最近「Symbian OS」というキーワードが注目を集めています。例えばケータイ Watch に次のように書かれたりします。
こういう文章を読むと、巧みなマーケティングはよくも悪くも人を動かすのだと身にしみます。
Symbian OS は UI を統一している訳ではありませんし、アプリの互換性も保証しません。超勝手アプリどころか Java アプリもインストールできない事すらあります。
Symbian OS にはプロセス管理・ストレージ管理・プロトコルスタックは含まれていますが、UI toolkit は含まれません。UI toolkit は後付けで、取り換えがきくんです。UI toolkit とは呼ばないものの。アプリを作るときには C++ のクラスライブラリを親クラスにするんですが、UI toolkit が変わると親にするべきクラスが変わるんです。
OS が同じならプロセスぐらい作れるはずと考える方も居られるでしょう。しかし Symbian OS v.8.1 まで出ている現在のところ、私たちが Symbian 端末向けアプリと呼んでいるものは EXE ではなく DLL なんです。DLL はエクスポートしたメソッドをランタイムから呼び出されて動作を開始します。C++ で親クラスが変わってエクスポートするシンボルが変わったら果たして呼んでもらえるかどうか、というのは少し FUD で、シンボルテーブルでは場所を食うので整数値でエントリポイントを管理しているのですが。
Nokia 6630 が Series 60 という名を名乗るのを見て「Series 60 って Symbian OS のことでしょ」と多くの人が思うとき、技術的にはむしろうやむやになっています。Series 60 は Nokia の代表的 UI toolkit で、ここが決まると超勝手アプリを流通させられるんです。
でも Symbian OS には Series 60 しかない訳ではありません。Nokia にしても端末の画面サイズに応じて多くの UI toolkit を内製しています。Series 40 (画面が 128x128)、 Series 80 (画面が 640x200、開くとフルキーボードが出てくるタイプです)、 Series 90 (画面が 640x320、せいひんになったかなあ)。Series 60 は画面サイズ 176x208 が基本です。この中で Series 60 だけアプリが多いのは Nokia が Series 60 だけ他社にライセンスしているからです。
他の会社が作った UI もあります。SonyEricsson が作った UIQ はペンを使った UI でまさに PDA です。"ソニ" というより "エリ" ですが。
富士通製 FOMA はというと、おそらく内製です。内製した事が富士通のプレスリリースにあります。理由はいろいろ考えられます。当時は他の UI toolkit は日本語に対応していなかったこと。そして NTT DoCoMo が「ネイティブアプリをインストールできないように」と指示したとの噂も。こんな事情があるので海外で有名な「Symbian OS 向けウィルス」に感染しないんです。あれは実は Series 60 専用ですから。
あの FOMA らくらくホンもプロセス管理は Symbian OS ですからね。これは UI toolkit をまた一つ作ったのかなあ。
だから Symbian OS は別にスマートフォン専用ではありません。ここを抑えておかないと、
A:「Symbian OS を搭載した携帯電話は PDA なみにアプリが追加できるんだよ」
B:「らくらくホンを使うお年寄りにどうやって理解させるの?」
というピント外れな会話になってしまいます。
Symbian OS というキーワードが実体として語られるのは Symbian Ltd. のマーケティングの巧みさだと思います。巧みなマーケティングで一体感を演出しています。
ここに Symbian Ltd. の、悪く言えば二枚舌が見えます。技術屋並びに端末メーカ上層部には「Symbian OS なら UI を自由に変えられるので Windows Mobile や Palm OS のように画一的になりませんよ」と誘い、展示会では全部ひっくるめて「Symbian OS はスマートフォンを実現する OS です」とふれて回るのです。
これには事情もあります。端末メーカ自身がローエンドからハイエンドまで作りわけるつもりでいますし、あれだけの大連合で UI を統一して共倒れになる訳にいきません。
ここのところ少しだけ Linux に似ています。プロセス管理は共通化されていますが、GUI がばらばらなところが。Gtk と Qt が一緒にインストールされているような UI toolkit 全部盛りの Symbian OS 搭載携帯電話は見た事がありませんが、狭いフラッシュメモリの中が UI toolkit ばかりというのも困りものですし、想定画面サイズは違いますし、ペンが使えない端末で UIQ は使い物になりません。ここばかりは今は割り切った方がいいと私は考えます。
[追記 2007-05-06]
訂正があります。Series 40 は Nokia 内製 OS の上に作られていて Symbian OS ではありません。事実と異なることを書いて、すみませんでした。
本文訂正をせず別記事にしてしまったために、読まれなくなったもの
[訂正] Series 40 は Symbian OS ではありません
それでいてボタンの配置やソフトボタンの使い方はケータイ的で戸惑う部分も少ない。Symbian OSを採用しているおかげか、非常に洗練されている印象だ。
こういう文章を読むと、巧みなマーケティングはよくも悪くも人を動かすのだと身にしみます。
Symbian OS は UI を統一している訳ではありませんし、アプリの互換性も保証しません。超勝手アプリどころか Java アプリもインストールできない事すらあります。
Symbian OS にはプロセス管理・ストレージ管理・プロトコルスタックは含まれていますが、UI toolkit は含まれません。UI toolkit は後付けで、取り換えがきくんです。UI toolkit とは呼ばないものの。アプリを作るときには C++ のクラスライブラリを親クラスにするんですが、UI toolkit が変わると親にするべきクラスが変わるんです。
OS が同じならプロセスぐらい作れるはずと考える方も居られるでしょう。しかし Symbian OS v.8.1 まで出ている現在のところ、私たちが Symbian 端末向けアプリと呼んでいるものは EXE ではなく DLL なんです。DLL はエクスポートしたメソッドをランタイムから呼び出されて動作を開始します。C++ で親クラスが変わってエクスポートするシンボルが変わったら果たして呼んでもらえるかどうか、というのは少し FUD で、シンボルテーブルでは場所を食うので整数値でエントリポイントを管理しているのですが。
Nokia 6630 が Series 60 という名を名乗るのを見て「Series 60 って Symbian OS のことでしょ」と多くの人が思うとき、技術的にはむしろうやむやになっています。Series 60 は Nokia の代表的 UI toolkit で、ここが決まると超勝手アプリを流通させられるんです。
でも Symbian OS には Series 60 しかない訳ではありません。Nokia にしても端末の画面サイズに応じて多くの UI toolkit を内製しています。Series 40 (画面が 128x128)、 Series 80 (画面が 640x200、開くとフルキーボードが出てくるタイプです)、 Series 90 (画面が 640x320、せいひんになったかなあ)。Series 60 は画面サイズ 176x208 が基本です。この中で Series 60 だけアプリが多いのは Nokia が Series 60 だけ他社にライセンスしているからです。
他の会社が作った UI もあります。SonyEricsson が作った UIQ はペンを使った UI でまさに PDA です。"ソニ" というより "エリ" ですが。
富士通製 FOMA はというと、おそらく内製です。内製した事が富士通のプレスリリースにあります。理由はいろいろ考えられます。当時は他の UI toolkit は日本語に対応していなかったこと。そして NTT DoCoMo が「ネイティブアプリをインストールできないように」と指示したとの噂も。こんな事情があるので海外で有名な「Symbian OS 向けウィルス」に感染しないんです。あれは実は Series 60 専用ですから。
あの FOMA らくらくホンもプロセス管理は Symbian OS ですからね。これは UI toolkit をまた一つ作ったのかなあ。
だから Symbian OS は別にスマートフォン専用ではありません。ここを抑えておかないと、
A:「Symbian OS を搭載した携帯電話は PDA なみにアプリが追加できるんだよ」
B:「らくらくホンを使うお年寄りにどうやって理解させるの?」
というピント外れな会話になってしまいます。
Symbian OS というキーワードが実体として語られるのは Symbian Ltd. のマーケティングの巧みさだと思います。巧みなマーケティングで一体感を演出しています。
ここに Symbian Ltd. の、悪く言えば二枚舌が見えます。技術屋並びに端末メーカ上層部には「Symbian OS なら UI を自由に変えられるので Windows Mobile や Palm OS のように画一的になりませんよ」と誘い、展示会では全部ひっくるめて「Symbian OS はスマートフォンを実現する OS です」とふれて回るのです。
これには事情もあります。端末メーカ自身がローエンドからハイエンドまで作りわけるつもりでいますし、あれだけの大連合で UI を統一して共倒れになる訳にいきません。
ここのところ少しだけ Linux に似ています。プロセス管理は共通化されていますが、GUI がばらばらなところが。Gtk と Qt が一緒にインストールされているような UI toolkit 全部盛りの Symbian OS 搭載携帯電話は見た事がありませんが、狭いフラッシュメモリの中が UI toolkit ばかりというのも困りものですし、想定画面サイズは違いますし、ペンが使えない端末で UIQ は使い物になりません。ここばかりは今は割り切った方がいいと私は考えます。
[追記 2007-05-06]
訂正があります。Series 40 は Nokia 内製 OS の上に作られていて Symbian OS ではありません。事実と異なることを書いて、すみませんでした。
本文訂正をせず別記事にしてしまったために、読まれなくなったもの
[訂正] Series 40 は Symbian OS ではありません