ごっとさんのブログ

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過熱する「医療事故」の報道

2020-11-14 10:31:12 | 時事
医療事故がマスコミで大きく報道されるようになり、現在の医療現場は「できることはすべてやった」と言い訳するための、過剰な防衛医療となっているようです。

人命を尊重し、医療安全を語ることは重要ですが、社会全体に「不寛容な空気」が広まっているような気がします。

医療行為はそもそもリスクがあり、不確実性を伴うことはあまり知られていない、もしくは無視しているような現状です。医療事故などがマスコミで大きく報道されていることで、現在の医療現場はどんどん委縮しています。

患者のための診療として提案したいことを持っていても、リスクがあれば控えておこうといった空気があります。現在の医療安全は「感情的なリスクゼロ」を目指さなければならないという不寛容さがあります。

しかし医療費の増加が問題視され、有限の人的資源の中で成果を上げるには、一定の合理性が必要です。完全なリスクゼロを求めると、いつまでも達成できずどこまでのリスクなら許容できるのかという範囲を合理的に設定する必要があります。

一流の臨床系の医学雑誌の編集長の言葉に「あらゆる疾患の中で、医療が極めて有効なのはわずか11%に過ぎず、80%は医師がいなくても予後に影響しないばかりでなく、9%は医療を受けることによってかえって予後が悪くなる」というものがあります。

やはり医療にはこのようなリスクと不確実性が付いて回るような気がします。学会が医療安全を取り上げるほど、医師は患者の命よりも自分の身を守ることに必死になっているという見方もあります。

これを突き止めると、究極の医療安全は何も医療を施さずに、自然経過を見るということになるでしょう。多くのまじめな医療者は、理論やエビデンスを説明して診療を受けさせようと努力しますが、絶対に受けないといけない医療が世の中に存在するのかという問題となります。

医療によってメリットを受けたいかどうか、宝くじを買って当選金を狙うかどうかは、希望する人が医療を選択する、すなわち1億円を望む人が宝くじを買えばいいということになります。

現在は過剰な防衛医療となり、できることはすべてやったという言い訳をするための、過剰な検査の重複、強引かつ不必要な治療が増えているといえます。医療訴訟問題を過剰にあおることで、誰が利益を得ているのか疑問です。

医療安全をアピールすることで保険加入者が増え、医療者が安全に遂行することで利益が出るのは、保険会社だけのような気がします。

私は医療事故の訴訟を否定しているわけではありませんが、医療がある程度のリスクと不確実性を伴うものであることから、大事として報道することは疑問に思っています。


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