ごっとさんのブログ

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片頭痛に画期的な新薬が登場

2021-03-28 10:29:23 | 
私はいわゆる頭痛持ちではありませんし、頭が痛くなるということはほとんど経験がありません。国内では片頭痛のような患者数はかなり多いようで、推定患者数は840万人ともいわれています。

生活習慣に気を付けたり、薬を適切に使っていても十分な効果を得られない人もいるようですが、今年1月に片頭痛の治療薬の製造販売が承認され、注目が集まっています。

この新薬は「エムガルティ」という抗体医薬ですが、従来の治療薬とは全く違うタイプの薬で、片頭痛の原因物質に直接作用するものです。

片頭痛はこめかみから目のあたりが、ズキズキと心臓の動きに合わせるようなリズムで痛むのが特徴で、吐き気や嘔吐を伴い光や音、気圧の変化や温度の変化に対して敏感になることも多い病気です。

片頭痛の発症メカニズムについては様々な説が唱えられていますが、現在最も有力視されているのが三叉神経が刺激されて起こるという説です。

脳の硬膜および脳血管の周囲の三叉神経に、光、音、気圧の変化など何らかの刺激が加わると、三叉神経の末端からCGRPという物質が放出されます。CGRPは神経ペプチドの一種で、CGRPの放出によって血管が拡張し片頭痛を引き起こします。

さらにCGRPは三叉神経の周囲に「神経原性炎症」を起こし、それが疼痛のシグナルとなり大脳皮質で痛みとして知覚されます。片頭痛発作時と非発作時の血中と唾液中のCGRPレベルを調べた研究では、発作時には明らかにCGRPレベルが高く、非発作時には少ないという結果が出ています。

今回の新薬エムガルティは、片頭痛を引き起こすとされるCGRPに作用する働きを持っています。この新薬を投与することで、片頭痛の標的物質であるCGRPが三叉神経から放出された直後にブロックします。

片頭痛の薬物療法は、頭痛が起きたときに薬を使う「急性期治療」のほか、「予防治療」も重要とされてきました。予防治療薬を定期的に使用し、発作頻度や重症度などの軽減、および生活への支障の軽減を目的としています。

これまでの予防治療薬はカルシウム拮抗薬やβ遮断剤、抗うつ薬など他の病気で使われているものを応用しているにすぎませんでした。今回のエムガルティが初めて片頭痛に特化した薬として開発されたわけです。

臨床試験では、エムガルティ投与群は1カ月当たりの片頭痛日数が4.1日減少するという結果が出ています。また投与1か月目から片頭痛日数が4日減少し、3か月間効果を持続しました。

ただしこの新薬は抗体医薬という点で、かなり高価になることが予想されます。それでもいわゆる特効薬が開発されたことで、片頭痛治療には大きな進歩と言えるのかもしれません。