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「慢性疲労症候群」に関連する腸内細菌を特定

2023-05-10 10:33:28 | 健康・医療
最近「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群」(ME/CFS)という疾患が注目されています。

2つの病気のような印象を持ちますが、これでひとつの病気で強い疲労感、胃腸不全、筋肉痛、頭痛、集中力の低下などの症状がみられる慢性疾患です。アメリカのデータですが、最大250万人がこの病気にかかっていたものが、新型コロナ後遺症で急増しているようです。

米政府監査院の推定によると、アメリカでは現在770万人以上がこの病気で苦しんでいるとされています。米国立衛生研究所(NIH)の資金で最近行われた2つの研究では、マイクロバイオーム(腸内細菌叢)の変化がME/CFSの原因となる可能性が示されました。

この患者は通常の人よりも、代謝系や免疫系に関わる物質を作る特定の腸内細菌が少ないことが明らかになっています。ヒトの消化器系には数兆もの微生物が住んでおり、食物の消化を助けたり体の他の部分に信号を送ったりしています。

この患者の腸の生態系が乱された結果、吐き気や下痢などの消化器系の症状が表れるのではないかと考えられます。

2023年2月に発表されたコロンビア大学の研究では、ME/CFSの患者の便のサンプルに含まれる微生物を詳しく分析し、健康な人と比較しています。

注目したのは酪酸を作る細菌で、酪酸は代謝系や免疫系の制御に関わる脂肪酸であり、感染症に対する身体の反応を制御したり、腸と循環系の間にある壁を保護したりするなどいくつかの役割を担っています。

患者の腸における酪酸の役割を詳しく分析し、酪酸を作る菌の少なさと症状の重さが相関していることを突き止めました。また長期患者の方が代謝に重度の問題を抱えている兆候が多く、報告された症状も重くなっています。

これは短期的にマイクロバイオームが変化すると、腸自体が回復しても長期的な免疫系の機能不全が起こる可能性があることを示唆しています。現在ME/CFSは症状のみから診断されていますが、今回の結果が再現されれば、特定の腸内細菌を使った診断もできるようになるかもしれません。

また病気の初期の段階でマイクロバイオームを変化させることで、症状を緩和したり進行を遅らせたりできるとしています。将来的には特定の微生物サプリメントが、マイクロバイオームの健全性に与える影響を、臨床試験で確かめることもできるようです。

こういった腸内細菌叢を改善するためには、赤身肉などの炎症につながる食品を制限し、ヨーグルトなどの発酵食品を多く取ることが勧められています。

このようにME/CFSのような治療法がない疾患が本当に腸内細菌叢によって引き起こされているのかは、今後の研究が必要ですが腸というのは思っている以上に重要な役割を果たしているのかもしれません。


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