携帯電話業界ブログ

── ケータイ業界関連の記事集.

ケータイに官製不況、割賦販売響き市場縮小 メーカーに代償大きく

2008-08-01 | 端末メーカー/日本


 国内携帯電話メーカーが苦境に陥っている。

 最大手のシャープが31日に発表した2008年4-6月決算は、好調だった携帯の不振などで、連結営業利益が前年同期比14%減となった。

 総務省主導で端末販売の方法が変わったことで買い替え機運が冷え込み、官製不況の様相さえ呈している。


●市場の冷え込み深刻

 「販売方法の変化で市場が縮小し、業界首位なだけに影響も大きい」。大阪市内のホテルで31日に決算を発表したシャープの浜野稔副社長の表情はさえない。

 4-6月期の連結営業利益は、14%減の364億円に落ち込んだ。

 業績悪化の主因は、国内携帯電話事業。4-6月の販売台数は前年同期比39%減の299万台、売り上げは38%減の1290億円と低迷し、2ケタ近かった売上高営業利益率も5%に落ちた。

 前年同期にアクオスケータイを大ヒットさせた反動という理由もあるが、国内の携帯電話市場の冷え込みは深刻。

 携帯電話会社大手3社の4-6月の端末販売台数は、前年同期から2割減少している。東芝や富士遍など細かな損益を開示していない大手メーカーも、減収減益に陥っている。


●買い替えサイクル長期化

 国内市場が冷え込むきっかけとなったのは、端末価格を高く設定する一方で通信料を安く抑える新販売方式。

 総務省のモバイルビジネス研究会が昨年9月に報告書をまとめ、携帯電話会社が多額の販売奨励金で端末価格を下げる代わりに、通信料で回収するビジネスモデルに「ノー」を突きつけた。

 NTTドコモは、昨年11月からバリューコースと割賦販売の制度を導入、KDDIも段階的に制度を変更しながら、6月に割賦販売を採り入れている。

 1万円前後の製品が多かった携帯電話売り場の風景は一変。5万円前後が主流になった。

 割賦販売では2年間は同じ端末を使うという実質的な拘束期間が生じるため、消費者の買い替えサイクルは確実に長期化し始めている。

 端末メーカーは当初から販売への影響を懸念していたが、総務省は「適正なコスト競争にさらされることで端末メーカーも国際競争力を持てる」と押し切った経緯がある。


●市場縮小3割減も

 世界市場の5%程度の市場に十数社がひしめく日本の携帯電話市場は、ガラパゴス諸島と椰楡される。端末の高機能化は進んでいるが、世界大手メーカーにはコスト競争力で太刀打ちできない。

 多すぎる国内メーカーを適正な競争にさらして、勝ち残り組は海外に雄飛させる――。そんなシナリオが採用された形だが、現実に起きたのは急激な市場縮小だった。

 大手メーカー首脳は、「当初は1割減くらいかと思っていた市場縮小ペースは3割減になりそう」と危機感を募らせる。

 IDCジャパンの木村融人アナリストは「制度を変更するにしても、ここまでのハードランディングは不要だった。官製不況という側面は強い」と指摘する。


●健闘するメーカーも

 もっとも、健闘しているメーカーはある。

 松下電器産業グループで携帯事業を担当するパナソニック・モバイルコミュニケーションズは、4-6月期の売上高が前年同期比10%増の1188億円で、売上高営業利益率は12.5%となった。

 昨年11月に発売した「ビエラケータイ」がヒットし、出荷台数は8%増の199万台となった。ただ、パナソニックモバイルも「7-9月期以降はこうはいかない」とみている。

 ソフトバンク向けの供給を再開したことで好調だったNECも、「市場の流通在庫が膨らんでいるという情報があり、今後は厳しさを増す」と警戒感を強めている。


●部品メーカーにも余波

 携帯電話市場の縮小の影響は端末メーカーにとどまらず、すそ野の部品メーカーなどにも及ぶ。

 国内の部品メーカーは、高性能を要求する端末メーカーに鍛えられ海外端末大手とも取引を拡大してきたが、業績は変調を来している。

 シャープも、世界首位の携帯電話向けの中小型液晶の採算が低迷している模様。

 昨年から、三洋電機や三菱電機などが携帯端末事業から撤退するなど、国内の業界再編は緒についたばかり。再編が加速して、世界市場で戦えるメーカーが登場する前に総崩れになる心配もある。

 海外の有力企業と互角に渡り合える携帯電話メーカーを育成する道のりは、あまりにも遠い。





【記事引用】 「日経産業新聞/2008年8月1日(金)/24面


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