携帯電話業界ブログ

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インド、携帯電話加入件数が急減速 詳細統計公表やSIMの「2枚目需要」一巡が一因

2011-11-13 | 市場動向/中国・インド



 世界2位の携帯電話市場インドで、加入の伸びが急減速してきた。

 足元の月間純増数は4年ぶりの低水準。詳細統計の公表開始を機に各社が闇雲に新規加入を増やさなくなったのに加え、電話機に差し替えて使う利用者識別カード(SIM)の「2枚目需要」が一巡したのも一因。

 今後は、データサービスの充実や農村開拓が各社の収益拡大のカギとなりそう。


●闇雲な加入獲得方針見直し

 インドの携帯電話の累計加入件数は8月末で8億6570万件。2009-10年の通話料の値下げ競争が追い風となり、世界1位の中国(9月末で9億5230万件)を猛追してきた。

 ところが、年初から加入ペースが鈍化。最大手バルティ・エアテル、2位のボーダフォン・エッサールなどの月間純増数は足元で100万件強と、昨年の月300万件弱から急減した。

 NTTドコモの出資先で6位のタタ・テレサービシズの減速も目立つ。8月の純増数は24万件と、値下げ攻勢をかけていた09年末の7%。7月には累計加入も267万件減った。

 原因の一つとみられるのがインド電気通信規制庁(TRAI)によるアクティブユーザー比率の公表。累計加入はいわば、SIMカードの累計販売枚数だが、このうち継続利用中のSIMの割合を、TRAIが昨年末から公表し始めた。

 同比率はエアテルで89%、ボーダフォンで81%、タタで50%。これが実際の顧客基盤を示すだけに、各社はSIMの累計販売という見かけ上の勢力を競う意味が薄れ、闇雲な加入獲得方針を見直した模様。

 「2枚目のSIMの購入需要が一巡した」(ボーダフォンの販売戦略担当パリダ氏)のも鈍化の一因。

 インドでは複数のSIMを持ち、通話相手の契約先に合わせてSIMを差し替えて通話料を抑える人が多い。値下げ競争が消費者の節約志向を刺激し2枚目、3枚目のSIMを買う人が増えた。

 昨年以降、価格競争が一段落し、「2枚目」需要が激減したという。


●データと農村に注目

 加入統計が頭打ち感を強める中、各社が収益拡大へ注目するのが「データと農村」(パリダ氏)。ボーダフォンは9月、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の提供で英社と提携した。

 農村開拓では携帯電話サービス各社は遅れ気味だが、電話機メーカーでは韓国のサムスン電子が今年、革新的な用途の考案者に贈る賞をインドで新設。

 受賞者の1社に、南部バンガロールの新興企業ヴィンフィネット・テクノロジーズを選んだ。同社が考案したのは携帯電話による農業用水ポンプの遠隔操作。制御盤にSIMを装着すると、音声案内でポンプの開閉や作動確認ができる。

 同社のレッディ最高経営責任者(CEO)は、「インドの5000万のポンプに広めたい」と意気込む。

 インドの携帯電話市場では売上高に占めるデータ通信の割合は1割未満、累計加入に占める農村の割合は3割。価格競争でしのぎを削った携帯電話各社の軸足は、徐々にこうした新市場の開拓へと移っていきそう。




【記事引用】 「日本経済新聞/2011年11月13日(日)/5面」


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