片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

古本屋と電子書籍は共生できる?

2011-10-19 19:29:08 | 社会・経済

渋谷区代々木上原の事務所の近所に、一軒の古本屋があります。
ちょっとこだわった古本屋なので、雑誌にもよく紹介されます。
建築雑誌が揃っていたり、
村上春樹をはじめ、赤瀬川源平、谷川俊太郎、幸田文など、
個性的な作家の作品が並べてあったりして、
ときどき
立ち寄るのが楽しみな古本屋です。
今日も、昼食に出たついでにふらりと寄って何冊かを購入してきました。

以前にも書いた通り、私は
中学校時代から古本屋好きです。
名古屋の実家周辺には、わりと古本屋が多く、
それぞれ個性的な店主がいて、それぞれの店に置いてある本に特徴がありました。
古本屋に入ると、私はなぜか
心がほのぼのとしてきます
落ち着くのです。

古本屋には、
思いがけない出合いがたくさんあります。
気になっていたけれど、もう本屋の棚からは消えた本を、ふと見つけたり、
ずっと探していた本を、偶然、見つけることもあります。

また、古本屋で買った本は、
想像力を喚起します。
きれいに読まれた本は、「大切に読まれていたんだな」と、そっと開きます。
同じきれいな本でも、買ったきり読まれないまま、
売られたのではないかと思うものもあります。
自分が、この本の最初の読者かもしれないと思うと、新鮮な気持ちになります。
薄汚れた本にも、味があります。
誰に買われ、どういう経緯をたどってその古本屋に並び、自分の手元に届いたのか。
それぞれの本に、ストーリーがあります。
古本を手にとって、イメージを膨らませる時間は、
まあ、
秋の読書の前にふさわしい、楽しい時間ですね。

最近、
電子書籍が評判です。私も購入を検討中です。
ただ、電子化が進めば、アナログとデジタルの共存は可能とはいえ、
どうしても、
本屋や古本屋は、すたれていく運命にあると思います。
それを思うと、
非常に寂しい気分になるのです。

ただ、先日、普通の本屋で、
横尾忠則さんの『ツイッター、その 雑念のごみ箱』を購入しました。
横尾さんのツイッターの
ツイートを、
時系列に並べて、一冊の本に
まとめたものです。
読めば、なかなか、
横尾さんの芸術論になっていておもしろい。
新しい本のつくり方ではないでしょうか。事務所のスタッフは、
ツイッターの画面上で、全部無料で読めますよ」といいますが、
そういう問題ではないのです。

画面上で、ぽつりぽつりとつぶやかれるツイートを、
その都度、読み飛ばしていくことと、
一冊の本としてまとめられたものを、
味わいながら読むことは、まったく別です。
紙の本には、
デジタルにはない、モノとしてのストーリーが宿ります。
本と、デジタルメディア共存の可能性は、
広がっている
と思いますが、しかし、書籍の電子化が進めば当然、
町の古本屋が少なくなることはあっても、多くなることはないでしょう。
感傷的だといわれようが、残念といわざるを得ませんね。