片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

車メーカーは部品の仕様統一で“大同団結”できるか

2014-06-06 16:57:55 | 自動車関連

どの産業分野に限らず、
国際標準規格を制するものが、世界の市場を制する――といわれています。
ところが、日本企業はそこが不得意です。どうするか。

日本自動車工業会のなかに「国際標準検討会」が設けられました。
汎用性の高い部品や半導体などの仕様を、統一するといいます。
断るまでもありませんが、コストを削減し、
グローバル市場における競争力を高めるのが狙いです。
参加するのは、国内の自動車8社、トラック4社、
さらに二輪車のヤマハ発動機と、川崎重工業の2社を合わせた、
全14社、オールジャパンといっていいでしょう。

しかし、二輪四輪にかかわらず、部品は商品の競争力に関係してきます。
また、仕様の統一が進めば、部品メーカーにも、少なからぬ影響が出るでしょう。
汎用性のあるものだけとはいえ、ライバル関係をこえて、
各社が連携、協力し、部品を統一する動きに出るのは、
やむにやまれぬ理由があるからに、ほかなりません。
危機感です。

私は、これまで、世界の自動車戦争は、
いまや日本車対独車にしぼられると書いてきましたが、
今回の動きも、じつは、独勢との標準規格戦争において、
後れをとっているという危機感があるからです。
独勢は、国際標準となる規格をつくるのが得意中の得意ですが、
日本は、苦手中の苦手ですからね。

日本は、基礎研究から製品化まで自社で行う、「垂直統合モデル」が主流です。
つまり、各社、ケーレツのもとで部品を生産し、その仕様はマチマチでした。
これに対して、欧州は、役割分担が明確な「水平分業モデル」が主流です。
さらに、欧州では、企業間で、いくつものコンソーシアムをつくって、
燃費向上や安全性能などの共通課題に取り組み、
知恵とお金を出し合って、一気に研究開発を進めています。

これに対抗しようと、日本も、ついに立ち上がりました。
先日も、国内自動車8社と日本自動車研究会が連携して、
「AICE(自動車用内燃機関技術研究組合)」を立ち上げました。
産官学が連携して、自動車用内燃機関の基礎、応用研究を行います。

報道によれば、「国際基準検討会」は、部品などの統一に関して、
鋼板、鋼材、樹脂素材など、素材までさかのぼって進めるとしています。
当然、標準化を目指すといっても、共通化が不可能な部品もあるわけで、
その場合、素材を統一するというのです。

日産のモジュール化の取り組み
「CMF(コモン・モジュール・ファミリー)」で、
日産とルノーの部品統一にあたり、
それが困難な部品については、素材を統一しました。それと同じですね。
かりに部品の仕様の統一がムリでも、
素材に関して14社が連携するとなれば、大きな効果が見込めますからね。

「国際標準検討会」によって、思惑通りに
部品の統一化が進むかどうかわかりません。
したがって、日本車メーカーの競争力がどれほど高まるのかも、未知数です。
しかし、各社が危機感をもち、グローバル競争を勝ち抜くために、
“大同団結”する必要性を感じていることは、
前向きにとらえていいでしょうね。

 


自動運転技術で交通事故死者ゼロは実現するか

2014-05-30 17:21:58 | 自動車関連

米グーグルは、27日に、「自動運転車」の試作車を発表しました。
従来、自動運転車の開発には、トヨタ車を改造して使っていましたが、
今回は、自社設計したクルマです。

丸っこい、ユーモラスな外見の写真を目にした人も多いと思います。
報道によれば、ハンドルも、アクセルも、ブレーキもないそうですね。
自動運転の開始ボタンと終了ボタンしかない。

グーグルは、今後2年間で100台を生産し、走行試験を行うといいます。
順調なら、2年以内にカリフォルニア州で小規模な試験運用を始め、
2020年ごろの実用化を目指す方針です。

自動運転技術の開発の目的は、温室効果ガスを削減したり、
渋滞をなくして効率的な交通を実現する、
高齢者の外出手段としての高齢化対策など、さまざまです。
しかし、もっとも大きな目的は、交通事故を減らすことでしょう。

交通事故は、90%以上が人間のミスによる事故といわれます。
優れた自動運転技術が完成すれば、これをゼロにできるかもしれない。
ちなみに、グーグルの自動運転車は、
これまでに、112万キロ以上を走っていますが、無事故です。

思えば、かつての自動車業界では、「“安全”は食えない」といわれました。
消費者がクルマに求める“安全”のレベルは、それほど高くなかったのです。
クルマを手に入れることが重要で、それがいかに安全かは、二の次でした。

しかし、例えば日本では、1970年に、
交通事故死者数が過去最悪の1万6765人となりました。
自動車メーカーは、“走る凶器”をつくっているわけにはいかないと、
対策に乗り出しました。
自動車メーカーが、交通安全教室などを主催することも増えました。
同時に、消費者の“安全”へのニーズも高まり、
いまや、クルマは“安全”性能をウリにする時代です。
日本の交通事故死者数は、09年以降、5000人を切っています。

米国でも、交通事故は課題の一つです。
90年代には5万人以上が交通事故で亡くなっていました。
近年は減少傾向にありますが、いまだに年間3万人を超えます。
人口は日本の3倍に満たないのに、死者数は6倍以上です。
おそらく、米国は、日本以上に、
交通事故対策に切迫感をもっているはずです。

自動運転車が普及するには、まだまだ課題がたくさんあります。
しかし、確実に開発は進み、技術は進歩しています。
交通事故死者がゼロになる日は、夢物語ではないと思いますね。

 


自動車8社がタッグ、欧州勢に対抗

2014-05-20 21:57:56 | 自動車関連

スズキ、ダイハツ、トヨタ、日産、富士重、ホンダ、
マツダ、三菱自動車の8社に加えて、日本自動車研究所は、
4月1日、「AICE(自動車用内燃機関技術研究組合)」を設立しました。
共同で内燃機関の環境性能に関する研究を行い、
費用効率化やスピード化を図り、
国際競争力を向上させるのが目的です。

具体的には、AICEにおいて、燃焼技術、後処理技術などの
科学的な現象の解明、モデル化、評価手法策定などを行い、
その成果を各企業が製品開発に反映させる仕組みです。

自動車会社8社がタッグを組んだ例は、私が知る限り、かつてありません。
しかも、共同研究は、国内の大学を加えた「産官学」で行われます。
各社独自に基礎研究を手掛け、製品化まで自社で行う
「垂直統合モデル」が日本の主流だっただけに、
これは、新たな潮流といえます。

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 AICE理事長に就任した本田技術研究所常務執行役員の
大津啓司氏は、記者会見の席上、次のように述べました。
「日本は、技術では欧州勢に負けていません。
しかし、標準化や一つにまとまる力では後れをとっています。
産官学連携のスキームができれば、
先行する欧州勢に負けることはありません」

振り返ってみれば、日本が自動車や電化製品などの分野において
世界のイノベーションをリードした背景には、中央研究所の存在がありました。
例えば、日立製作所は1942年、日立中央研究所を設立しました。
ところが、製品開発のスピード化が求められるなかで、
もはや自前の研究開発だけでは、国際競争に勝てなくなっています。
研究開発投資の負担も重くのしかかっています。

勢い、外部の研究資源を活用した「オープンイノベーション」が、
企業にとって喫緊の課題となっています。

日本企業は、欧米と比較して「オープンイノベーション」の活用事例が少ない。
その理由に、自社発の研究にこだわりをもつ研究者が多く、
社内の抵抗があるからと聞きます。
しかし、日本企業はいま、自社研究に潤沢に資金を
投入できる環境にない。

それならば、基礎研究と応用研究は、大学と企業が連携して取り組む。
まさに、AICEのスキームです。

自動車8社のタッグが、環境性能で先行する
欧州勢に対抗する力になるかどうか。
それは、まだわかりません。
しかし、少なくとも、垂直統合の自前主義から脱する、
大きな一歩となったのは確かだと思います。


「プリウス」タクシーの乗り心地の“真実”

2014-05-15 19:51:22 | 自動車関連

 

タクシーの「プリウス」について一言。

 
初代「プリウス」は、バッテリーが重いわりに馬力がなく、
急な上り坂では、アクセル“べたぶみ”でしたが、
二代目以降はすっかり改善され、ストレスを感じません。

最近、燃費がいいので「プリウス」のタクシーは、珍しくありません。
私は仕事でタクシーを利用する機会が多いのですが、
あるとき、地方でチャーターしたタクシーが「プリウス」で
2、3時間にわたって後部座席に座る経験をしました。
ところが、音はうるさいし、縦に揺れる。
つまり、きわめて乗り心地がよくない。

それ以降、「プリウス」のタクシーに乗るたびに、
乗り心地が悪いことについて、運転手に聞いてみました。
すると、こんな答えが返ってきました。
タクシーは、ふつうの車に比べて走行距離がとてつもなく長い。
40万キロ、50万キロは当たり前です。
タイヤの消耗も、半端ではない。
タクシー会社は、安くて固いタイヤを一括発注し、
所有する車両のタイヤを、「プリウス」の純正タイヤから
変えてしまうというのです。

この話は、何人もの運転手から聞きました。
なるほど、これだと納得できました。
純正タイヤは、その車専用に設計されています。

つまり、せっかく「プリウス」専用に設計されたタイヤだったのに、
それを、タクシー会社が一括発注したタイヤに
交換してしまったのですから、アレアレです。
ノイズや乗り心地に問題が出るのは当然ですね。

「プリウス」タクシーの乗り心地は、タイヤからきていたんですね。
この場合、トヨタは何も悪くない。
問題は、効率第一主義のタクシー会社だったのだと納得できましたな。

 


ホンダ二輪の商機はインド市場にあり!

2014-05-14 19:28:04 | 自動車関連

 

昨日、グランドプリンスホテル新高輪で、
Honda インド二輪ディーラー大会」が開催されました。
インドの販売店から約900人を招き、
ホンダの源流である日本で、
ホンダに対する理解浸透を深めるイベントです。
900人をインドから招いて、パーティーを開くなんて、
景気のいい話じゃないですか。

会場に入ったとたん、大変な盛りあがりように、圧倒されました。
当然インド人だらけですし、インドなまりの英語が飛び交い、
雰囲気といい、インドにきたかと思いましたよ。
みなさん、そろいのハッピを着て、
インド北部、南部、東部、西部、中部と、
地域ごとに、威勢のいいプレゼンテーションを披露していました。
いかにも、ホンダらしいな、という印象でしたね。

 



ホンダがインドの二輪市場に力を入れるのは、当然です。
インドは、いま、世界最大の二輪市場で、
年間約1500万台の規模を誇ります。
そのインドで、ホンダは絶好調なのです。

インド市場といえば、ホンダは、2010年末、
1984年以来、合弁会社を運営していたヒーローと、
合弁解消を発表しました。現在、HMSI
(ホンダモーターサイクルアンド
スクーターインディアプライベートリミテッド)
として、単独で事業を行っています。

現在、インドのシェア1位は、
ホンダの元相方で社名変更をした
ヒーロー・モトコープで、3割弱です。
それを、HMSIが猛追しています。
インド市場のボリュームゾーンは、110ccクラスです。
ホンダは、以前から125ccクラスには強かったのですが、
12年5月に、インドでは初めて大衆向けとして、
110ccクラスに、約6万6000円の
「ドリーム ユガ」を投入しました。

これが、当たったのです。13年4月には、同クラスに、
「ドリーム ネオ」も投入。この効果は大きく、
ヒーローとの差は縮まってきています。
インド市場で、一気に1位にまで
のぼりつめようという意気込みを込めて、
今回のディーラー大会が開催されたわけですね。

ホンダは、インドにおいて、
二輪は約460万台の生産能力をもちますが、
現在、第4工場を建設中です。
これが、15年度後半に完成予定で、同580万台になります。
整備・修理拠点も、
14年度中に1.5倍の1000カ所に増やすといいます。

ホンダにおいて、二輪事業は源流であり、DNAです。
そして、生活必需品であるがゆえに、
景気低迷期にも堅実に稼いでくれる、
ありがたい存在でもあります。
営業利益率も高く、その存在感は小さくありません。
14年3月期、ホンダグループの営業利益7502億円のうち、
二輪事業の営業利益は1656億円。じつに22%にのぼります。
国内の二輪市場は低迷が続いていますが、
昨日の盛りあがりを見る限り、
ホンダにおける二輪の役割は、
これからも薄れることはなさそうですね。