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体長1ミリの「線虫」の生物学の常識を覆す生態

2023-09-21 10:36:21 | 自然
最近テレビのCMで「線虫」を用いて尿を調べることで、体内のガンの有無を調べるという事が宣伝されています。線虫がなぜガン患者の尿に集まるのかは分かっていないようですが、線虫には不思議な能力があるようです。

体長わずか1ミリの小動物ですが、線虫は生命現象を分子レベルで理解しようとする分子生物学のモデル生物として知られ、1960年代から研究されてきました。

最近の研究ではシャーレ内を秒速1ミリで這う線虫が、突然立ち上がって約1センチ先に飛び移ることがあり、そのスピードは秒速1メートルという1000倍の加速となります。この線虫の加速装置の正体は静電気でした。

体を植物でこすったマルハナバチを近づけると、線虫は静電気に吸いつけられてハチの体に飛び移ります。こうして線虫の仲間は昆虫や動物の体に飛び乗って地球全体に広がったとしています。

大阪公立大学の研究によると、納豆菌をエサに与えた線虫は大腸菌がエサの場合より寿命が長く、紫外線や酸化ストレスにも強いようです。大腸菌で育てた線虫の平均寿命は15.6日ですが、納豆菌に変えると17.8日に延びました。

強い紫外線を照射後の余命も、納豆菌を食べさせると8.99日から10.83日へと長くなりました。逆に健康に悪い影響を及ぼすのが緑膿菌で、線虫に食べさせると短期間で死んでしまいます。

不思議なことに緑膿菌を食べた線虫が死ぬまでに生まれた子の世代は、一度もあっていない緑膿菌を避け、この行動が孫やひ孫の世代まで受け継がれます。緑膿菌を避ける線虫の体内では、緑膿菌の遺伝子の一部をコピーした短いRNAが大量に作られ、神経細胞で働くようです。

このRNAは線虫の卵巣などにもあり、子孫に「記憶」を伝えているとみられます。知識や経験など成長に伴って獲得した性質は遺伝しないという従来の生物学の常識を覆した発見で、ヒトにも同様の仕組みがあるか解明が待たれるところです。

ドイツなどの研究チームが、シベリアの永久凍土で約4万6000年間も眠っていた線虫の仲間が復活したとする論文を発表しています。線虫に関しては、新型コロナワクチンで注目されたRNAもブレイクスルーは線虫の研究から始まっているようです。

こういったことから線虫は扱いやすく、国際的な共同研究も盛んなので、今後も驚くような成果が出てくるだろうと期待されています。

私は線虫がガン患者の尿に集まるのはどんな物質を認識しているか調べてみたいのですが、こういったバイオアッセイは非常に難しいと予想されます。

それでも線虫というのは、調べればいろいろ面白いことが出てきそうな対象といえるようです。


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