今日、シャープの AQUOS Phone が海外企業のプレスリリースの題名を飾りました。
ST-Ericsson Thor thin modems power three new Aquos smartphones
Sharp joins list of handset manufacturers using ST-Ericsson advanced Thor modem platform
シャープがドコモ SH-01D ならびにソフトバンク 102SH/104SH のモデムに Thor M5730 を採用したと ST-Ericsson が発表しました。
ここで言う「モデム」とは、パケットや音声の情報が載った電波を生成し解読する半導体のことです。
実は、モデムは携帯電話メーカがそれぞれ作っているわけではありません。というか、モデムの大手企業は世界で数社です。ほとんどの携帯電話メーカは、モデムは専門企業の半導体を買ってきて、自身は UI とデザインの開発で他社と競争しているんです。
国内携帯電話機メーカが ST-Ericsson のモデムを採用したと発表されるのはパナソニックの方が早かったのですが、今回は機種名も明記されています。
同じモデムを使いながらドコモでは最高 14Mbps でソフトバンクでは最高 21Mbps とは、DoCoMo の使い方はややもったいないように見えますが、基地局の整備を考えると逆に SoftBank の事情が苦しいことの表れです。日経 ITPro の記事を読むと分かります(ごめんなさい、メルアドを登録しないと読めません)。
違うキャリアの端末が同じモデムを搭載すると判明したことは、電波のつながりやすさを機種の性能差を抜きにして確認できる機会ですが、微妙な事情があります。ドコモの基地局は富士通や NEC など国内メーカ製が多いのに対し、ソフトバンクの基地局の大半は ST-Ericsson の親会社の Ericsson 製です。相性問題は一番最初に解決されていると見てしまっても偏見ではないでしょう。これで負けるとソフトバンクは言い訳できません。
[初めて聞く名前が多い方への解説]
ところで、プロ野球2011年日本シリーズで Yahoo! ドームの試合がテレビ中継されたとき、バッターボックスの後ろに "Ericsson" という、一般の方にはあまりなじみのない、看板が見えませんでしたか?
Ericsson はスウェーデンの通信機器メーカで、W-CDMA 基地局では世界シェア1位を誇り、SoftBank が 2010 年に電波改善計画を実行したときには大変にお世話になった(逆に言うと、SoftBank が儲けさせた)会社です。野球ファンが Ericsson の名前を知っても何か買える物があるわけではないのですが、SoftBank にとって大切な会社(客じゃなくて裏方)なので、特等席で広告を出しているのでしょう。
ST-Ericsson は、その Ericsson と、半導体製造会社 STMicroelectronics が株を50%ずつ持っている、携帯電話向け専門の半導体製造会社です。
あの SonyEricsson は、同様にソニーと Ericsson が株を50%ずつ持っている会社でしたが、Ericsson は株をすべてソニーに譲渡して、グループとして裏方に徹する(玄人向け商売に徹する)ことになりました。