Symbian OS v9 が発表されました。ただし前に書いた通りSymbian OS は UI toolkit を固定しないとユーザにとっての機能が決まらないので、この発表が直ちに携帯電話の機能に影響を与えるとは思いません。
私は機能とはまったく関係ないことを気にしています。Symbian OS に導入されたリアルタイムカーネルは μITRON を駆逐できるか。
μITRON はとっくに駆逐されたと思う方は与太話にお付き合いください。
NTT DoCoMo FOMA 901 シリーズから Symbian OS と Linux の採用が大々的に進み、マスコミでは μITRON は「いにしえの OS」として語られるようになりました。それと同時にアプリケーションプロセッサの導入がニュースになりました。さて、アプリケーションプロセッサの OS は自明として、通信機能だけに特化したベースバンドチップはどんな OS で動いているんでしょうか? Linux の SMP 機能で動いているんでしょうか? Symbian OS が SMP に対応していないというのは嘘なのでしょうか? 私はそう思いません。きっと μITRON で動いています(内部情報は持っていません、念のため)。
ベースバンドチップはとても小さなタスクがとてもたくさんの回数だけ実行されます。メールを書いている途中に音着があったから電話に出るというレベルではありません。パケットを一つ受信したら次のパケットを受信するまでに他の仕事をする、というとても細かい仕事をしています。携帯電話の高機能化で他の仕事が増えたりしましたが、アプリケーションプロセッサの登場で本来の仕事に専念するようになりました。そのとき使われる OS は機能と経験から μITRON だと思います。それは過去の拘泥した悪いことではありません。μITRON はそもそも、工業用ロボットなどの制御で CPU パワーがぎりぎりのときでもシビアなタスクスケジューリングを行って大過なく動かすことが目的の OS(というかタスク切り替え機能。μITRON にはそれしかありません)なんですから。大脳と小脳は仕組みが異なるほうが合理的なんです。
Windows や UNIX などのパソコン・サーバ用 OS と μITRON などのリアルタイム OS の違いはタスクスケジューリングにあります。Windows や UNIX のタスクスケジューリングは結果平等が基本で温情がききます。あるタスクが長い時間走っていると「次は他のタスクに回そうか」と気を利かせます。だからエンコの途中でもファイラーは反応して、双方「それなりに」動きます。それに対してリアルタイム OS は軍隊式です。プログラマは「優先度ベースのタスクスケジューリング」と呼びますが、一言で言えば「階級は絶対」です。タスクは全て事前に階級が決まっています。下士官が仕事をしていても上官が命令すれば必ず上官のタスクに切り替わります。それを強制的に止められるのはさらに上官だけです。下級兵士にはつらいですが、そうでなければ部隊が全滅します。それでも重要な戦線を落とすようなら将校の任命と兵站補給のミス、そういう世界です。リアルタイム OS と聞くと「軽いのに高機能な素晴らしい OS」を想像しがちですが、魔法じゃあるまいしそんなことはないんです。
それを今度の Symbian OS はベースバンドチップの領域に踏み込もうとしています。今まではベースバンドチップとアプリケーションチップを分けていましたが、v9 からは Symbian OS 自身がリアルタイム処理を兼ねるのでベースバンドチップで Symbian OS を走らせても携帯電話が動く、つまりアプリケーションプロセッサが不要になるのでローエンドの携帯電話にも採用できます、と宣伝しています。
でも、携帯電話メーカが踏み切れるかどうか。今までの資産、それも通話やパケット通信を途切れずにできるかという低レベルな部分を捨てて作り直しになりますから。やっぱり Symbian OS 搭載機は アプリケーションプロセッサ搭載端末だけにしてベースバンドチップしかない端末は独自 OS を使い続けよう、そう思って不思議じゃないです。本当はリアルタイムカーネルは 8.0 からオプションで用意されていて Symbian OS 8.0b (古いカーネルが 8.0a) と名付けられていましたが、Nokia 6630 では見送られたりしましたし。
これからどうなるのか、とっても楽しみなんですよ。
私は機能とはまったく関係ないことを気にしています。Symbian OS に導入されたリアルタイムカーネルは μITRON を駆逐できるか。
μITRON はとっくに駆逐されたと思う方は与太話にお付き合いください。
NTT DoCoMo FOMA 901 シリーズから Symbian OS と Linux の採用が大々的に進み、マスコミでは μITRON は「いにしえの OS」として語られるようになりました。それと同時にアプリケーションプロセッサの導入がニュースになりました。さて、アプリケーションプロセッサの OS は自明として、通信機能だけに特化したベースバンドチップはどんな OS で動いているんでしょうか? Linux の SMP 機能で動いているんでしょうか? Symbian OS が SMP に対応していないというのは嘘なのでしょうか? 私はそう思いません。きっと μITRON で動いています(内部情報は持っていません、念のため)。
ベースバンドチップはとても小さなタスクがとてもたくさんの回数だけ実行されます。メールを書いている途中に音着があったから電話に出るというレベルではありません。パケットを一つ受信したら次のパケットを受信するまでに他の仕事をする、というとても細かい仕事をしています。携帯電話の高機能化で他の仕事が増えたりしましたが、アプリケーションプロセッサの登場で本来の仕事に専念するようになりました。そのとき使われる OS は機能と経験から μITRON だと思います。それは過去の拘泥した悪いことではありません。μITRON はそもそも、工業用ロボットなどの制御で CPU パワーがぎりぎりのときでもシビアなタスクスケジューリングを行って大過なく動かすことが目的の OS(というかタスク切り替え機能。μITRON にはそれしかありません)なんですから。大脳と小脳は仕組みが異なるほうが合理的なんです。
Windows や UNIX などのパソコン・サーバ用 OS と μITRON などのリアルタイム OS の違いはタスクスケジューリングにあります。Windows や UNIX のタスクスケジューリングは結果平等が基本で温情がききます。あるタスクが長い時間走っていると「次は他のタスクに回そうか」と気を利かせます。だからエンコの途中でもファイラーは反応して、双方「それなりに」動きます。それに対してリアルタイム OS は軍隊式です。プログラマは「優先度ベースのタスクスケジューリング」と呼びますが、一言で言えば「階級は絶対」です。タスクは全て事前に階級が決まっています。下士官が仕事をしていても上官が命令すれば必ず上官のタスクに切り替わります。それを強制的に止められるのはさらに上官だけです。下級兵士にはつらいですが、そうでなければ部隊が全滅します。それでも重要な戦線を落とすようなら将校の任命と兵站補給のミス、そういう世界です。リアルタイム OS と聞くと「軽いのに高機能な素晴らしい OS」を想像しがちですが、魔法じゃあるまいしそんなことはないんです。
それを今度の Symbian OS はベースバンドチップの領域に踏み込もうとしています。今まではベースバンドチップとアプリケーションチップを分けていましたが、v9 からは Symbian OS 自身がリアルタイム処理を兼ねるのでベースバンドチップで Symbian OS を走らせても携帯電話が動く、つまりアプリケーションプロセッサが不要になるのでローエンドの携帯電話にも採用できます、と宣伝しています。
でも、携帯電話メーカが踏み切れるかどうか。今までの資産、それも通話やパケット通信を途切れずにできるかという低レベルな部分を捨てて作り直しになりますから。やっぱり Symbian OS 搭載機は アプリケーションプロセッサ搭載端末だけにしてベースバンドチップしかない端末は独自 OS を使い続けよう、そう思って不思議じゃないです。本当はリアルタイムカーネルは 8.0 からオプションで用意されていて Symbian OS 8.0b (古いカーネルが 8.0a) と名付けられていましたが、Nokia 6630 では見送られたりしましたし。
これからどうなるのか、とっても楽しみなんですよ。