里山悠々録

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人を惑わせる米食味ランキング

2019年03月17日 | 田んぼ

 先頃、平成30年産米の食味ランキングが発表されました。
 これは毎年一般財団法人日本穀物検定協会が全国の品種の白飯を試食して評価し、ランキングを行っているものです。
 特Aランクなるものができてから、今頃になると関係者がこの発表に一喜一憂する姿が毎年のように見られるようになりました。
 昨年は、魚沼産コシヒカリが特Aランクから外れ大きな話題になりました。

 今年、本県産の米は、ひとめぼれ、ササニシキ、つや姫と主力3品種が特Aランクを獲得し、一安心といったところですが、喜んでばかりでいいものでしょうか。ササニシキは実に23年ぶりの特A取得ということですが、来年はどうなるか分かりません。

 魚沼産コシヒカリはさすがに特Aに復活しましたが、山形県では主力のはえぬきは今年も取得できず、岩手県はひとめぼれが特Aに復活したものの力を入れている新品種(参考品種扱い)の金色の風は評価を落としました。各県の関係者はさぞかし困惑していることでしょう。

 日本穀物検定協会の食味試験は、専門の評価員20名で白飯の「外観・香り・味・粘 り・硬さ・総合評価」の6項目について、複数産地コシヒカリのブレンド米を基準米とし、各産地の品種を比較評価して、基準米同等のものを「A'」、上位のものを「特A」、「A」、下位のものを「B」、「B'」と5段階にランク付けしています。 
 かつて基準米は日本晴だったと記憶していますが、今はコシヒカリですから評価の基準は相当変わっているはずです。ブレンド米はどこの産地のブレンドか興味のあるところです。
 食味試験はあくまでも人間の目と舌で評価するわけですからどんなエキスパートでも主観に左右されることは否めません。今の品種は、昔のように量は沢山穫れるけれどもはっきりまずいといった品種は見なくなりました。

 本県のササニシキは23年ぶりの特Aということですが、私は、基準米がコシヒカリである以上、再び特Aになるのは難しいだろうと見ていました。それはおいしさの基準が違うからで、マグロと鯛ではどちらがおいしいかといったことに近いのではないかと思います。

 かつて本県のササニシキは新潟コシヒカリとともに旨い米の両横綱といわれていました。それぞれ旨さに個性があり、支持する消費者が二分されていたとも言えます。特に寿司米としてササニシキは高い支持を得ていました。
 しかし、ササニシキは低温と病気に弱く作りづらいため、平成5年の大冷害を契機に、ひとめぼれに大きく転換されました。我が家も同様です。

 ひとめぼれはコシヒカリの血が入っているので粘りが強く歯ごたえがあるため、当時、ササニシキに慣れた人はひとめぼれは顎が疲れるなどと言う人もいました。
 ところが、先日偶然テレビで米の各品種の特徴を紹介していたので見ていたら、ひとめぼれは一番あっさりしています、と紹介していたのでびっくりです。それほど、今は粘りのある餅けの強い品種ばかりになったと言うことなのか、そして、人間の舌の基準は変わっていくもの、はたまた人の主観というのはよく分からないもの、と考えさせられたことでした。

 何年か前になりますが、新米の試食会に出る機会があり、ひとめぼれ、ササニシキ、こしひかりの白飯を食べ比べて当てる催しがありました。ひとめぼれとコシヒカリは間違うかもしれないがササニシキは間違わないだろうと思ったところ、見事全部外れてしまいました。
 とかく、米は果物のように甘い、酸っぱいといったものではないので評価そのものが難しい。炊くときに、米の乾燥具合や品種にあった水の量というものがあり、釜との相性もありそうです。また、個人の好みの硬さもあるので、全く同じ条件で食味試験すれば、有利不利が出てしまうのはやむを得ないでしょう。少なくとも、今は粘りは強いほどプラスに評価されています。

 本来であれば、品種の特徴に応じた炊き方で、もっと合理的な、そして個性を評価する仕組みが必要と思うのですが。さもなければ、人を困惑させない発表の仕方を考えてほしいものです。
 来年、また同様の風景が繰り返されることでしょう。
 ちなみに、日本穀物検定協会の食味試験の釜はパナソニック製だそうですが、我が家の釜は古い安物の釜ですが違います。