現代詩手帖5月号「パレスチナ詩アンソロジー」を読んで
照る日曇る日 第2069回
英語で書かれたものだけの抄訳らしいが、いつもと違う世界史の詩集抄の特集を読むと、私の棲息している世界が、いかに疑似平和と疑似安息にみちみちた楽園であるかに気づかされて、愕然とする。
ここではアンソロジーの中から、昨年12月6日にイスラエル軍の爆撃の標的にされて!暗殺された詩人・作家・活動家のリファト・アルアライール氏の遺書となった作品の冒頭と末尾だけを、松下新土氏の翻訳で引用させてもらいたいと思う。
「わたしが死ななければならないのなら」
わたしが、死ななければならないのなら
あなたは、生きなくてはならない
わたしの物語を語り
わたしのもちものを売り
ひと切れの布と
糸をすこし買って、
(中略)
もし、わたしが死ななければならないのなら
希望となれ
尾の長い 物語となれ
このような衝撃的な詩を読んで、私は愕然とはするが、だからというて、どうする訳でもない。またどうしようもない。
戦争で殺されることのない日常を、葛西薫氏の表現を勝手にお借りして表現すれば、「一日一日が、大切で宝石のよう」に感じるのみなのだ。
御一新の頃からの悪しき血流れ吾輩は訪日外人みな嫌いなり 蝶人