NECと松下電器産業は7日、携帯電話向けソフトウエア開発の提携関係を解消した。
2006年に共同設立したソフト会社エスティーモ(横浜市)が同日午後、臨時株主総会を開き10月をメドに清算すると決議した。NECと松下は日本発の世界標準OSを目指したが、欧州勢に先行され追いつけないまま終わった。
NECと松下はエスティーモで、無償OS「リナックス」をベースとした携帯OSの開発を進めてきた。
●遅れた海外での普及
開発を始めた当時は、携帯電話機メーカーが独自にソフトを作る方式が主流だったが、第3世代(3G)携帯向けソフトの開発コストを抑制するため、大手2社が手を組んだ。
コスト削減だけでなく、その先にはドコモとも連携しながら「日の丸OS」を海外市場に普及させる構想も描いていた。
だが、ドコモが主導する3G携帯電話は海外での普及が遅れた。ノキアやサムスン電子の牙城を崩しきれず、NECや松下は中国や欧米から相次ぎ撤退した。
OSでは、ノキア傘下の英シンビアンのOSなどが事実上の業界標準になった。さらに、米グーグルが昨秋、携帯向けOS「アンドロイド」を無償で投入。6月にはシンビアンも無償に切り替えると発表した。
携帯メーカーにとっては、これまで最もコストのかかっていたOSを簡単に調達できる環境が整い、松下・NEC提携の枠組みは無力化した。
今後、松下、NECは世界の50社が参加する携帯向けリナックスOSの標準化団体「リモ・ファンデーション」にOS開発を委ね、OS以外の開発分野に注力する。
NECは、NTTが進める次世代ネットワーク(NGN)と携帯の連携に付加価値を追求。松下も薄型テレビ「ビエラ」など家電との連動に活路を見いだす考え。
【記事引用】 「日本経済新聞/2008年8月8日(金)/11面」