日本はどうするつもりなのでしょうか。
原則として関税撤廃するTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)のことです。
政府は、一度は協定への参加をほのめかしましたが、
震災を機に先送りしました。
何も決断でいない日本は、これからも続くのでしょうか。
お隣の国は違います。米議会上下両院は、12日、
韓国とのFTA(自由貿易協定)批准に向けた法案を可決しました。
現在、韓国の李明博大統領は、米国を公式訪問中です。
米バラク・オバマ大統領は、李大統領と共同記者会見を行い、
FTA実施法案に数日内に署名すると表明しました。
李大統領は、米韓FTAについて、「北米とアジアの関係を強化する道」
と語り、韓国を「アジアの自由貿易のハブ」にするつもりです。
以前にも触れましたが、韓国は、人口約4900万人と日本の半分以下で、
内需が限られるため、生き残りをかけて「FTA立国」を掲げています。
貿易自由化を進めて、工業製品の輸出を増やす戦略です。
このままいくと、日本と韓国の輸出環境の格差は、広がるばかりです。
北米における、日本車メーカーのライバルは、いまや
韓国の現代自動車です。米韓FTAが発効すれば、
韓国から北米向けに輸出されるクルマは、価格競争力が強まります。
また、北米から韓国へ輸出されるクルマも、韓国で価格競争力をもちます。
トヨタは、「カムリ」の韓国での販売分の生産を、
日本から米国に移すといいます。
そうなれば、産業の空洞化はますます進みます。
なぜ、日本は、TPPに参加をためらうのか。
指摘するまでもなく、問題は農業にあります。
農産物の関税が撤廃されると、日本の農業は死ぬというのです。
じつは、韓国も農民はFTAに反対しました。
しかし、盧武鉉前大統領は、次のようにいいました。
「一部の利益のために、変化を拒否しては、
他国に追い抜かれかねない」と。
韓国の貿易において、
FTAやEPA(経済連携協定)の相手が占める割合は35・3%、
日本は18・2%に過ぎません。
韓国と比べれば、日本のFTAの規模は遠く及ばない。
拙著『サムスンの戦略的マネジメント』(PHPビジネス新書)
にも書きましたが、いまの日本に必要とされているのは、
グローバルに生きていくことに対する覚悟です。
内需主導の成長は、すでに限界にきています。
世界に背を向けたままでは、日本は衰退していくばかりです。