片山修のずだぶくろ Ⅰ

経済ジャーナリスト 片山修のオフィシャルブログ。2009年5月~2014年6月

日本郵政「KITTE」、わかったような、わからぬような。

2013-03-22 18:05:43 | ニュース

3月21日、東京駅丸の内南口にJPタワーが開業しました。
あわせてオープンする「KITTE」は、
日本郵便が初めて手掛ける商業施設です。
まさか、こんな商業施設をつくるために、
民営化をめぐって大騒ぎをしたんではないでしょうな。

「KITTE」は、1931年に竣工した、
旧東京中央郵便局の局舎を一部保存、再生した部分と
新たに建築された部分をつないでつくられています。
再生部分は、柱、床を取り外し、耐震補強が施されています。
2012年10月、丸の内駅舎保存・復原工事が完成しましたが、
それに匹敵する大工事だったといいます。

Jptower


開業前、「KITTE」を取材する機会があり、
館内を見てまわりました。
まず、一階には、東京中央郵便局があります。
メモリアルコーナーとして、旧東京中央郵便局長室も
復原されています。
1階から地上6階まで7つのフロアには、
全国各地のご当地名品を扱う販売店があります。
レストラン街には、ブランド豚で有名な「平田牧場」、
名古屋のみそかつ「矢場とん」などが入っています。

JPタワーの本来の容積率は、1300パーセントですが、
建築基準法第57条の2により、東京駅丸の内駅舎の容積を移転して
特例容積率1520パーセントが適用されたといいます。
それにより、年間300億円の賃貸収入のうち、毎年100億円が
日本郵便の利益に計上されるそうです。

振り返ってみれば、2007年、小泉内閣は改革の本丸として、
郵政事業の民営化を推し進めました。
そして、郵政民営化にともない、
郵政三事業を含む、すべての業務が、
日本郵政グループとして、
日本郵政株式会社とその下に発足する4つの事業会社に
移管分割されました。

これによって、130年以上にわたる国営としての
郵政事業は幕を閉じたわけですよね。
2012年10月1日には、
日本郵政グループの郵便事業会社と郵便局会社が統合して、
日本郵便が発足しました。

「KITTE」は、そうした郵政民営化の流れをくんで
誕生したわけですな。
しかし、郵政民営化は、もうなんだかんだがあって、
小泉政権時代の考え方から、相当、ずれましたわな。

……ということなんですが、まあ、時代の流れは早いものですな。
いまや郵便よりインターネットの時代ですよ。
それにしても、「KITTE」というわかったような、わけのわからぬような
ネーミングには少し違和感を感じましたな。

そういえば、折しも昨日、国民新党代表の自見庄三郎参院議員が
党を解党すると表明しました。
小泉政権の郵政民営化に反対し、「反郵政民営化」を旗印に
2005年8月に結成以来、
7年半の活動に幕を下ろしたことになります。
JRやNTTの民営化と違って、郵政省の民営化ほど
いまだに評価の定まらぬ民営化はありませんね。
とにかく現代の“不思議話”ですよ。


なぜ、爪のアカを煎じて飲めか!

2009-07-10 18:47:06 | ニュース
これまで、下方修正のニュースばかりです。
ところが、こんなご時世のなか、3回も上方修正をするとは、ただごとではありません。
ユニクロを展開しているファーストリテイリング(ファストリ)は、昨日、
2009年8月期の連結業績予想について、3回目の上方修正を発表しました。

ご存じの方も多いかと思いますが、JR渋谷駅中央口の改札内に、
ユニクロの店舗があります。
改札を通れば必ず目につくところにあり、カラフルな商品陳列が目をひきます。
何もしなくても売れているの? ついつい思ってしまうほど、
吸い込まれるように立ち寄る人が、ひきも切りません。
実際、広さは、たった6坪!しかし、相当な売上だと聞きました。

近頃、話題を呼んだのは、なんといっても990円ジーンズです。
ファストリの運営する低価格カジュアル衣料品店「g.u.(ジーユー)」では、
1000円札一枚でジーパンが買えてしまう!
低価格といっても、サプライズがなければいけないのです。
サプライズ価格に加え、ファッション性もある、はき心地もよい、
品質も悪くない、となれば、“売れて当然”ですか。

ユニクロといえば、広告も話題性があります。
UNIQLO CALENDAR」や、「UNIQLOCK」をご覧になったでしょうか。
私は、最近若いスタッフ諸君にいわれて知ったのですが、すばらしい!
のぞくと、ついつい眺めてしまいましたな。
一見、ファッションとは無関係の広告ですが、消費者にブランドイメージを植え付けます。
大人も子供も、もう、思わずみとれてしまうこと間違いなし。
何より、じつにおしゃれです。驚きます。
現在、これだけとんがった、
斬新な発想をもって経営をしている企業は、日本にはほかに見当たりませんわね。
断言できると思いますよ。

なぜ、誰もがユニクロの商品に魅力を感じるのでしょうか。
そこには、価格、商品、生産、販売、経営、人材やモノづくりなど、
数え上げればきりがない、ファストリの戦略的な取り組みがあります。
これらを一つずつ解説すれば、本が何冊もできてしまいます。
「ユニクロ一人勝ち」には、相応の理由があるのです。

じつは、私は、柳井さんには、過去3度お会いしてインタビューしたのですが、
成功の要因を尋ねると、彼はこう答えました。
「素直に他人を尊敬し、先人の成功を見て、自分でもやってみようと挑戦してきたんです」
この際、下方修正を繰り返す企業のトップは、
柳井さんの爪のアカでも煎じて飲む必要があるのと違いますか、と
思わずいいたくなりますね。



いま一度、JALについて

2009-06-24 17:53:20 | ニュース
昨日に引き続き、日本航空(JAL)の話題です。
昨日私は「第二の国鉄化」と書きましたが、
今日の日経産業新聞に「日航“GM化”の危機」という記事が載っています。
GMが全米自動車労組(UAW)の企業年金や健康保険関連の債務に苦しんだように、
JALもOBの企業年金に苦しめられているからです。
双方とも、組合が強いのが共通点です。

記事によれば、企業年金の予定利回りは4.5%ですが、
1%強にまで落とす計画といいます。
結果、給付額は5割強の減額になる可能性が高いというのです。

当然、OBからの反発は強い。「約束は約束」と、彼らは既得権を主張します。
しかし、年金の運用利回り4.5%は、
高度経済成長期なら可能であっても、この低成長時代に、
いや、今日の世界同時不況のなかでは不可能に近い。
会社が傾いていれば、補填にも限界があります。
そして、既得権に固執したとしても、JALが破綻したらば、元も子もありません。
会社存続の危機に際し、年金生活を保障してくれというのは
今日、相当ムリがあるのはたしかですね。

企業年金給付額をめぐる会社とOBのもめごとは、過去にも例があります。
旧松下電器産業では、02年、企業年金の「福祉年金」の利率を、一律2%引き下げ、
反発した退職者の一部と訴訟にまでなりました。
しかし、結果、原告(退職者)側の主張は認められませんでした。
GMの例を見ても、結局UAW側の譲歩で決着しました。

旧松下にしろ、GMにしろ、JALにしろ、
企業年金生活者は、どれだけの生活レベルを求めているのでしょうか。
そもそも、人々が求める生活の豊かさとは、いったい何でしょうか。
少子高齢化が進むなかで、年金の原資をどう確保すればいいのでしょうか。
JALやGMに関わらず、年金の問題は、我々にとって大きな問題です。

年金問題は、身につまされる部分があるのはたしかですが、
かといって、欲張っていては、何も解決しません。
結局、企業年金のシステム自体を設計し直すしかないのではないでしょうか。
かりに、企業年金の給付水準の引き下げができないと、
JALの再建は、いよいよ危ういともいわれているのですから。

ただ私は、問題は簡単だと思います。
JALが成長すれば、年金だろうと何だろうと、
すべての矛盾は解決されるのです。
そこをしっかりと考えてほしいと思います。



日本の“翼”は大丈夫?

2009-06-23 19:38:04 | ニュース
今日の「Fuji Sankei Business i.」 には、
「インフルより怖い貸し渋り 航空業界 巨額赤字で資金調達に壁」
という記事が載っています。
記事によると、世界の航空会社の赤字額は、
2010年に360億ドル(約3兆4500億円)に達する可能性があり、
昨年、総計104億ドルの赤字を出した航空業界は、不況を乗り切るべく、
雇用や路線の削減を行い、航空機の離陸時間を制限している、とあります。
マレーシアの格安航空会社エア・アジアは、銀行から短期資金を借り入れるため、
以前よりも高い調達費用を負担している、ともあります。
欧州航空最大手のエールフランスも資金調達に苦労しているようです。
世界の航空会社が、不況を乗り切るために
必死に戦っている様子が浮かびあがってきます。

そんななかで、日本政府は、日本航空(以下JAL)の本格支援に乗り出します。
このニュースについて、今日の朝日新聞には、「日航浮上策 また国頼み」
読売新聞の社説欄には、「『親方日の丸』から脱却せよ」
というタイトルの記事が掲載されています。
私は、昔『日航の運命』という本を上梓しましたが、
日航の「国頼み」「親方日の丸からの脱却」は、これまで何度もいわれてきました。

朝日新聞の記事にもある通り、
政府はJALに対し、これまでに何度も緊急融資を行ってきました。
同時多発テロ後の2001~02年度に1540億円。
イラク戦争やSARSの影響が出た03~04年度には1100億円。
今年3月末の融資残高は、一般の融資も含めて2346億円。

そして今回、政府からの支援の内容は、
「日本政策投資銀行が危機対応融資を活用し、
大手銀と共同でJALに約1000億円を融通する。
政策投資銀融資の80%は政府が保証する」というものです。
いや、本当に「また」です。

JALは、再建に向けた必死の努力をしてきたでしょうか。
JALはもともと、日本航空株式会社の権利義務を継承した特殊会社です。
特殊法人の気質がいまだ抜けていないように思います。
その証拠に、JALには、いまも8つの組合があります。改革の妨げになっています。
本気で再建をめざすなら、路線の削減・撤退や人件費の圧縮など、
思い切った経営のスリム化を進め、
不採算事業の見直しや、戦略的な投資を行うなど、
徹底した経営改革に取り組まなければいけない。
経営改革を行うためには、結局、トップを外部から呼んでくるしかありません。
社内の人間では、しがらみがあって思い切った改革はムリです。

それから、必要なことは、政府は支援にあたって、期限を設けるべきです。
明確な期限もつけないまま、ずるずると支援を続けていては、
モラルハザードを起こすだけです。
公的資金が投入されているのですから、
それこそ“第二の国鉄”化の道といっていいでしょう。
「努力してもちこたえているANAがかわいそうだ」
「札幌―東京間をシンガポール航空が飛んでくれた方が、
航空券も安くなっていいぐらいだ」
「JALがなくなっても、困るのは関係者だけ」
こうした厳しい意見を、JALの関係者はどのように聞くでしょうか。

世界同時不況の最中、改革や努力が求められているのは、
何もJALばかりではありません。
世界では不況を乗り切るため、各企業は必死に経営努力をしています。
そのなかでJALが努力を怠れば、取り残されるのは目に見えています。
いつまでもフラッグシップの意識では、JALの再建は見えてきませんね。



大学の新たな挑戦

2009-06-12 19:05:53 | ニュース
今日の日刊工業新聞に、
「大学のテニス部 来月、株式会社」という記事が出ています。
記事によると、「千葉商科大学の体育会硬式庭球部の学生たちが、
7月にもテニス指導の株式会社を設立する」とあります。
さらに、社長には同大学4年生の学生が就くほか、
テニス部の学生3人程度が役員に就く予定といいます。
テニスコートなど、大学の施設を使って
大学周辺の住人にテニスを教えるというのです。
それによって、地域貢献、
またスポーツビジネスのマネジメントを学ぶというわけです。

第三者を立てず、大学テニス部の学生が主体で株式会社を組織するのは
全国で初めてだそうです。
同大学の島田晴雄学長は、「元気のある学生は起業させる」と提唱しており、
「今回はその第1弾」、ともあります。
いかにも、アイディア豊富な島田晴雄さんらしいと思います。

学生ベンチャーといえば、
科学技術や、IT関連の企業を想像しがちです。
シリコンバレーでは、米スタンフォード大学の教授や学生らによって、
IT関連のベンチャー企業が多く立ち上げられたことは有名です。
しかし、今回のは、「株式会社体育会庭球部(予定)」という。
じつにおもしろい着想といえます。

むろん、株式会社といえば、さまざまなリスクが生じます。
また、ガバナンスも問われます。
そうしたさまざまな課題について、
弁護士の先生らのアドバイスを受けたと聞きます。
それにしても、若い人たちが、ベンチャー精神をもち
自ら社会に関わっていくことが大切です。
インターンシップ制度なども普及しはじめていますが、
実際に起業してマネジメントを経験すれば、
ビジネスはもとより、働くとは何かなど、
ずっと主体的に学びます。

大学といえば、同じく今日の朝日新聞には、
『「味」「知」競うキャンパス食品』という記事が出ています。
記事によれば、
「大学の研究室や実習場から、
研究成果や地元の名産を生かしたブランド商品が続々生まれて」おり、
それらを一堂に集めたイベント「大学は美味しい!!」が、
新宿高島屋の11階催会場で、11日から16日まで行われる、とあります。

記事を読むと、山梨大ワイン科学研究センターの甲州ワイン「海洋酵母仕込み」、
お茶の水女子大の、通称「お茶大のお茶」、
宇都宮大の農場で育てた乳牛からつくった「フレッシュチーズ」等々、
好奇心を刺激される商品がたくさん紹介されています。
今年が2回目だそうですが、
大学が社会に向けて、情報を発信する場となっているようです。

指摘するまでもなく、大学をめぐる環境は、今日、厳しいものがあります。
少子化です。
その対策の一環として、国立大学は、5年前に独立行政法人化されました。
“眠れる大学”を活性化させるためです。
いわば、大学の構造改革、大学のチェンジです。

このままいけば、淘汰される大学が出てくるでしょう。
私立大学の中には、学生が集まらない大学も出てくるでしょう。
大学は、外へ向かって情報を発信し、
積極的な取り組みを行っていかなければ、生き残れない時代になっています。

その意味で、学生が体育会の部活動で起業したり、
大学でつくった食品を、外に向けて発信することなどは
大学側から社会へ向けた新しい試みとして、評価したいですね。

とにかく、それぞれの立場で、
現状を少しれも変えるため、やれることをやるのが重要です。
まず、“トライありき”だと思います。