精するのは卵細胞だけではなく、重複受精と呼ばれる面白い機構があるようですが、ここでは省略します。この時花粉管を正しく卵細胞まで導く、いわば道しるべになるような物質、また花粉管を授精可能な状態にする物質があると考えられていましたが、実態はよくわからないままでした。

名古屋大学の研究グループは、「トレニア」という植物を用いて、この物質の探索を行いました。その結果雌しべには、花粉管に受精能力を持たせる特殊な糖鎖があることを発見しました。

こういった化合物の探索で一番難しいものが糖鎖、すなわち多糖類です。糖類には多くの種類がありますが、化学的に言うとほとんど同じ構造を持っています。ですからこれがつながった糖鎖は、どれも非常に似かよった性質となり分離精製が非常に難しくなります。現在いろいろな分析法が開発されていますが、大部分がタンパク質関連で、糖鎖の分野は非常に遅れており、難しくしている一つの原因となっています。

ですから私はこういった新しい糖鎖を発見したという情報を見ると、本当に大変だったろうなといつも感心しています。研究グループはこの糖鎖に「アモール」という名前を付けました。このアモールを解析していくと、糖鎖末端に2つの糖が結合している珍しい構造であることが分かりました。さらにこの2つの糖だけを切り出してみると、この末端の糖だけで、花粉管に受精能力を持たせることができることを見出しました。いわばこの作用の本体を見つけたことになります。

動物の授精関係の科学は、非常に詳しく研究されていますが、やや遅れていた植物も徐々に明らかになっていくようです。こういったメカニズムが明らかにされ、新しい植物育種などに応用できるのかもしれません。

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