灯台下暗し -カッターナイフで恐竜を腑分けした記録-

仕事で携帯向けアプリを書いて、趣味で携帯電話を買い、趣味で同人小説を書いて、何もしていません。

若い人が信頼する人は、信用できないな

2017-10-01 12:24:18 | 日記

挑発的なタイトルで始めましたが、若い人が信頼するとはどういうことか、から説明していきます。

あるとき Twitter で、「社会には年をとっても馬鹿な人間がたくさんいます。みなさん、ご健闘を」と書いたつぶやきがたくさんの「いいね」を集めていました。

若いみなさんは、このつぶやきを見て、いいことを言った、とか、この人は優秀なのだろう、と思ったでしょう。否定的に捉える人は少ないのではないでしょうか。

僕は、こういう物言いをする人が嫌いなんです。

その理由は、「優秀である」ことと「優秀と評価される」ことのギャップにあります。

みなさんが、自分が優秀であると感じるときや、他人を優秀と認めるときは、どんな言動を見たときですか。その中で、他人の至らなさを指摘する言動は大きなウェイトを占めていないでしょうか。

他人を低く見る態度で得られる有能感を、ちょっと否定的に見た考え方として、心理学には「仮想的有能感」という言葉があります。その言葉を作った論文の PDF から、ちょっと長くなりますが、引用します。

現代の若者には「馬鹿だといわれたらどうしよう,『負け組』になってしまったらどうしよう」という「不安」が自らの内側にあるために,先に相手に「バカ」「負け」と攻撃して「自分はそうじゃない」と確認しようとするのだという。そのような他者の能力の軽視が実は自分の仮の有能感を回復させることに繋がっているように思われる。先(引用注: 引用箇所より前の箇所)に述べたように現実的な有能感が十分に得られないことで人は無意識的に他者軽視を通じて有能感をえようとしているのかもしれない。しかし,そこで得られる有能感は所詮,真実でない,仮想的な有能感なのである。
http://ir.nul.nagoya-u.ac.jp/jspui/bitstream/2237/7530/1/KJ00004191127.pdf

つまり、他人を低く見ることは、本人に能力がなくてもできるんです。

上の論文では、本人が有能感を感じているかどうかを問題にしていました。僕が周囲を見ていると、若い人たちの間では、他人を評価するときにも「他人がバカに見えているか」を基準に優秀だと認めていないか、という疑いが拭えないんです。こうなると、他人が認めているわけですから、有能感は「仮想」ではなくなります。でも、裏付けがなくても持てる感覚ですから、信じて付き従うと大変な目に遭うこともあります。

ここまでは「プラスマイナス0」の話でしたが、明らかな「マイナス」に至ってしまう場合もあります。

心理学では、実態を超えて自分の存在が優秀で尊いと思い込んでいる事態を表す「自我肥大」や「誇大自己」という言葉があります。それが病気として扱われるときは「自己愛性パーソナリティ障害」という病名がつきます。ネットにはその患者の被害者が多くいて、「自己愛」で検索すると多数の怒りと愚痴と嘆きが出てきます。

そのような心理状態に陥った人は、「自分は優れている」「周囲は無能で卑しい」「私は被害を受けている」というストーリーを真顔で語ります。それは病気の症状であって、現実を反映していない妄言です。

それがどうした? と思われるかもしれませんが、問題があります。「自我肥大」「誇大自己」の心理状態は、自分の利益のために嘘をつくことに良心の呵責を抱かない性格特性と直結しているのです。

病的な嘘つきがどれほどひどいか、という話は、電子書籍ですが「虚言癖、嘘つきは病気か」(著:林公一)という本を参照願います。

周囲が無能で被害を受けていると語る人の中には、自分の利益のために嘘をつくことに良心の呵責を抱かない人が紛れ込んでいます。しかし若い人は、周囲が無能で被害を受けていると語る人を見るといいことを言う人だと評価します。つまり、いいことを言う人だと評価されている人には、嘘つきが紛れ込んでいる恐れが十分にあるんです。このことの怖さが分かりますか?

40 歳を過ぎたおっさんの経験を言わせてもらえれば、自他共に優秀だと認められた人の中には他人を裏切って平気な人が大勢いました。周囲から信用されていない人は、そんなに他人を裏切りません。世の中は皮肉なものです。

「現実に優秀な人もいるのにね。バカが好きなのかwww」という意見があるのは承知しています。現実に優秀な人がいることを否定しません。でも、クズが周囲を騙していたことを、僕はたくさん経験したんです。

若い人から信頼を集めていると聞くと、最上の人間か最低の人間かのどちらかだろうから、しばらくの間は距離を置いて様子を見たい。おっさんは、そう思うようになりました。


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