携帯電話業界ブログ

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NTTドコモ、海外戦略の強化に乗り出す スマートフォン向けサービスを核、土管型ビジネス避ける

2012-06-09 |  NTTドコモ



 NTTドコモは、イタリアの携帯電話向けサービス会社を7月にも買収するなど、急速に浸透するスマートフォン向けサービスを核に海外戦略の強化に乗り出した。

 ネットワーク提供だけに頼る「土管」型ビジネスに陥るのを避ける狙い。

 しかし、ドコモには、日本で大ヒットした従来型携帯電話向けサービス「iモード」の普及を急ぎ、米携帯電話大手などに相次ぎ出資したものの、巨額の投資損を出した苦い経験がある。

 過去の失敗を教訓に、スマートフォンの国際競争では攻めの姿勢を貫き、リベンジを誓う。


●スマホ向けサービス拡充

 ドコモが今回買収するのは、イタリアの「ボンジョルノ」。

 株式公開買い付け(TOB)で3分の2超の株式の取得を目指す。すでに今月4日に買い付けを開始。完全子会社化した場合の買い付け総額は2.2億ユーロ(約240億円)となる。

 同社は欧州、北米、南米など57カ国で携帯向けコンテンツ配信などを手がける。コンテンツ開発力にも定評があり、ドコモ国際事業部の紀伊肇部長は「(買収を機に)スマートフォン向けのサービスを拡充したい」と意欲を示す。

 ドコモが世界へ再び挑戦する背景には、米アップルなどがスマートフォン向けサービスを展開し、顧客の囲い込みを進めていることへの対抗心がある。アップルに真っ向勝負を挑まなければ、「土管」型ビジネスに甘んじることへの恐れがあるからだ。

 データ通信量が飛躍的に拡大するスマートフォンでは、サービス利用による通信料収入などが「ドル箱」となる。スマートフォン利用者が拡大する中、ドコモはここを取りに行くつもりだ。

 ドコモは、クラウドを活用してこれまでにない機能をネットワークに持たせるなど、国内外で新たなスマートフォン向けサービスの提供を目指す。すでに国内ではクラウドによる音声認識サービス「しゃべってコンシェル」を始めている。

 こうした新サービスの海外展開での足がかりとなるのが、ボンジョルノなどの事業者というわけだ。

 実際、ドコモはスマートフォンが登場し始めたころからコンテンツ配信などのサービス事業者に攻勢をかけており、09年にはドイツの「ネットモバイル」、11年にはベトナムの「VMG」にそれぞれ出資した。


●ためされる底力

 ただ、ドコモの海外事業には苦い思い出がつきまとう。

 2000年にオランダのKPNモバイルに約4000億円、01年には米AT&Tワイヤレスに1兆2000億円を投じ、豊富な資金力を背景に海外投資を本格化した。

 ところが、世界的なITバブル崩壊に見舞われ、すべて撤退を余儀なくされ、差し引きで約1兆5000億円の大損失を被った。

 当時のドコモの狙いは、独自の「iモード」などを海外で普及させることだった。ところが対応端末が限られ、利用は伸び悩んだ。国際事業部の紀伊部長は「ネガティブな要因が重なってうまくいかなかった」と失敗を認める。

 ある業界関係者は、「見通しが甘かったといわれても仕方がない」と断じた。

 総務省によると、11年度末の携帯電話とPHSの国内加入契約数は約1億3276万台で、国勢調査による日本の総人口(直近は1億2805万7352人)を上回った。

 携帯電話市場は「1人1台超」の局面に入り、市場の急速な拡大は見込めない。携帯電話会社にとって海外展開は急務だ。さらに、急成長するスマートフォンへの対応は国内外で喫緊の課題となっている。

 こうした中、スマートフォン向けサービスにかじを切るドコモは、今度は不退転の覚悟で海外に挑む。

 紀伊部長は、「過去はマイノリティー(少数)出資で、(相手を)コントロールしにくかった」と敗因を分析。その上で、今後は「新領域に出ていくときにはマジョリティー(多数)をとらないといけない」と覚悟を決める。

 スマートフォンの世界市場で、存在感を示せるか。ドコモの底力が試される。




【記事引用】 「フジサンケイビジネスi/2012年6月9日(土)」


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