携帯電話業界ブログ

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「ガラパゴス」モデル、崩壊前夜 スマートフォン隆盛、きしむ護送船団ビジネスモデル

2011-05-19 | 市場動向/日本



 携帯電話会社を中心に、端末メーカー、コンテンツ提供会社が「護送船団」を組む日本式のビジネスモデルがきしみ始めた。きっかけは、スマートフォンの隆盛。

 通信料収入増加と端末調達コストの引き下げが見込めるため、スマートフォンに移行したい通信会社。単価下落や海外勢の攻勢にさらされる端末メーカー。より良いビジネスの場を追求するコンテンツ提供会社。

 日本で花開いた“ガラパゴス”モデルは、崩壊前夜ともいえる状況にある。


●軸足はスマートフォンへ

 「スマートフォンは、携帯電話市場を引っ張っていく」(ドコモの山田隆持社長)。「軸足は完全にスマートフォンに移った」(KDDIの田中孝司社長)。

 16日にドコモ、17日にKDDIが開いた夏商戦モデルの発表会。従来型の携帯電話の説明はほとんどなかった。

 ドコモは2011年度のスマートフォン出荷を全端末の約3分の1に相当する600万台に高める計画で、12年度には半数以上をスマートフォンにする。

 KDDIも、11年度に約3割に当たる400万台のスマートフォンを販売する方針。

 日本独自の進化を遂げ、世界市場から乖離した「ガラパゴス携帯」。通称「ガラケー」と呼ばれる既存の携帯電話市場が一気に縮小しつつある。

 携帯電話会社がスマートフォン販売に力を入れるのは、米アップルの「iPhone」人気で波に乗るソフトバンクに対抗するのに加え、通信収入の減少を食い止めるため。

 ドコモなど携帯電話各社の収入は、契約者当たりの月間平均収入(ARPU)が減少を続けている。

 音声収入の減少をデータ収入で補う構図が続いており、データ収入を拡大するには通信量が大きいスマートフォンの利用者を増やす必要がある。

 ドコモによると、従来の携帯電話契約者のデータARPUは3500-3600円。スマートフォンに切り替えると4割増の5000円前後まで上昇する。

 ドコモの山田社長が「スマートフォン販売は収入拡大の最重要課題」と強調する理由はここにある。


●困惑する携帯電話メーカー

 携帯電話会社の急激な方針転換に困惑するのが携帯電話メーカー。

 「このままではうちはどうなってしまうのか」。危機感を募らせたドコモと関係の深い大手携帯電話メーカー社長はドコモに納入が決まっていた製品を、KDDI側に持ち込み、「うちの製品も納入させてください」と懇願した。

 10日にMM総研が発表した携帯電話の統計では、パナソニックモバイルコミュニケーションズなどスマートフォン販売で出遅れた国内メーカーは軒並みシェアを3-4ポイント落とした。

 現状では国内メーカー各社は収益を確保しているが、11年度以降は赤字転落する可能性もある。

 10年10-12月の国内の携帯電話のスマートフォン比率は約25%だったが、11年1-3月には45%に浮上。メーカーは、主力製品を一気に転換する必要がある。


●一段の再編不可避

 スマートフォン比率が高まっているのは、携帯電話会社が販売代理店に対して払う販売奨励金の影響が大きい。

 スマートフォンの店頭価格は3万-4万円であるのに対して、従来型の携帯電話は5万-6万円と販売価格の逆転現象が起きている。

 これまで国内の端末メーカーは「ドコモファミリー」と呼ばれたように、開発した電話機は通信会社が全量買い取りを前提に、メーカーのOSなどの開発費の一部を通信会社が負担していた。

 スマートフォンではこうした技術補助がなくなってきているほか、端末自体の価格も3-4割下がっているもよう。国内勢のスマートフォンの出荷単価は500ドル前後とみられるが、海外メーカーは3-4割安く製造できる。

 韓国サムスン電子は世界で年間約2億台、LG電子は約1億台の携帯電話を販売しており、1000万台以下にとどまる国内メーカーとは原価では比較にならない。

 韓国メーカー日本法人の幹部は、「コストでは絶対に負けるはずがない」と自信をみせる。このため、「国内勢もある程度コスト度外視で生産せざるを得ない状況」(大手証券アナリスト)という。

 競争の場がスマートフォンに一気にシフトしたことで、「国内メーカーは一段の再編は避けられないだろう」との声も上がり始めている。




【記事引用】 「日経産業新聞/2011年5月18日(水)/20面」


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