需要拡大が続くスマートフォンの特許を巡る米アップルと主要スマートフォンメーカーとの訴訟合戦が混迷を深めている。アップルは台湾の宏達国際電子(HTC)を再び提訴し、HTC株は12-13日と急落した。
同市場で先行したアップルと、米グーグルの携帯用OS「アンドロイド」を搭載するHTCなどとの競争激化が背景にあるが、不毛な消耗戦を懸念する声も上がり始めた。
●激しい市場競争
アップルは8日付で米国際貿易委員会(ITC)に対し、HTCのスマートフォンがアップルの特許を侵害しているとして、米国への輸入差し止めなどを求める訴状を提出した。
アップルがITCにHTCを提訴するのは2回目。昨年3月にも同様の訴訟をITCと米連邦地裁で起こし、同5月にはHTCがアップルを逆提訴している。
再提訴が11日に明らかになったことで、翌12日からHTCの株価は急落。13日の終値は前日比4.9%安の870台湾ドル(約2400円)と、2日間の下げ幅は113台湾ドル(11.5%)に達した。
同社はアンドロイド搭載スマートフォンの米国向け出荷増で成長。昨年は売上高の過半を米国が占めた。今年4-6月期も売上高、利益とも前年同期の2倍と好調だが、「北米販売に影響が出かねない」との懸念が広がった。
アップルは、サムスン電子とも同様の訴訟合戦を抱える。
最近では、サムスンが6月28日にITCにアップルが特許を侵害したとして提訴。アップルは今月5日、ITCにサムスンを逆提訴した。背景には激しい市場競争がある。
アップルの「iPhone」はスマートフォンをビジネスマンだけでなく、一時消費者に浸透させるこみに成功したが、HTCやサムスンが追撃。OS別シェアでは「アンドロイド」がアップルを上回る状況が続いている。
●係争長期化の懸念
アップルとグーグルの代理戦争のような訴訟合戦だが、舞台裏の混乱も顕在化し始めた。
ロイター通信は12日、アップルの訴訟担当トップが来月退社すると報道。別の米メディアはサムスンが、アップル側の一部の弁護士が元々はサムスン側の弁護士だったとして今回の訴訟から外すよるに求めたと報じた。
一部の関係者からは、「訴訟合戦で得するのは弁護士だけ」と係争の長期化を懸念する声も出始めている。
【記事引用】 「日本経済新聞/2011年7月14日(木)/7面」