携帯電話業界ブログ

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NEC、パナソニックと携帯開発離別 「最強連合」誤算相次ぐ

2009-09-17 |  パナソニックモバイル



 NECが、カシオ計算機や日立製作所と携帯電話事業を統合すると発表した。

 この統合は、NECが長年携帯電話事業でつき添ってきたパナソニックとの関係の終わりも意味する。8年間に及んだ「NP連合」の変遷は、日本の携帯産業の地殻変動を抜きにしては語れない。

 両社の離別は、新たな携帯メーカー再編の呼び水にもなりそう。


●不快感あらわ

 「当社には何の連絡もない。公然と浮気された気がしないでもない。」

 NECの携帯電話開発部門と、カシオと日立の共同出資会社であるカシオ日立モバイルコミュニケーションズが統合を検討していることが新聞報道された8月30日、パナソニックの幹部は不快感をあらわにした。

 NECとパナソニックが携帯電話事業で最初に提携したのは、2001年8月。国内シェア26%で首位の松下と、同23%で2位のNECが手を組んだ。

 NECの西垣社長(当時)は、「両社の技術を組み合わせれば、世界最大のノキアに対抗できる最強連合」と解説した。

 今では大言壮語に聞こえるが、その時は第3世代の携帯サービスが日本で最初に商用化され、海外メーカーが追従してくると思われていた時代だった。

 第2世代の携帯とは比較にならない巨額なソフトウエアの開発コストを軽減し、「ノキアが傘下に持つシンビアンのように、共同開発のOSを世界標準にする戦略だった」(バナソニックモパイル幹部)。


●3つの誤算

 間髪を置かずに両社は02年6月、最大市場の中国で第3世代携帯の開発合弁会社を設立するが、これが携帯事業での最初の誤算になった。

 中国だけでなく、欧米各国の携帯会社は日本勢が思い描いたように第3世代携帯に追従してくれなかったのだ。

 中国市場は今年、国内シェア1位のシャープが第3世代携帯投入に緒をつけたばかり。NP連合の判断がいかに先走っていたかがわかる。

 突然の浮気というよりは、「両社の間には当初からすき間風が吹いていた」(関係者)ともいわれる。

 第2の誤算は、「似たもの同士」の両社の関係。電電公社時代からNTTに機器を納入してきた両社の携帯部門は、開発の局面でそりが合わなかったという。

 事業部門同士では合意しても、その下に置かれた両社の半導体部門同士が自社の開発資産にこだわり続けた。それでも06年には、携帯用ソフトの共同開発会社エスティーモの設立にこぎ着けた。

 だが、世界では「デファクト・スタンダード」とは正反対の潮流といえる「OSのオープン化」が動き出していた。これが第3の誤算。

 追い打ちをかけるように07年以降、NTTドコモなどの携帯キャリアが.端末価格を値上げして通信料を下げる新料金プランを導入すると、国内の携帯端末市場は急速に縮小。

 NP連合は昨年8月、わずか2年でエスティーモを清算した。


●互いの販路を活用

 NECカシオモバイルコミュニケーションズは、国内でドコモ・ソフトバンク向けやKDDI向けの互いの販路を活用する。

 NECにとっては、「カシオ日立モバイルが販路を持つ米キャリアとの関係を北米再進出の足がかりになる」(大武章人NEC取締役)狙いがある。

 「だって、カシオ日立モパイルは我々にないものを持っているから」。NEC関係者は、パナソニックとの苦い経験をかみしめるように話す。

 国内の携帯電話業界は、似た者同士の最強連合でデファクトを奪う時代から、異なる者同士が補完し合い世界市場への出場権を狙う時代に移ったといえるかもしれない。





【記事引用】 「日経産業新聞/2009年9月17日(木)/10面


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