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米アップル、スティーブ・ジョブズCEO退任 日本国内でのiPhone販売に余波も

2011-08-30 | 端末メーカー/世界



 米アップルのスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)の退任が、日本の通信事業者(キャリア)にも影響を及ぼしそうだ。

 国内ではソフトバンクモバイルだけがアップルのスマートフォン「iPhone」を取り扱う。だが、トップ交代で交渉条件に微妙な変化が出れば、NTTドコモやKDDIもアイフオーンを販売する可能性がでてくる。


●注目される国内キャリア動向

 人気商品のiPhoneを独占販売するソフトバンクモバイルは、携帯電話純増数で16ヵ月連続トップの座にある。売上高2位のKDDIの背中も射程内に入ってきた。

 iPhoneの販売は08年当時、NTTドコモが優勢とされていたが、ソフトバンクの孫正義社長による熱烈なアプローチで劣勢をひっくり返した。

 その時にソフトバンクモバイルは厳しい販売数量を設定され、ドコモ側はこの条件を飲めなかったというのが通説。

 アップルはこれまでiPhoneの販売を1国1キャリアに限る戦略を取ってきた。だが、ここに来て複数の通信キャリアに提供する方針に転換している。

 米国ではAT&Tだけだったが、今年から米国携帯大手のベライゾン・ワイヤレスにも提供。今秋に発売がうわさされる「iPhone5」はスプリント・ネクステルにも提供するという報道が出ている。

 そうなると、注目されるのが日本国内の通信キャリアの動向。ドコモのiPhone販売は現状では難しいと見られる。08年時と同様に販売数量の設定が大きなネック。

 ドコモは携帯電話インターネツト接続サービス「iモード」を端末に載せられないiPhoneが主力になれば、年間数千億円の収入を自らみすみす捨てることになる。

 社内では通信キャリアが土管(通信回線のみの提供)の役割となるアップルの垂直統合モデルへの抵抗はかなり根強い。KDDIも同様な理由からアップルと距離を置いてきた。


●変わる風向き

 だが、少し風向きが変わっている。米ベライゾンが今年、無線通信方式の一つ「CDMA2000」を採用したiPhoneを販売。同じ方式のKDDIも受け入れる下地は整いつつある。

 スマートフォンの投入に出遅れたKDDIにとって、ソフトバンクモバイルの存在が背後に迫っていることもある。アップルが提示する厳しい条件を飲むかどうか、KDDIの田中孝司社長は大きな決断を迫られる。

 一方、ジョブズ氏の退任を一番気にしているのはソフトバンクの孫社長かもしれない。従来通りアップルの製品を日本で独占販売できるかどうか、同社にとっては生命線と言える。

 ネットワーク品質の良いドコモやKDDIがiPhoneを取り扱えば、乗り換えが増えるのは必至。

 ジョブズ氏のCEO退任は国内の通信キャリアも無視できない。テイム・クック氏へのトップ交代で、iPhone販売の交渉条件がこれまでより軟化するかどうか、ドコモやKDDIは固唾を飲んで見守る状況が続きそう。




【記事引用】 「日刊工業新聞/2011年8月30日(火)/14面」


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